テレワークグッズ・ミニレビュー
番外編 現役大学生のデジタル事情7
女子大生が就活せずにキャンピングカーをDIY? コロナが変えた大学生の人生
2023年3月10日 12:56
コロナ禍によって一気に進んだテレワークだが、変化を余儀なくされたのは大学生も同じ。今回はテレワークグッズミニレビュー 番外編として、「オンライン授業ならどこでも受けられる」とキャンピングカーをDIYで作ってしまった女子大学生のレポートをお届けする。
この春、昭和女子大学 国際学部(編集部注:5年制の学部)を卒業する私は、大学2年の終わりからコロナ禍に見舞われた。入学した当時は、まさか2年後にそんな状況に陥るとは想像もしていなかった。
入学するとすぐにダブルディグリープログラム(自校と海外の協定校と2つの大学で学び2つの学位が取得できるプログラム)に参加し、翌年の9月から上海交通大学に留学した。憧れの中国でやりたいことはたくさんあったが、まずは学業第一と勉強に集中した。「やりたいことは来年やろう」、とその時は思っていた。
大学2年の終わり、成人式のために一時帰国。そこで新型コロナがまん延し、世界は一気に変わってしまった。
2年間の留学予定だった中国に再びもどることはかなわなくなった。やりたいと思っていたことは何もできず、留学は勉強だけして終わった。「来年やろう!」と思っていたことができずに終わったのだ。
コロナ禍で私は「いつかはこない」ことを学んだ……。
大学生でバンライフの沼にはまる
留学ができなくなったどころか、ステイホームで毎日同じ壁を見ながら受けるオンライン授業という日々に、すっかり私の心は病んでしまいそうだった。
そんな時、ふと思いついてしまった。
「オンライン授業なら自宅じゃなくても受けられる!? クルマと寝袋とPCさえあれば、もしかして旅できるんじゃない?」
こうして私は、ホンダの軽バン「アクティ」をレンタルし、東京から和歌山まで約1カ月間のクルマ旅に出た。窓を開けて、風を感じながら走る瀬戸内海の道路は、ステイホームで家にこもっている時とは別世界だった。大自然の中で車中泊をし、「朝になったらどんな景色が待ってるかな」とワクワクした満点の星空の夜も、早々に私をクルマ旅の虜にさせた。
バックパッカーやヒッチハイクの旅とは違って、小さいながらも自分の空間を持ち運びながら旅をできたことは、とても快適で便利で革命的だった。PCと寝袋さえあれば、大学生活と旅が成り立つのだ。コロナで留学が中止にならなかったら、経験することのない経験だった。
すっかりクルマ旅の虜になった私は、翌年にもとあるご縁で車中泊仕様のハイエースを1カ月借りられる機会を得た。以前レンタルした軽バンとは違う、クルマを拠点に生活する、今話題の「バンライフ」のために作られたクルマだ。
このときは、北海道や新潟、石川をはじめ、日本各地にバンライフで旅をした。石川県能登にある”住める駐車場”「田舎バックパッカーハウス」には約1週間ほど滞在し、1年前と同様、オンライン授業を受けながら旅を続けた。
1年前はコロナが流行し始めたばかりということもあって、あまり人と交流することは避けていたが、この頃はそうした閉塞的な雰囲気も少し変化してきていて、田舎バックパッカーハウスを始め、各地でいろんな人と交流することができた。
おかげで、家を持ち運びながら旅ができる「バンライフ」にさらにハマってしまった。
だれもが迎える就職活動……、「これって本当に私のやりたいこと?」
毎日が新鮮で、充実していたバンライフだったが、コロナ禍が落ち着きを見せると、リアルの授業も再開。キャンパスに戻ることになった。キャンパスには活気が戻ったが、私の心から活気は消えてしまった気がする。……いよいよ就職活動の始まりだ。
出遅れまいと、貿易会社に的に絞って就職活動を始めようとした時、知り合いから一通のメッセージを受け取った。
「進路はどうするの?」との質問に「中国語と英語も生かせるし、親孝行にもなりそうだから貿易会社にしようと思っています」と答えると「メイちゃんはフリーで活動しながら世界中を旅するのかと思ってた」と返事が来た。
返す言葉が出てこなかった。
なぜならそれは、たった1年前に私が心に決めていたことだったからだ。「旅することが仕事だったらいいな~。よし、そうしよう!」と決めていたはずなのに、気がつけば本当にやりたかったことを見失っていた。右を見ても左を見ても、まわりが就活を始めるから「私もやらなきゃ」と勝手に体が動いてしまっていたのだ。
私はもう1度考えた。「私が本当にやりたいことってなんだろう?」と。
答えは簡単だった。「自分のクルマでバンライフをしてみたい」。コロナ禍で突如始めた旅をしながらの生活だったが、思い出してみれば、それは高校生の時にも思い描いていた夢だった。
中国留学は、コロナで半年で終了してしまい、「来年やろう!」と思っていたことができずに終わったのだ。「いつかはこない」ことを学んだ私は、「いつかやりたい」と思っていたことを、50歳ではなく、今、やることに決めた。
だって「いつかはこない」かもしれないから。
日産キャラバンをキャンピングカーにDIY
アルバイトで貯めた60万円で日産のE25系キャラバンを購入し、クラウドファンディングで120万円のDIY資金を募った。
DIYは想像の何倍も大変だった。というのも、何を調べればよいかが分からないのだ。何が分からないかが、分からない。DIYが大変というよりも、調べ物に時間を割いた印象が強い。自分がやっていることが果たしてあっているのかも分からない。
しかし、なんだかんだといいつつ、少しずつでき上がっていく自分のキャンピングカーに心躍らせながら、約3カ月という期間でDIYをし、無事8ナンバーのキャンピングカー登録をすることができた(編集部注:1ナンバーや4ナンバーの商用車であるキャラバンをキャンピングカーとしての要件を満たして8ナンバー登録することで維持費などを抑えることができる)。
SNSに投稿した動画では「女性がキャンピングカー登録なんて無理に決まってる」「自分もトライしたが無理だった。大学生でできるはずがない」といったコメントも来ていたが、登録が無事終わってからは、そうしたコメントはなくなった。
車内は広く、キッチンとリビングの2つの空間に分けた。大学生活とバンライフを両立させるために、3つの工夫を施した。
1つ目は、大学の研究やミーティングにも使えそうなホワイトボードの導入。2つ目は、最大9人でテーブルを囲める座席だ。これで終電を気にせず友人と二次会ができるようになった。3つ目は、約20万円したバッテリーシステムだ。ソーラーパネルからバッテリーがチャージされ、PCや携帯の充電はし放題。照明やIHも使うことができる。
女子大生、クルマに住む。
いよいよ、夢のマイカーでバンライフが始まった。大学のある日は、車中泊スポットのシェアサービス・Carstayを利用し三軒茶屋の車中泊スポット「モテアマス」を利用し大学から徒歩数分の場所でバンライフをした。大学がない日は自然に囲まれた郊外でバンライフを楽しんだ。
夏休みには北海道へ向かった。本州とは違って、北海道の道は広く、視界も広い。異国にいるようで不思議な感覚だった。また、北海道ではバンライフを実践しているバンライファー10組にアポを取って、密着取材をさせてもらった。その模様は、ドキュメンタリーシリーズ『車城生活~私が車に住む理由~』としてYouTubeで配信を始めた。
いろいろなバンライファーと出会う中で、気がついたことがある。それは「みんな自分を大切にしている」ということだった。
東京にいると自分の気持ちなど気にしている時間もないくらいに毎日がバタバタと目まぐるしく進んでいく。しかし、バンライフは都会と自然を好きなタイミングで行き来することができる。社会との物理的・精神的距離も調整しやすく、自分の心の声に耳を傾ける余裕ができるのだ。
大学生がバンライフ、結局何を得られたのか
約1年ほど、大学に通いながらバンライフをしてみた。結局何が得られたのだろうか?考えてみると大きく3つの変化と学びがあった。
自分と向き合うことができた
東京での流れるようにこなす毎日とは対照的に、田舎での生活はいつも時間と心にゆとりがあった。
東京では沢山のチャンスを掴むことができるが、田舎では自分と向き合う時間を持つことができた。「今自分はどう感じているのか」「本当はどうしたいのか」「今自分は幸せか」、そんなことを考えることができる。
今までは、決められたレールをさも自分が望んで進んでいるかのように進んでいた。そんな中、バンライフというライフスタイルを通して、自分を大切にするすべを手に入れた。都会での生活も田舎での生活も、どちらの恩恵も受けたい人にはもってこいのライフスタイル、それがバンライフだ。
大学は「人生の夏休み」ではなく「人生を夏休みにするための場所」
「好きなことは全力で追求しろ」そんなことを責任を持って本気で私に言ってくれた大人は今までほとんどいなかった。言ってくれたのは、いつも本の中の偉人だ。実際に好きなことを追求してみて、私はさらに自分が好きだと感じるものに気がつくことができた。それが「空間デザイン」だ。
DIYをする過程で、手を動かすのはそこまで得意ではないけれど、空間を考えるのはとても楽しい、時間があっという間にすぎる! そのことに気づくことができた。「目的もなく好きなことを追求する」。私たち大学生にはそんな時間があるはずなのに、未来が決まっていると思い込み、それ以外の可能性に目を向けることなく、全力で走り出してしまう。
「大学は人生の夏休みだ」。幼い頃に父からこの言葉を聞いたことがある。でも実際は違った。「大学は人生を夏休みにするための場所」だった。大学生こそ、最高に体力があって、最高に時間があって、最高に勇敢な時。今自分と向き合わなくて、いつ向き合う。
好きなことを見つけることができた
バンライファーへの密着取材を通して、バンライフに対する、ただの旅の手段ではない、ただならぬ可能性を感じた。また、DIYを通して、空間を考えるのが好きだと気がつくことができた。この2つを掛け合わしたら何ができるだろうか? 考えついたのが「キャンピングカーデザイナー」という職業だった。「やってみたい」を全力で追求してみたからこそたどり着くことができた、新たな道だった。
昭和女子大学と上海交通大学の学位を2つ取得するために、中国語だけを勉強してきた5年間だった。そこで私は150万円のローンを組んで、デザインスクールに通うことに決めた。毎週日曜日、朝から夜までバンタンデザイン研究所キャリアカレッジでみっちりと空間デザインを学んでいる。
日本初のキャンピングカーデザイン事務所 株式会社MeiMeiを起業!!
スクールには通い始めたものの、これからどうやって食べて行こうか悩んだ。キャンピングカーのメーカーに就職? それで本当に私の理想は実現できるのだろうか?
そして、自分でキャンピングカーデザイン事務所を立ち上げることを決めた。これまでいろいろなキャンピングカーを見させてもらったが、女性目線でデザインされているキャンピングカーがほとんどないように感じていた。また、今までキャンピングカーは週末や長期休みに楽しまれる目的で利用されていたが、これからの時代は違ってくると思う。自動運転が一般的な時代になれば、人々の暮らし方はさらに自由になる。そこでキャンピングカーには新しい可能性が見えると思うのだ。
正式な起業は今年2月25日からだが、先だってモニター様へのサービスを開始している。「今までどんな時に幸せを感じることが多かったか」「これからどんな人生を歩んでいきたいか」「バンライフに何を求めているか」などヒアリングをし、ユーザーひとりひとりに合わせたデザインができるよう努めている。
初めてのお客様は、コンセプトシートを見て涙を流してくださった。自分でも、自分の好きなことで人をこんなに喜ばせられたことが本当に嬉しい。自分の好きなことで誰かを幸せにできる……、これこそが天職だと感じている。
バンライフは暮らしを本当の意味で豊かにする
私は今、バンライフの無限の可能性を信じている。バンライフは、人々の暮らしを本当の意味で豊かにしてくれる最高のツールだ。株式会社MeiMeiでは、それをデザインの部分からサポートしていきたいと思っている。バンライフの魅力をもっと多くの人に知ってもらいたいし、その選択をした人には、その人にとってバンライフが最高に有意義なものとなってほしいと願っている。
今、私が社会に対して想っていること……、それは、みんな他の人の幸せばかりを想っているのではないかということ。自分を大切にすることは決してナルシストでも、自己中心的でもない。自分を大切にすることで、それで初めて他の人を本当に大切にすることができるのではないだろうか。
私はバンライフに出会ってから自分を大切にすることができるようになった。次はそれを必要としている人を、私がサポートする番だ。
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