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インテル、2025年のマーケティング施策発表〜「Technology」「Customer」「Supply Chain」の組み合わせで日本独自の価値を作り出す
2025年2月7日 15:30
インテル株式会社は、直近での事業や製品の動向について報道向けに紹介する定例会見「Q1 '25 プレスセミナー」を2月6日に開催した。
今回の説明では特に、1月上旬の米国「CES 2025」において発表されたAI PC向け新製品が大きくフィーチャーされた。また、企業やコンシューマーに向けた2025年のマーケティング施策も紹介された。
AIを軸としたさらなる戦略強化とデバイス開発へ
最初に、インテル株式会社 代表取締役社長の大野誠氏が、インテルの現状について語った。なお、大野氏は2024年6月に社長に就任した。
「創業以来、いくつもの危機を乗り越えてきた」
大野氏がインテルの2024年の変化としてまず挙げたのが、パット・ゲルシンガーCEOの退任だ。現在、暫定共同CEOが就任し、正式なCEOの選定を行っている。これについて大野氏は「これからのインテルの進化への期待、また日本で半導体業界のリーダーシップをどう復権していくかについて、強い使命感を感じている」とコメントした。
続いて、2月3日に発表されたIntelの決算について、大野氏は「堅調な結果」と総括した。
氏は中でも、同社製品を搭載したシステムが2025年末までに累計1億台以上出荷される予定であること、2025年後半にPanter LakeがIntel 18A製造プロセスによって自社製造に戻って生産されることを紹介。エンタープライズ分野でも、Xeon 6が順調に立ち上がり、2026年前半に発売予定のClearwater Forestも順調な進捗であると語った。
その一方で大野氏は、インテルは創業以来57年の間にいくつもの危機を乗り越えてきたと説明する。そして、アンドリュー・グローブ氏の「危機のとき、ダメな会社は消え、良い会社は生き残り、優れた会社は進化する」という言葉を引用した。
インテルの歴史において、メモリの会社から、CPUの会社に転換し、現在ではCPUだけでなくxPUカンパニーを目指しているという。また、設計と製造の両輪がかみあって成長してきたのがそれを生かしきれなくなってきており、設計と製造が1対1で対応している状態からIDM 2.0を打ち出すようになったと説明した。
さらに現在は、AIを軸としたさらなる戦略強化とデバイス開発の必要があり、そこに新たなる戦略軸があると語った。
実際にAIにおけるインテルの価値としては、まずAIバリューチェーンの中でインフラの基盤となるデバイスについて。現在はほぼ“1社”のGPUが担っているが、まだまだ変化の課程にあり、さまざまなアプローチに合わせたAIデバイスが出てくるだろうという。そこでインテルでは、積極的にオープンエコシステムを推進して、AIの成長につなげると大野氏は語った。
一方で、半導体基盤技術とサプライチェーンはインテルの競争領域だと考えていると大野氏は述べ、最先端の開発を進めるとともに、レジリエントで分散型のサプライチェーンを目指していると語った。
技術、顧客、サプライチェーンの組み合わせで日本独自の価値を
続いて大野氏は、日本での注力領域として、「Technology(Inovation)」「Customer」「Supply Chain」の3つの要素を挙げ、「AI時代に向けて、これらの組み合わせで、日本独自の価値を作り出していく」と語った。
その事例の1つ目は、「Technology × Supply Chain」の領域で、「半導体後工程自動化・標準化技術研究組合(SATAS)」。2024年秋に国立研究開発法人 新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)事業に採択され、加盟企業数も増えているという。
事例の2つ目は「Technology × Customer」の領域で、インテルCPUのPCでのゲームを推進するため、インテルPCゲーミング推進プログラムを行う。これについては後述する。
事例の3つ目も「Technology × Customer」の領域で、科学技術計算でのXeonの採用が進んでいるという。事例として大野氏は、量子科学技術研究開発機構と核融合科学研究所における核融合・プラズマ科学シミュレーションでの採用、気象庁での台風・集中豪雨などの予測精度に向けた採用、北海道大学での次期学際大規模計算機システムでの採用を紹介した。
事例の4つ目も「Technology × Customer」の領域で、デジタル人材育成に向けたインテルと滋慶学園COMグループの産学連携教育・企業プロジェクトを氏は紹介した。この中で、AI PCのプロモーション施策を企画し制作するプロジェクトを実施し、名古屋デザイン&テクノロジー専門学校が最優秀賞を受賞した。
なお、最後に大野氏は、2月5日づけで産総研とインテルが次世代量子コンピュータを共同開発したことにも触れ、「発表が近日中にあると思う」とコメントした。
「AI PC 3兄弟」の軸で、CES 2025発表のCore Ultraシリーズ製品を紹介
製品面については、インテル株式会社 執行役員 技術本部 本部長の町田奈穂氏と、技術・営業統括本部 IA技術本部部長の太田仁彦氏が説明した。
2025年のPC市場は4%増加の予測
まず2025年の予測を町田氏が語った。Windows 10終了にともなう需要によってPC市場は4%増加で最高の伸びになるとインテルは予想。その中でも41%がAI PCになり、Core Ultraが重要になるという。
2024年には、第13/14世代インテルCoreプロセッサーの不安定性問題が取り沙汰された。この問題については2024年秋にVminシフトが根本原因であると判明し、マイクロコードやBIOSの更新で対応、保証期間の延長も行ったと改めて報告した。
“次男”Core Ultra 200VにvPro対応版が登場
実際の製品については太田氏が、CES 2025で発表されたCore Ultraシリーズ製品を中心に説明した。インテル社内では、Meteor Lake、Lunar Lake、Arrow Lakeを「AI PC 3兄弟」という渾名で呼んでいたりするとのことで、そのたとえでラインアップを紹介した。
長男のMeteor Lakeは、2023年にCore Ultraシリーズ1として発表された。そして次男にあたるのが、2024年に発表されたCore Ultraシリーズ2の200Vシリーズ(Lunar Lake)だ。太田氏は「次男・次女は、上に兄や姉がいる下で、個性を発揮していくことがある」というたとえを用いて、性能向上とバッテリーライフ向上を両立したことなどの特徴を紹介した。
今回のCES 2025では、このCore Ultra 200V(Lunar Lake)のビジネス向けであるvPro対応版が登場した。ビジネス向けCPUの意義について太田氏は、「(通常のCPUで)世の中のアプリケーションが全て安定して動いた上で、さらに安全・安心を担保している」と説明した。
vProの有効性として、太田氏は2024年7月のCrowdStrike Falconの不具合による世界的なブルースクリーン問題を例にあげた。vProではOSが動かなくても、それより下の層であるCPUをリモートから操作できる。実際にvProチームでは、問題が発生したときに、数時間以内に問題を解明して解決のためのマニュアルを作成したという。
“三男”のArrow Lake、Core Ultra 200Hは「全方位に明るくふるまう末っ子」
2024年にはデスクトップ向けのCore Ultra 200S(Arrow Lake-S)がAI PC向けCPUに加わった。デスクトップ向けで初めてNPUを搭載したCPUとなる。
デスクトップ向けにはGPUのIntel Arc Bシリーズも2024年に登場し、太田氏は「3兄弟のいとこのようなもの」と紹介した。そして「インテルは引き続きディスクリートGPUに投資していくと発表した」と語った。
そして、CES 2025では、ノートPC向けのCore Ultra 200Hシリーズ(Arrow Lake-H)が発表された。この製品を太田氏は「末っ子らしく、全方位に明るくふるまう製品」とたとえ、ゲーム、クリエイター、エンスージアスト(マニア)、オフィスなど、あらゆる方向のユーザーを満足させるものだと語った。
同時にCES 2025では、ハイパフォーマンスノートPC向けのCore Ultra 200HXシリーズ(Arrow Lake-HX)も発表された。
2025年上半期のマーケティング戦略を紹介
最後に2025年上半期マーケティング戦略について、インテル株式会社 執行役員 マーケティング本部 本部長の上野晶子氏が説明した。
ビジネスやサーバー向けに、事例紹介などを増やしていく
まずはビジネスPC市場向けの、vProやAI PC訴求のための施策だ。上野氏は「日本企業への普及には、事例が重要」として、ユーザー企業導入事例の紹介を増やし、特に地場の産業の事例紹介を新しく増やしていると説明した。
また、販売パートナー企業に向けて、AI PCであることの差分を納得してもらうための内覧会を開催していくと語った。
続いて、サーバー・ソリューション市場向け施策。「2025年の崖」を乗り越えるためのDX推進について、パートナーと取り組む。また、スーパーコンピューターからAIまで、Xeonの事例を紹介していく。
春商戦に向け、新生活応援やPCゲーム推進のコンシューマー施策
コンシューマー施策としては、まず、「#BET ON YOUR FUTURE with インテル Core Ultra プロセッサー」キャンペーンを2月4日から開始した。8人組グループ「ONE OR EIGHT」をアンバサダー起用し、PCメーカー13社とともに、この春に新生活を迎える全ての人をインテルCPUのPCで応援するというものだ。
そのほか、クリエイターにインテルCPUの高性能PCを貸し出して役立ててもらう「インテルBlue Carpet Project」や、自作PCを組みたい人を増やすために秋葉原の店でアドバイスする人を育成する「マイスタープログラム」にも引き続き取り組む。
さらに今年の春商戦では、新しいプログラムとして「ゲームをするなら、インテルPCで」キャンペーンを開始する。インテルCPUのPCでのゲームを推進するため、ゲーム会社とPCメーカーの13社が垣根を越えてキャンペーンを行うものだ。ハイスペックPCだけでなく、販売店で売っているミドルクラスPCも対象にして、PCでゲームを楽しむことを訴求する。
「これだけ多くのゲームメーカーさんに1つのキャンペーンに参加していただけるのは、これまであまり例がなかったと思っている」と上野氏。2月後半のカプコンの大型タイトルの発表からスタートし、3月中旬にダウンロード版がセールになる時期をめがけてキャンペーンを打っていくという。詳細は後日発表される予定。