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NTT、既存光ファイバーと同サイズで大容量化を実現する4コアMCFの建設・運用・保守技術をラインアップ化

NTTのIOWNが目指す大容量化に向けた光ファイバー技術のロードマップ

 日本電信電話株式会社(NTT)は11月15日、マルチコア光ファイバー(MCF)技術の実フィールド環境における建設・運用・保守技術をラインアップ化したことを発表した。これにより、将来的な大容量光伝送に向けて、MCFを用いた陸上・海底システムの大容量化需要にも対応できるとしている。

 「ラインアップ化」とは商業導入に必要な技術を確立したことを指す。同社では現在の光ファイバーと同じ細さの4コアMCFの研究開発を進めているが、商用導入にあたっては、現場における建設・保守・運用技術の確立が課題となっていた。

 また、MCFの初期導入には既存(1コア)の光ファイバーとの相互接続技術も不可欠であり、不慮の事故や故障にも迅速に対応できるよう、現場(オンサイト)で利用可能なレベルでの相互接続技術の確立が求められる。

4コアMCFによる光伝送路の建設・保守・運用のための技術を確立

 今回確立した技術は、既存の光ファイバーと同じ細さで4個のコアを多重したMCF技術と、直径約20mmの中に最大8000コア(4コアのMCF2000心)を実装できる細径高密度光ケーブル技術。これに加えて、MCFの接続・分岐に関する要素技術として、「側面画像調心技術」「FIFO(Fan-in-Fan-out)デバイス技術」の2つも確立した。

 側面画像調心技術は、対向する2本の4コアのMCFの側面画像を観測・解析することにより、4つのコアの位置を特定し、自動でコアの位置を回転調心するもの。光ファイバー融着接続器に組み込むことにより、現場でMCF同士の恒久接続を実現できる。

 FIFOデバイス技術は、石英系PLC(Planar Lightwave Circuit)導波路を積層した独自の2層構造を用いて、1本の4コアMCFと1個のコアをもつ既存光ファイバー4本との合分岐を行う。

 さらに、先述の接続および合分岐技術を生かし、地下クロージャ(地下に配置する、配線された光ケーブルの分岐点に設置する機器)や局内接続架における要素技術も確立した。これにより、地下クロージャをMCF化する際、既存の地下クロージャの基本構造を流用することができる。また、局内接続架においても、局内設備で終端し、前述のFIFOデバイスを介して、既存の光ファイバーとの相互接続を実現し、接続架の収容面積を4分の1以下に集積化できるとしている。

4コアMCFによる光伝送路の建設・保守・運用に必要な要素技術

陸上・海底システムの大容量化需要に対応

 今回の成果は、陸上でのデータセンターネットワークのほか、海底光ケーブルへの適用が期待される。現在、地下管路では敷設可能なケーブル直径の上限が迫るなど、実装光ファイバー数の増加とともに、光ケーブルの直径も拡大傾向にある。また、海底においても、実装できる光ファイバー心線数に空間的な制約があり、すでに上限に達している。

 このような領域に、4コアのMCFを適用することで、陸上システムにおける心線需要や、海底システムにおける大容量化需要に対応することが可能になるとしている。

4コア光伝送路の実用展開が期待される領域の例