投資・協働・電縁で日本復活へ、総務省が09年版「情報通信白書」


2009年版「情報通信白書」。表紙のイラストは一般から公募したもの

 総務省は10日、2009年版の「情報通信白書」をとりまとめた。概要および全文を同日よりWebサイトに掲載するほか、書籍版を全国の書店などで13日に発売する。追って英語版を8月中、小中学生向けの「情報通信白書 for Kids」を9月中をめどに公開する予定。

 2009年版「情報通信白書」のサブタイトルおよび特集テーマは「日本復活になぜ情報通信が必要なのか」。世界的な経済危機の中で、情報通信政策の観点からいかに日本再生に貢献できるのかを分析したという。

 その特集ではまず、北欧など1人あたりGDPの上位国ではICT(情報通信技術)産業のシェアが高く、その伸びも大きい傾向にあることなど、情報通信と経済成長が相関関係にあることを説明。日本でも、近年の実質GDP成長率の3分の1程度をICT産業が占めるほか、ICTを活用して過去最高益を記録する企業も少なくないと指摘。世界的不況の中にあってもICTが経済に大きく貢献しているとしている。

 しかしその一方で、日本の情報通信は、安価で高速なブロードバンドが普及したことにより「基盤」という面では世界最高水準にあるものの、「利活用」の観点では特に医療・教育など公的分野で立ち後れており、「安心」という面でも国民が不安を感じやすい傾向にあるという。これを解消するための、「I×C×T」という3つを、日本復活へ向けて挑戦すべき方向性と位置付けた。

 「I×C×T」とは、「投資(Investment)」「協働(Collaboration)」「電縁(Trust)」の頭文字を取ったもの。まず「投資」は、情報通信の「基盤」面に対応するもので、国民の4人に3人がインターネットを利用するようになっている一方で、高齢者や低所得者、地方の中小企業などにおいて情報格差が存在している現状をふまえ、情報化への投資を全産業で加速し、成長率の底上げを図るのが目的。「協働」とは、情報通信が触媒となって異業種や生産者・消費者の協働を促進し、「利活用」面での立ち後れを解消する、国民目線のソリューションを提供しようというものだ。

 最後の「電縁」とは、ネットを活用して形成される人や企業のコミュニティのことで、「地縁」「血縁」のような人のつながりを表す言葉として使っている。白書では、ネットとリアル(対面)のバランスがとれた、「地縁」「血縁」に「電縁」を重ねた「顔の見えるネット社会」を実現することで、情報通信利用にあたっての不安が低下する可能性を指摘している。

 2009年版「情報通信白書」は、国が発行する白書の中で初めて“読者参加型”である点も特徴だという。「みんなでつくる情報通信白書コンテスト」を通じて公募したイラストやコラムを掲載した。応募があったイラスト65点の中から受賞作品6点を表紙やとびら絵などに掲載。また、コラム175点の中から「ICT家族」「絵文字リテラシー」などの受賞作品6点(小学生の部2点、一般の部4点)を収録した。


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(永沢 茂)

2009/7/10 11:40