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NICT、画像由来・音楽由来の感情に関連する脳の部位を特定。「ヒトに寄り添う社会」作りへの応用も期待

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は10月3日、映像視聴時に視覚由来、聴覚由来で感情が喚起された際、異なる活動をする脳部位を特定したことを発表した。脳からデザインする「ニューロデザイン」(neuro-gesign )の観点から、今後、人間の感動を呼び起こすモノ・サービスの研究開発に役立つことなどが期待できるとしている。

 人間は、身の回りのあらゆる情報を五感を通して処理している一方で、感情を呼び起こされたれたときに活動する脳部位や脳情報の処理過程については、まだ明らかになっていない。感情が引き起こされるのは、見る、聞くなどの複合的な知覚・感覚がもたらした結果と考えられており、脳部位の特定や脳内の過程を調査することが難しく、映像によって呼び起こされる感情そのものを、科学的な研究対象とすること自体が困難だとされていたという。

 今回の実験は、視覚・聴覚を刺激する映像を見ることを通して、呼び起こされる感情に関わる脳部位を特定することを目的として、心理実験やfMRI(脳の神経活動に伴って生じる局所的な血流変化を計測する手法)による実験を行った。

 実験方法は、12人の参加者の脳活動をfMRIで計測しながら、1つあたり40秒間のピアノ演奏付きの24種類の映像を視聴させた。そして、それぞれの映像に対し、「視覚で感動した」「聴覚で感動した」といった報告をさせた。その報告をもとに、「画像により感情が呼び起こされた映像」「音楽により感情が呼び起こされた映像」の2つに分け、分析を行った。

 その結果、聴覚に関わる情報を処理する「聴覚野」と情動や共感、自己意識などを処理する「島」(とう:insula)の脳活動パターンによって、感動が画像由来か音楽由来かを決めることに、深く関わっていることが証明された。

感情の喚起に関わる脳部位

 NICTによると、感情が引き起こされるときの脳内過程の理解を深めた研究として「大変意義深い」と評価。今後、「感動」(move)に関する研究を進めるとともに、脳の反応からデザインを考えるニューロデザインの観点によるモノ・サービス作りや、ヒトに優しい社会作りにも貢献できることが期待されるという。

 本研究の成果は、9月12日に英国科学雑誌「Scientific Reports」に掲載された。