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NTTとNTTドコモ、「インクルーシブコア」構想に基づくモバイルネットワークの新アーキテクチャを実証

6G時代のモバイルAI活用環境に向け前進

実証の概要

 日本電信電話株式会社(NTT)と株式会社NTTドコモは3月3日、「インクルーシブコア構想」に基づいた、モバイルネットワークとAIなどのサービスに用いるコンピューティングサービスのコントロールを連携させた「In-Network Computing」(INC)アーキテクチャの実証実験に成功したと発表した。

 インクルーシブコア構想とは、6G/IOWN時代のネットワークアーキテクチャとしてNTTが提案しているもので、ネットワークを介してさまざまな融合と協調を実現し、コンピューティングとネットワークの融合を実現しようとするもの。従来のネットワークはデータの転送のみを行い、クラウドのコンピューティング環境からは独立していたが、ユーザー環境とコンピューティング環境をより密接に連携させるため、NTTとNTTドコモは、コンピューティング機能を備えたモバイルネットワークである「In-Network Computing」(INC)アーキテクチャを、6G時代の要素技術として検討し、開発・実証に取り組んでいる。

 今回の実証はNokiaの協力を得て、キャリア共通APIの策定に向けたプロジェクトであるGSMA(Global System for Mobile Communications Association)のOpen Gateway/CAMARA APIを用いて行われた。

 NTTドコモは、INCの基盤となる「In-network Service Acceleration Platform」(ISAP)の開発に取り組んでおり、上記のAPIを経由してネットワーク側のコンピューティング機能のセットアップと端末のネットワーク接続を同時に制御するアーキテクチャとして、次の3点の仕様拡張要素を見出したとしている。

  1. API経由でサービスの属性・要件プロファイルから、通信と計算に関する制御ポリシーの導出・解決
  2. UPF(User Plane Function)上のコンピューティング機能の開始と連動した、スライスおよび通信品質の制御
  3. UPFに対する制御インタフェースにおける通信セッションと計算機能の設定能力の追加
INCアーキテクチャの仕様拡張点(従来とのアーキテクチャとの比較)

 実証で用いられたシステムでは、NokiaのGSMA OpenGateway/Linux Foundation CAMARA Projectで検討されているAPIの管理やルーティングを行うプラットフォーム(下図の「NOKIA Network as Code」)と、3GPP標準準拠のモバイルコアネットワーク(下図の「NOKIA CoreSaaS」)をAWS上に設置し、モバイルネットワーク通信環境を構築。プラットフォームを介してコンピューティングサービスの記号要求を受け、ISAPへの通信経路設定を行う制御を新たに導入し、要求に応じてコンテナ基盤のコンピューティングサービスを一括して起動制御するようにした。

実証のシステム構成

 実証においては、APIからの要求に応じてコンピューティングサービスが起動し、AIによる映像解析アプリケーションを動作させることで、従来のアーキテクチャでは57%だった正答率が、AI自体の性能限界である90%にまで向上したことを確認した。これは、端末とサーバーの間の交換遅延と通信のゆらぎを最小限に抑えたことの効果だという。

従来のアーキテクチャ(コンピューティングサービスなし)と実証のINCアーキテクチャ(コンピューティングサービスあり)での、AIによる映像解析結果の表示画面の比較

 両社は6Gのアーキテクチャの国際標準化議論において、標準仕様の拡張を提案する予定で、Nokiaほかメーカーや通信事業者との連携を広げ、INCの研究開発およびサービス提供に向けた検討を推進するとしている。