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リアルな使い方を共有し、“まね”から始めるのがいい―日本マイクロソフトが社内のCopilot活用事例などを紹介

 日本マイクロソフトは、Copilot for Microsoft 365について、最新情報や日本マイクロソフト社内における活用事例を紹介した。また、グローバル調査である「2024 Work Trend Index」の調査結果などの公表も行った。

 Copilot for Microsoft 365は、2023年11月に法人向けサービスとして一般提供を開始。2024年に入ってからも、販売チャネルの拡張やライセンス要件の拡張、個人向けCopilot Proの発表、Copilot for Microsoft 365ユーザーに対するGPT-4 Turboへの優先アクセスなどを実現している。

 5月に開催された同社年次イベント「Build」では、Microsoft Copilotを、従来の個人のAIアシスタントといった位置づけから、チームのAIアシスタントへとアップデートすることが示され、それに向けた機能強化が発表された。

Copilotの役割は個人からチームにフォーカスした生産性ツールへ

 Buildで発表されたTeam Copilotは、Microsoft TeamsやMicrosoft Loop、Microsoft Plannerなど、共同作業を行う場所で利用する機能だ。たとえば、Teams会議のアジェンダを管理し、会議に参加しているメンバーが共同執筆できるノートを作成するような使い方ができる。

 これにより、より生産的なディスカッションを可能にするほか、グループチャット内で最も重要な情報を明確にし、アクションアイテムの追跡や、未解決の問題への対処を通じて、グループチャットをより効果的に活用できるようにする。さらに、タスクの作成や割当、期限の管理に加えて、チームメンバーの意見が必要な場合には通知などの機能によって、全てのプロジェクトが円滑に進行するように支援するという。

 日本マイクロソフト モダンワークビジネス本部 シニアGTMマネージャーの影山三朗氏は、「Copilot for Microsoft 365の役割は、個人の生産性から、チームの変革へと進化しつつある。Copilotは、会議の進行役やグループのコラボレーションを促進するだけでなく、プロジェクトマネージャーとなり、チームに貢献することになる」と、チームでの生産性を上げるツールとしての存在感を強調した。その上で、Team Copilotの各種機能は、2024年中にプレビューとして提供するとの見通しを示した。

日本マイクロソフト モダンワークビジネス本部 シニアGTMマネージャーの影山三朗氏

Teams会議では、英語が苦手なスタッフも積極的に発言できるように

 日本マイクロソフト社内でのCopilot for Microsoft 365の活用事例についても説明した。

 同社内では、全社員がCopilot for Microsoft 365を使用しており、部門ごとにさまざまなユースケースが生まれているという。

 たとえば、サポート部門では、顧客からの問い合わせ内容を、Copilotを活用してまとめているという。問い合わせ対応後には、事象、原因、解決策を正確にまとめ、これを再度利用できるようにしているが、社内の顧客管理ツール上でCopilotを活用し、人の手では5~10分かかっていたまとめ作業を5秒に短縮し、正確性の担保と効率化を実現した。これらの情報を活用することで、誤った情報を提供しないで済み、オペレータの精神的な負担も軽減できたという。

サポート部門ではCopilotを活用して問い合わせ内容をまとめる

 また、営業部門では、顧客とともに米国本社を訪問した際に、連日行われる会議の議事録作成にCopilotを活用している。これまでは人手で行っていたが、Copilotが持つトランスクリプト機能により会議の内容を要約し、海外出張期間中に、同行した顧客と初稿段階の日本語議事録を即座に共有することで、理解を促進し、議論を深めることができているという。帰国後には、正式版の議事録を共有する。

営業部門ではCopilotを議事録作成に活用

 技術支援部門では、英語が飛び交う社内の重要な定例会議において、英語が得意でない社員がCopilotによって積極的にディスカッションに加われた事例があった。

英語が得意でない社員もCopilotを活用し会議内容を把握できる

 グローバルなプロジェクトで貢献したいと思っていても、英語が得意でないスタッフは意見を言うのが難しかったり、言われた意見に対してうまく返答ができなかったりする。そこで、会議中にCopilot in Teamsを使い、ディスカッションの内容を効率よく把握し、さらに、コメント案をリアルタイムでCopilotと壁打ちした上で、適切なタイミングでコメントすることで、議論に貢献できるようになったケースがあるという。日本マイクロソフトで働く日本語が得意ではない外国人社員が日本語の会議に参加する場合にも、この機能は活用されている。

日本マイクロソフト社内で活用コンテストを実施し、皆で気付きがあった

 日本マイクロソフト 業務執行役員 モダンワークビジネス本部の山田恭平本部長は、「Copilotには、時間短縮による生産性向上などの定量的なメリットだけでなく、定性的なメリットがある」と述べた。定性的なメリットとは、人のバイアスがかかりやすい部分がどこにあるかがわかったり、スキル不足をCopilotにより補えたり、優先度の高い業務から取りかかれたり、といった、数値化しにくい成果だという。

日本マイクロソフト 業務執行役員 モダンワークビジネス本部の山田恭平本部長

 また、「Copilotは、人と人とのつながりのなかで、より効果が上がっていく」として、ひとりひとりのリアルな使い方を組織を超えて共有することで、気づきがあり、それが成長につながると述べた。

 山田氏は、「肩の力を抜いて、まずはやってみる、真似してみるというマインドセットが非常に重要である」とし、「日本マイクロソフトでは、『AIの筋トレ』と言っているが、仕事に役に立つプロンプトは人によって千差万別であり、そのスキルを磨くことが大切である」と、まずは使ってみる、そして共有することの意義を説明した。

 さらに、リーダーが率先してCopilotを活用するべきだという。「企業において、Copilot for Microsoft 365の利用を促進するには、まずは組織のリーダーから活用することが大切である。リーダーから教育し、組織全体にエンドース(推奨)してもらうことで、生成AIを活用する意義を社員に理解してもらうことが大切である」と、その意義を語った。

 また、「まずはまねしてみようというところからスタートするのがいい」として、日本マイクロソフトで社内活用コンテストを開催した例を紹介した。コンテストではクリエイティブな使い方が集まり、皆が使い方に気づきがあったという。「コミュニティを通じて、日々情報を共有するというカルチャーを作ることが大切である」と、山田氏は、ノウハウを共有する価値を強調した。

世界のリーダーの79%はAI導入が必要だと思っているが……

 「2024 Work Trend Index」の調査結果についても報告が行われた。同調査は、31カ国、3万1000人のフルタイム勤務者や自営業のナレッジワーカーを対象に実施したものであり、2024年2月15日~3月28日に、独立系調査会社であるEdelman Data & Intelligenceが調査。さらに、LinkedInから労働と雇用の傾向を分析してまとめたという。

 これによると、79%のビジネスリーダーが、ビジネス上の競争力を維持するために、AIの導入は必須事項であると考えているが、60%の企業において、AI導入の具体的なビジョンや計画が欠けていると感じていることがわかった。さらに、59%のビジネスリーダーは、AI導入による生産性向上の定量化に悩んでいることも浮き彫りになった。

79%のリーダーがAIは必要だと思っているが60%は計画が欠けているとした

 山田氏は、「AIの導入は必然であるとしながらも、AI導入のROIを示さなくてはならないという圧力があり、慎重であるという傾向がある。だが、日本では、AI導入の具体的なビジョンや計画が欠けていると感じているリーダーは49%となり、グローバルに比べて具体的なビジョンを見据えているリーダーが多いといえる」と、日本のリーダーの傾向を前向きに分析した。

 また、世界では75%の従業員がすでに職場で生成AIを活用しており、そのうち使い始めて6カ月未満の割合が46%を占めた。なお、日本では職場でAIを利用している従業員は32%に留まっている。

社員の4分の3がAIを仕事で使用

 一方、AIを使用しているユーザーの78%が、外から自由にAIを持ち込むBYOAI(Bring Your Own AI)で利用している。これは日本でも同様の結果になっているという。この傾向は、Z世代だけでなく、全ての世代に共通しているという。

AIユーザーの78%はBYOAIを使用

 「従業員は、職場でAIを使いたいと考えており、この半年間で利用が増えている。しかも、企業の判断を待つのではなく、自前でAIを持ち込んででも仕事に使いたいと考えている傾向がある。企業データを安全に活用できる対策が急務になっている」と指摘した。

 また、AIパワーユーザーが台頭していることや、AIを使わない従業員は、キャリア設計のハードルがあがるという結果が出ていることも示した。AIパワーユーザーとは、生成AIに慣れ親しんでおり、少なくとも週に数回は仕事で使用し、1日30分以上の時間を節約しているナレッジワーカーと定義している。