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光源1つで商用光通信の200台分、336Tbpsの大容量光通信を実装、NICTら国際グループが世界初の高品質光コムを生成

 国立研究開発法人情報通信研究機構(NICT)フォトニックネットワーク研究室を中心とした国際共同研究グループは7月24日、現在の商用光通信装置200台分の伝送容量に相当する336Tbps(テラビット/秒)の光通信を実証したと発表した。

 より高速な光通信の実現に向けて、新たな波長帯の利用、通信方式の開発など、さまざまな研究が行われているが、今回の研究では、波長帯としてS帯、C帯、L帯を使用し、光の位相や偏波を用いてデータを伝送するコヒーレント光通信(通常の光通信では光の強弱を用いる)を採用。基準光配信と光コム技術を組み合わせて、336Tbpsの光通信を実現した。

 基準光配信とは、周波数の安定した光により、品質を極力維持したまま遠隔地へ配信する技術。光コムとは、1つの光に対して非線形効果を与えて多数のコヒーレント光を生み出すコム生成技術により生成されたコヒーレント光のこと。一般に、帯域幅が広がるほどに、各コヒーレント光の成分の品質を維持するのが難しくなる。

 今回の実験では、S帯、C帯、L帯のほぼ全域でコヒーレント光通信を可能とする高品質な光コムの生成に、世界で初めて成功した。これを、ネットワーク上での基準光配信技術と組み合わせ、送受信するノード間で自動的に周波数が同期する、650波長のコヒーレント光通信チャネルを構築。実験では3モード光ファイバーの1コアのみで構築した通信チャネルで、偏波多重16QAM方式の信号変調とモード多重を行い、200Gbps×650×3×誤り訂正率(平均86%程度)=336Tbpsと、今回の成果となる大容量伝送を実現した。

基準光配信と光コム技術による、通信チャネルの周波数が自動的に同期する光ネットワークのイメージ図

 なお、従来の方式でコヒーレント光通信システムを設計した場合は、O帯、E帯、U帯も使用したうえで200台分の光源が必要だったが、今回の光コム生成技術による通信で使用した光源は1台のみ。

従来方式で設計した場合の毎秒320テラビット級光通信システムと本研究で使用した通信システムの比較

 今回の研究で実証された技術は、S帯における通信用光源モジュールの商用化開発・実装を代替しうるものだといい、マルチバンド波長多重通信の商用化を加速することが期待されるという。また、光通信装置において光源の削減が可能になると見込まれることから、低コスト化も期待できるとしている。

 今回の成果の論文は、3月24日〜3月28日(現地時間)米国で開催された、光通信に関する世界最大のイベント「OFC 2024」最優秀ホットトピック論文(Postdeadline Paper)として採択され、発表された。