レビュー
Windows 7からWindows 10への引っ越しにはNASが便利!
QNAP「TS-453Be」をPC移行用のストレージとして活用しよう
2019年10月24日 06:05
2019年1月14日、Windows 7のサポートが終了する。期限が迫っていることを考えると、もはや、Windows 10への移行計画を実行に移さなければ間に合わないタイミングだろう。こうしたPC移行の実行段階で便利に活用したいのがNASだ。普段、ファイル共有やバックアップに活用しているNASを、Windows 7からWindows 10への移行に用いる方法を確認してみよう。
「Windows 7/Server 2008サポート終了にQNAP NASを活用」記事一覧
クラウドでの環境移行も便利だが企業ではローカルのNASを介するのが安全・快適
今使っているPCを、Windows 7からWindows 10へ移行する場合、具体的にどうすればいいのだろうか?
PC本体はそのまま、OSだけをアップグレードするのであれば、基本的にデータや設定は引き継がれる。このため、作業は比較的難しくない。万が一、アップグレードに失敗しても、ロールバックで元の環境に戻すこともできるので、文書や画像など最小限のデータをバックアップしておけばいいだろう。
一方、PC本体を置き換える場合は、データの移行作業が必要になる。そして、古いPCから新しいPCへデータを移行する方法には、大きく分けて以下の2通りがある。
a.クラウドを利用する方法
データをOneDriveなどのクラウドストレージと同期しておけば、PC間でデータを直接移行する必要はない。古いPCのデータをクラウドに同期した後、新しいPCで同じアカウントを使ってサインインすれば、自動的にデータの同期ができる。
一方、メールはOutlook.comやGmailなどのクラウド環境へ移行しておこう。現在、「Outlook」や「Windows Liveメール」(サポート終了したがWindows 7では利用者が多い)といったメールソフトに、プロバイダーが提供するPOP3のメールアカウントを設定してメールを送受信しているなら、メールソフト本体にメールデータが保存されている。
このデータをクラウドに移行するには、OutlookやWindows LiveメールにOutlook.comなどのクラウドメールサービスのアカウントを追加し(Windows LiveメールでもIMAP方式で追加可能)、POP3で受信したメールを追加したアカウントにドラッグする。時間はかかるが、これで古いメールがクラウドに同期されるので、新しいPCでクラウドメールサービスにアクセスすれば、古いメールを参照できるわけだ。
b.ローカルで移行する方法
クラウドを利用する方法は便利だが、企業などでは利用が難しい場合もある。移行するPCの台数が多いと、インターネット接続の回線が混雑してしまうし、安全であるとは言っても、データは社外に保存されることになる。
このため、企業でPC間のデータを移行する場合は、できるだけデータ移行をローカルで完結させたいというニーズもあるだろう。
個人ユーザーなら、USB接続の外付けHDDを利用して、古いPCを新しいPCへ移行することも可能だが、複数台のPCが存在する企業では、PC1台ずつにHDDをそれぞれ用意するのは非効率だ。ならば、LAN上のストレージを使うのが効率的だろう。
既存のファイルサーバーを利用する手もあるが、移行作業の負荷によって、業務に使っているデータ処理に影響が出たり、容量不足に陥ってしまったりする可能性がある。このため、できれば移行用にNASを用意することをお勧めしたい。
QNAPの「TS-453Be」のような4ベイで低価格なNASであれば、10万円前後と経費処理しやすい価格で購入できるし、Windows 7からWindows 10への移行作業を完了した後にも、ファイルやメディアの共有、開発環境などにも使えるため、無駄なく活用できるはずだ。
NASでの作業ユーザーごとにホームフォルダーを用意
それでは、具体的にNASを使ったデータの移行方法を見ていこう。
ハードウェアの準備
まずは、NASの準備をする。今回、用意したのは前述したQNAPの4ベイNAS「TS-453Be」だ。2TB HDDを4本用意して、複数台のPCの移行データをまとめて保存しておけるだけの容量を確保している。
TS-453BeはLANポートを2つ備えているので、リンクアグリゲーションによって合計のネットワーク帯域を2Gbpsまで高められる。そうすれば、移行作業時に複数台のPCが同時にデータを読み書きした場合にも、極端に処理が遅くなることを避けられるわけだ。
ユーザーとホームフォルダーの作成
ハードウェアの準備ができたら、移行に使うフォルダーを作成する。「Backup」などの共有フォルダーを作成し、ユーザーごとのサブフォルダーにデータを保管するのも1つのやり方だが、この方法だと、各人のプライベートなデータに、ほかのユーザーもアクセスできてしまう。
このため、移行用のストレージには「ホームフォルダー」を使うのが便利だ。ユーザーごとに用意され、そのユーザーのみにアクセス権が与えられたフォルダーとなるため、業務データなど、機密性の高いデータを移行のために一時保管しておいても、ほかのユーザーから容易にデータを参照されてしまう心配はない。
QNAPのNASの場合、ユーザー作成時に「ホームフォルダー」ボタンからユーザーごとのホームフォルダーを一括で有効化できるので、移行するユーザーを作成し、まとめてホームフォルダーを作成しておくといいだろう。
古いWindows 7 PCでの作業データをNASのホームフォルダーに保存
準備ができたら、実際にデータを移行していこう。
古いPCから新しいPCへと移行すべきデータには、次のようなものがある。
基本的な流れとしては、これらのデータを古いPCからNASのホームフォルダーへと一時的に待避し、新しいPCでホームフォルダーを参照し、データをコピーしたり、復元することになる。
1.文書や画像、音楽、動画などのファイル
文書や画像などのファイルに関しては、バックアップツールを使ってNASに待避するのが簡単だ。
QNAPのNASの場合であれば、「NetBackup Replicator」というバックアップツールが無償で利用できるため、これをWindows 7にインストールして、Windows 7のフォルダーをバックアップする。「Documents」や「Pictures」、「Videos」、「Desktop」、「OneDrive」、「AppData」など、主要なフォルダーが標準で選択されるので、必要なデータをまとめて保存可能だ。
バックアップ先としてNASの「home」を選択すれば、先に作成したユーザーごとのホームフォルダーへ、データをバックアップできる。
このように、通常はNetBackup Replicatorで十分だが、別の方法としては、Windows 7のバックアップ機能を使うこともできる。Windows 7の「バックアップと復元」では、文書などのデータのバックアップに加えて、システムイメージもいっしょに作成することができる。
システムイメージは、PCに接続されているドライブを「VHD」という形式の仮想ディスクイメージとしてバックアップするものなので、PCの移行後に古いPCを処分してしまった場合でも、このイメージから移行し忘れたデータを探し出すことができて安心だ。
2.メールやカレンダー、アドレス帳などのデータ
メールやカレンダー、アドレス帳などのデータは、利用しているメールソフトによって移行方法が異なる。
Outlookの場合は、pstファイルにエクスポートし、NASを経由した上で、このファイルを新しいPCにインポートする。これで、メールやカレンダー、アドレス帳のデータを一括して移行できる。エクスポートで、pstファイルを保存し、ホームフォルダーへコピーしておこう。
Windows Liveメールの場合は厄介だ。メールとアドレス帳のエクスポート機能は備えているが、カレンダーのエクスポートはできない。また、メールに関しても、データを[Windows Liveメール]形式でエクスポートしてしまうと、Outlookへのインポートはできない。
このため、クラウドを利用するか、Outlook経由で移行するかのどちらかをお勧めする。Windows LiveメールはIMAPでのメールの送受信に対応しているため、Outlook.comやGmailなどのアカウントを登録することができる。IMAPのメールサービスを利用可能にした状態で、POP3のメールをIMAPのアカウントのフォルダーにドラッグすれば、クラウド上に移行できる。その後、Windows 10で、コピーしたアカウントを、ウェブブラウザーなりOutlookなりで参照すればいい。
一方、Windows 7にOfficeをインストール可能な場合は、Outlookをインストールすることで移行が可能だ。Windows Liveメールには、同一PCにインストールされているOutlookに対してメールをエクスポートする機能が搭載されているので、この機能を使ってOutlookにいったんメールをエクスポート。その後Outlookでもう一度、pstファイルにメールをエクスポートすることで移行ができる。
すでにサポートが終了した製品なので仕方がないが、別のメール環境をいったん経由して移行するしかないだろう。
3.ウェブブラウザーのお気に入り
Internet Explorerのお気に入りは、バックアップソフトの対象となっている場合もあるが、念のためウェブブラウザーからエクスポートしておくことをお勧めする。
お気に入りの「お気に入りに追加」から「インポートとエクスポート」で、お気に入り、フィード、Cookieをファイルとして保存できる。同様に、NASのホームフォルダーにコピーしておこう。
Google Chromeなどほかのウェブブラウザーを使っている場合も、[ブックマークマネージャー]などからまとめてエクスポートして保存できる。
4.IMEの辞書
IMEの辞書に関しても、バックアップソフトの対象となっている場合がある。前述したNetBackup Replicatorでは、隠しフォルダーの「AppData」配下までバックアップしてくれるので、通常はIMEの辞書も含まれる。
ただし、念のため保存しておくと安心だ。IMEのプロパティで「辞書/学習」タブから「参照」ボタンを押すと、ユーザー辞書を参照できるので、このファイルをホームフォルダーにコピーしておけばいい。
ATOKなど、ほかのIMEを使っている場合も、辞書ファイルを保存できるようになっているので、確認してみるといいだろう。
5.会計ソフトや年賀状ソフトなど、一部アプリの内部データ
環境によっては、さらにデータのエクスポートが必要になるケースがある。ありがちなのが、会計ソフトや年賀状ソフトなどだ。アプリの内部にデータが保存されている場合があるので、これらも忘れずにエクスポートしておこう。
このほか、「Documents」などの一般的なフォルダー以外に保存されているデータがある場合(DドライブのDATAフォルダーなど)も注意が必要だ。これらのフォルダーをバックアップソフトの対象に含めておくか、手動でNASのホームフォルダーへデータをコピーしておこう。
6.各種アカウント情報
最後に、可能であればアプリの設定もエクスポートしておくといい。このうちアカウントの情報は、メールソフトによってはエクスポートできる場合もある。ただし、パスワードはエクスポートできない場合もあるため、無理にしておく必要はない。しかし、ファイルとして存在すれば、やはり安心だ。
新しいPCでの作業NASからデータをインポート
バックアップができたら、作業の大半は完了だ。後は、今までの逆の手順で新しいPCにデータを復元していけばいい。バックアップソフトでNASのホームフォルダーを参照してデータを復元したり、エクスポートしたメールや辞書を新しいPCにコピーして、アプリからインポートすればいい。
なお、インポート後、新しいPCへの移行が完了したとしても、しばらくの間はバックアップファイルを保管しておくことをお勧めする。
特に、仕事で使うPCの場合、年度末や決算期など、特殊な時期にしか利用しないソフトが存在することがある。こうしたソフトのデータは、移行を忘れやすいので、特に注意しておきたい。
Windows 7の「バックアップと復元」を利用した場合は、イメージバックアップのファイル(VHDファイル)を保管しておけば、万が一、移行し忘れたデータがあっても、古いPCのドライブをまるごと参照できるので、できれば1年程度は保管しておくと安心だ。
NASなら移行も移行後も安心
以上、NASを利用したWindows 7からWindows 10への移行手順を簡単に解説した。細かな部分を省いているが、大まかな流れや方針の参考になれば幸いだ。
PCの移行方法はいろいろあるが、NASを利用すると、ローカルで安全かつ高速に移行できる上、移行後もバックアップとしてデータを保管し続けることができるのがメリットだ。
これから組織内で複数台のWindows 7 PCを新しいPCへと移行しなければならない場合は、移行方法の1つとして、検討してみるといいだろう。
「Windows 7/Server 2008サポート終了にQNAP NASを活用」記事一覧
(協力:テックウインド株式会社)