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光ファイバー1本で世界最大容量22.9ペタビット/秒を実証、NICTが発表
2023年10月11日 15:45
国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)は10月5日、1本の光ファイバーで世界最大の伝送容量となる毎秒22.9Pb(ペタビット)の通信が可能であることを実証したと発表した。同機構によれば、1本の光ファイバーで世界最大の伝送容量を実証したことになり、従来の世界記録だった毎秒10.66Pbの2倍以上となる。
実験では、マルチコア・マルチモード方式による空間多重技術とマルチバンド波長多重技術の併用を初めて実証した。将来の大容量光通信インフラへの応用が期待できるとしている。
38モード3コア光ファイバーと
C帯・L帯・S帯を使ったマルチバンド波長多重技術を併用
NICTでは、増大し続ける通信量に対応するため、これまでマルチコア方式(ケーブル内の物理的な光の経路「コア」を複数化)とマルチモード方式(コア中の光の経路となる伝搬モードを複数化)を組み合わせた空間多重や、従来から商用として使用されている波長帯域の「C帯」と「L帯」、商用化されていない「S帯」のほぼ全域を活用したマルチバンド波長多重などを実現している。
一方、空間多重とマルチバンド波長多重の併用に関しては、4コアファイバー中心に検討が進められており、より多数の光経路をもつ38コア3モードなどの光ファイバーにおいては、各コアやモード間で生じる信号同士の干渉を分離するためのMIMO受信機を、マルチバンド伝送に対応させる必要があった。
今回の実験では、38コア3モード光ファイバーを採用し、S帯・C帯・L帯の3つの波長帯域、合計750波の波長数と、18.8THzの周波数帯域を使用した。信号の変調には、情報量の多い「偏波多重256QAM方式」を採用。これらより、ほぼ周波数帯域の等しい4コアファイバーでの実験と比べ、光経路の数を28.5倍に拡大できたという。
実験の結果、コアごとに毎秒約0.3〜0.7Pb、全38コアで合計毎秒22.9Pbの伝送容量が得られた。これは、現在の商用の光通信システムにおける伝送容量の約1000倍に相当する。
なお、将来は現在の1000倍以上の通信量になるといわれており、光通信インフラのさらなる高度化が求められる。現在は4コアファイバーの実用化が推進されているが、今回の研究によって、将来の超大容量な情報通信ネットワークの実現に向け、マルチコア・マルチモード方式による空間多重技術と、マルチバンド波長多重技術の併用を初めて実証できたという。
本実験結果の論文は、10月5日に光ファイバー通信関係最大の国際会議の1つである第49回欧州光通信国際会議「ECOC 2023」で最優秀ホットトピック論文として採択された。