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NTT、世界初のSAR衛星を用いて道路陥没の予兆を検知する技術を開発
2025年11月12日 07:30
NTT株式会社は11月7日、合成開口レーダー衛星(SAR衛星)から道路陥没の予兆を捉える手法の実証に世界で初めて成功したと発表した。
2025年1月に埼玉県八潮市で発生した道路陥没事故をはじめ、地下空洞の発生や道路陥没事故が社会問題となっており、調査が重要となっている一方、社会インフラを管理する自治体の予算や人員に限りがあり、全国のインフラ整備の維持管理が課題となっている。NTTでは土砂災害の予測に向けて、衛星が受信した電波から土壌水分量を高精度に推定する手法を研究しており、同技術を開発した。
同技術は、地球観測衛星であるSAR衛星で道路を観測し、複数の偏波を解析することで陥没の予兆を捉える。SAR衛星は地球観測衛星の一種で、人工衛星に搭載されたレーダーで電波を照射し、跳ね返ってきた電波を解析して地形などを画像化する衛星。災害状況の把握や森林・農地の監視にも活用されている。
道路陥没前には「地中空洞の形成」「地盤の乱れ」「地表面の凹凸」が発生する。SAR衛星から送信された電波が地表面で反射する際の方向や強度を解析することで、地表面のわずかな変化を捉え、陥没の予兆を検知することができるという。さらに時間をおいて計測することで、2時期間におけるデータの差分から陥没の進展具合も分かる。
従来は車載型の地中レーダにより地中空洞がある位置を特定していたが、同技術に代替することでコストを約85%削減できる見込みだとしている。
なお、NTTが10月21日に発表した、「光ファイバーによる地盤モニタリング手法」は、地下に埋設した光ファイバーで地中深くに発生した空洞の進展を監視する技術で、道路陥没を早期に察知する。一方、同技術は衛星の電波を使うため、浅い位置に発生している空洞が対象となることから、表層付近にまで進展した緊急度の高い空洞を検知できる。今後は、特性の異なるこれらの技術を組み合わせて、より確実に道路陥没の予兆を検出することを目指していくとしている。


