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NTTらがミリ波帯で世界最速となる140Gbpsの伝送に成功、6G時代のバックホール技術で前進

今回の成果の、100GHz未満の実環境でのリアルタイム無線伝送技術における位置付け(左)、OAMモード多重伝送装置(右)

 日本電信電話株式会社(NTT)、株式会社NTTドコモ、日本電気株式会社(NEC)は3月24日、71GHzから86GHzのミリ波帯において140Gbpsのリアルタイム無線伝送に成功したと発表した。3社によれば、これは従来技術の2倍以上の速度であり、100GHz未満の周波数において世界最速となる。

 3社は6G時代の無線需要に備えた大容量無線伝送の実現を目指した取り組みを進めており、今回の成果は、軌道角運動量(OAM)を用いた新しい空間多重方式を用いた取り組みにより得られた。

 OAMとは電波の性質を表す物理量の1つで、送信電波の同一位相の軌跡が進行方向に対して螺旋状を描くように、送信アンテナから送信される信号の位相差を設定することで生成される。受信側では、受信アンテナで受信した信号の位相を送信とは逆回転して合成することで受信でき、異なる螺旋構造を持つ複数のOAMモードに対応する無線信号を重ねても、互いに干渉することなく分離できることが特徴。

 これにより、複数の異なるデータを空間上に多重し、限られた帯域で多くのデータを送れるようにする技術を「OAMモード多重伝送技術」といい、これにより、帯域が広く確保できない100GHz未満のような周波数帯においても、大容量の無線伝送が可能となる。

OAMモード多重伝送のイメージ

 71~86GHzのミリ波帯(E帯)は既存の無線システムにおいて実用化が進んでおり、これまでにはOAMモード多重伝送技術により、40mの距離において単方向で14.7Gbpsの伝送が報告されていた。

 今回、さらなる大容量化(高速化)を目指して、従来のデジタル信号処理回路を拡張することで変調速度を約2.6倍となる300Mbaudに高速化。E帯において双方向通信に対応させ、片方向あたり1GHz幅の信号で70Gbpsのリアルタイム伝送が可能なOAMモード多重伝送装置を、NECが開発した。

 あわせて、NTTは、伝送帯域を2倍とするための回線設計と、伝送距離の長距離化と反射シナリオに対応するOAMモード制御技術を考案。NTTドコモは、OAMモード多重伝送の利用シーン拡張を検討し、OAMモード反転受信技術を用いて、壁などによる反射を介して伝送する、反射シナリオなどで実証実験を実施した。

 これらを組み合わせ、次の3つのシナリオで実証実験を実施し、それぞれ139.2Gbps、104.0Gbps、139.2Gbpsの伝送容量を達成した。

  1. 22.5mの距離における双方向伝送
  2. 45mの距離における双方向伝送
  3. 反射板を介した22.5mの距離における双方向伝送
3社の実証における役割分担
3つのシナリオの実験構成図(左)、シナリオ1の伝送実験の様子(右)

 以上の成果により、OAMモード多重伝送を用いて双方向で合計毎秒100Gbpsを超える大容量のリアルタイム無線伝送を実証した。

 今回の成果は、光ファイバーだけでなく無線を利用した柔軟なバックホールの構築を可能とし、6G、またはそれ以降の無線システムの実現に貢献することが期待できるといい、今後は、OAMモード多重伝送技術を用いたユースケースの検討を進め、将来の多様なサービスを支える基盤技術となるよう、ミリ波以上の周波数帯における無線伝送の大容量化、長距離化を検討し、無線需要を支える柔軟なネットワークの構築に取り組んでいくとしている。

無線バックホール/フロントホールに今回の成果を応用するイメージ