IaaS型の「さくらのクラウド」β版、田中邦裕社長がユーザーイベントで披露


さくらインターネットの田中邦裕社長

 さくらインターネット株式会社は5日、ユーザーとの交流イベント「第3回さくらの夕べ」を開催した。さくらインターネット代表取締役社長の田中邦裕氏は、集まったユーザー約60人を前に、11月にサービス開始予定のIaaS型クラウドサービス「さくらのクラウド」の概要をデモを交えて紹介し、ベータ版ユーザーの募集を開始することも発表した。

 田中氏は、「さくらのクラウド」のコンセプトを「開発者志向のシンプルクラウド。何の変哲もないIaaS型クラウドを、圧倒的なコストパフォーマンスで提供する」と説明。VPSサービスの「さくらのVPS」では「性能」「安定性」「低コスト」を実現したが、「さくらのクラウド」ではこれに加えて「機能」「拡張性」も実現していくとした。

 サービスの内容としては、高性能な仮想サーバーを低コストで提供することに加え、「何の変哲もないと言いつつも、ネットワークにはこだわった。物理でできることはすべて仮想でもできるべきという理想のもと、仮想スイッチによる拡張性の高いネットワークを提供する」と説明。また、料金を明確化するために「従量課金なしの固定料金制」にすることや、「クラウドの全機能をAPIで提供すること」も明らかにした。

「さくらのクラウド」ではVPSサービスで実現したことに加え、機能と拡張性も実現「拡張性の高いネットワーク」「明朗会計型の料金体系」「全機能をAPIで提供」などの特徴を説明

 ここで田中氏が、開発中のベータ版サービスを使って、実際に複数台構成のシステムを構築するデモを披露。1台目の仮想サーバーは、CentOSやScientific Linux、Vyattaなど既にOSがインストール済みのイメージから作成できる「テンプレート」を使って作成。ホスト名や管理ユーザーのパスワード、ネットワーク設定などをウェブの管理画面で指定するだけで、仮想サーバーの作成自体はすぐに完了した。

 次に、作成した仮想サーバーにコンソールでログインして、パッケージをアップデートして最新の状態にし、ウェブサーバーをインストールして設定を終えた状態を「スナップショット」として保存。さらにこのスナップショットをユーザー定義の「テンプレート」にすることができ、2台目以降の仮想サーバーをこのテンプレートから作成。同一条件の仮想サーバーを一気に3台作成した。

あらかじめ用意されたテンプレートから仮想サーバーを作成パッケージをアップデートしてウェブサーバーをインストール

 さらに、この3台を接続する仮想スイッチを作成し、あらかじめ作っておいたリバースプロキシーサーバーを介して、3台のウェブサーバーに分散させるところまでを披露する予定だったが、時間の都合もあって動作するところまではたどり着かなかった。それでも、短時間でこうしたシステムを構築し、物理サーバーと同様に自由に構成を変更できるところを示した。

作成した仮想サーバーを「テンプレート」化して、同一条件のサーバーを作成仮想スイッチに接続して、複数台構成のウェブサーバーを構築

 デモの最中にも作業を行いつつ、「LAMP環境などが構築済みのテンプレートを用意することも考えている」「仮想スイッチでローカルネットワークのみに接続される仮想サーバーも作成できる」「仮想サーバーのMACアドレスは、ベンダー部分を先日さくらインターネットで取得したので、重複することはない」といった内容を紹介。ちなみに、デモは田中氏が実際に使用しているアカウントで行われたため、管理画面にログイン後の画面で、田中氏が個人で作成して公開している「まどマギ ジェネレーター」もさくらのクラウドを使っていることが判明。「社長特権でさくらのクラウドに移しました」と語り、会場の笑いを誘った。

ベータ版公開時点でのコンパネ機能ログイン後の画面に「まどマギ ジェネレーター」の名称が見える

 11月の正式サービス提供前には、「さくらのクラウド」のベータ版サービスを無償で提供することも発表。「十分な数のサーバーを用意できなかったので、応募いただいた方の中から選ばせていただく形になりました」とし、今回のイベント参加者やさくらインターネットのユーザー向けにクローズドな形でユーザーを募集するが、ベータ版サービスはウェブサービスやアプリケーション、業務システムを構築するユーザーに、商用利用やホビー目的などは問わず使ってもらいたいと説明した。

 また、「さくらのクラウド」の予告サイトを公開したことを明らかにし、ベータ版の提供開始時点ではAPIは提供されないなど未完成の部分もあるが、正式版の提供に向けてさらに開発を進めていきたいと語った。


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(三柳 英樹)

2011/9/6 14:53