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7月1日から電子書籍も国会図書館への納本対象に、当面は無償・非DRMに限定

国立国会図書館

 7月1日に施行される改正国立国会図書館法により、電子書籍や電子雑誌などの「オンライン資料」を国会図書館に送信する義務が生じることを受け、国立国会図書館が1月30日、関係者向けの説明会を開催した。

 現在、紙の書籍や雑誌などの出版物は、国会図書館に納入することが国会図書館法で義務付けられている。一方で、電子書籍や電子雑誌なども文化財として重要な地位を占めるようになってきたことから、納本制度に準じる形で電子書籍や電子雑誌についても国会図書館への送信を義務付けるよう国会図書館法が改正された。

 7月1日に施行される改正法では、インターネットなどにより出版(公開)される電子情報で、図書または逐次刊行物に相当する「オンライン資料」について、出版者がオンライン資料を国会図書館に送信することが義務付けられる。ただし、当面の間は、無償かつDRMの無いものが対象となる。

 納入義務の対象となるのは、インターネットで公開している電子書籍・電子雑誌などのうち、1)特定のコード(ISBN、ISSN、DOI)が付与されたもの、2)特定のフォーマット(PDF、PDF/A、EPUB、DAISY)で作成されたもの――のいずれかの条件を満たし、無償かつDRMの無いものとなる。

オンライン資料を国会図書館が収集
無償かつDRM無しの電子書籍などが対象に
国会図書館法改正の概要
ISBNなどのコードが付与されているか、PDF/EPUBなど特定フォーマットの電子書籍・電子雑誌などが対象

 具体例としては、企業や組織などが公開している年鑑、要覧、機関紙、調査報告書、事業報告書、学術論文、紀要、技報、ニュースレター、小説、実用書、児童書などが挙げられている。

 逆に、納入義務の対象とならないものとしては、簡易なもの(各種案内、ブログ、商品カタログ、学級通信、日記など)、内容に増減・変更がないもの、申請・届出等の事務が目的であるもの(電子商取引等)、紙の図書・雑誌と同一版面である旨の届出があったもの、長期利用目的でかつ消去されないもの(大学の機関リポジトリ等)などが挙げられている。

 また、国や地方公共団体のインターネット資料については、既に2010年4月から国会図書館の収集制度の対象となっているため、今回の改正法により新たに収集対象となることはない。

 納入義務者は原則として出版者(出版社など)で、国会図書館への資料の送信については、1)URLを国会図書館に通知し、国会図書館側からロボットで自動収集してもらう、2)国会図書館が開設するサイトに資料をアップロードする、3)CD/DVDなどに格納して郵送する――の3つの方法が用意される。ただし、アップロードのシステムについては2014年の公開予定となっている。

簡易なものなどは納入義務の対象外
納入方法は自動収集、送信、媒体送付の3種類

 送信された電子書籍や電子雑誌は、紙の書籍と同様に国会図書館内(東京本館、関西館、国際子ども図書館)での閲覧サービスに利用される。閲覧開始は2013年10月の予定。また、著作権法の範囲内で紙への複写サービスや、登録利用者に対する遠隔複写サービスも、準備が整い次第提供される。図書館などへの送信や、インターネット提供は原則として行われない。

 実際に納入義務の対象になると考えられるのは、「紙の資料であれば国会図書館への納本義務の対象となるもの」ということで、会議資料など簡易なものは含まれない。対象となるか判断の難しいものについては、国会図書館に相談してほしいとしている。また、一般のウェブサイト、ニュースサイト、電子書籍アプリ、携帯電話向けコンテンツなどは、ほとんどの場合対象外となる。さらに具体的な対象範囲や送信時の手続きなどについては、国会図書館のサイトで順次情報を公開していくとしている。

 現時点では、収集対象のフォーマットはPDFやEPUBに限定され、無償かつDRM無しで公開されていることも条件となっている。対象フォーマットについては、技術の進展などに対応して今後見直していく予定だ。また、有償の資料については費用補償の考え方を検討中で、DRM付きの資料についても長期保存のためにはDRM無しの状態で保存することが望ましいといった観点から検討中で、将来的には収集対象に含める方向で協議を進めているという。

送信された電子書籍は紙の書籍と同様に館内の閲覧サービスなどに利用される
一般のウェブサイトやニュースサイトなどはほとんどが納入義務の対象外

(三柳 英樹)