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【図解で説明】源泉徴収票の見方を知ると、税金の仕組みが見えてくる

 サラリーマンは12月か1月の給与明細と一緒に「給与所得の源泉徴収票」と書かれた紙を受け取っているはずだ。この源泉徴収票には自分の年収、所得、所得税の納税額などが書かれているが、少し知識がないとどの数字が年収なのか理解できない。源泉徴収票の見方を知ると、所得税の仕組みも見えてくる。一度理解すると、一生ものの知識となるので、ぜひこの機会に理解していただきたい。

目次

税制改正で源泉徴収票の見方が変わる
所得税の計算式に合わせ、源泉徴収票を3つに分けて理解しよう
 - 給与所得控除ってなに?
謎だらけの所得控除欄をひもとく
 - (源泉)控除対象配偶者の有無等
 - 控除対象扶養親族の数に記載された数字の意味を知ろう
 - 生命保険料控除は年末調整を思い出そう
 - 無印の基礎控除を見逃すな
令和2年(2020年)から基礎控除と給与所得控除が改正される
課税所得に税率を掛け納税額を算出

「INTERNET Watch」ではこのほかにも、サラリーマンと個人事業主がぜひ読んでおきたい税金に関する記事を多数掲載しています。まとめページ『サラリーマンと個人事業主の税金の話』よりご参照ください。

税制改正で源泉徴収票の見方が変わる

 今年、令和2年(2020年)は大きな税制改正が実施される節目の年で、収入のある全ての人に適用される所得税の基礎控除が、平成7年(1995年)以来25年ぶりの改正となる。詳細は後述するが、受け取ったばかりの源泉徴収票は令和元年分なので税制改正前の基礎控除、および給与所得控除で計算されている。

 1年後に受け取る源泉徴収票は税制改正後の基礎控除、給与所得控除で計算されたものとなる。これから数年、ネットの情報は書かれた時期により税制改正前後の情報が混在すると思われるので、記事が掲載された日付などに注意していただきたい。

所得税の計算式に合わせ、源泉徴収票を3つに分けて理解しよう

 源泉徴収票にはさまざまな数字(金額)や印が記載されている。ところがそれらの数字の関連性は、所得税の計算方法を知らないと理解できないようになっている。所得税の計算式と源泉徴収票に記載された数字を照らし合わせながら順番にひもといていこう。

 手元に「令和元年分 給与所得の源泉徴収票」がある人は、自身の源泉徴収票で実際に計算、検証してみるとより深く理解できるだろう。ピタッと計算が合うと“快感”だ。

 まずはサラリーマンの所得税の計算式を確認してみよう。1行目は収入(年収)から所得を求める式。2行目は所得から課税所得(税金の対象となる所得)を求める式。3行目は課税所得の額に応じた税率を掛け、所得税の納税額を求める式となっている。

 この3つの式を1行目はブルー、2行目はピンク、3行目はグリーンとして、源泉徴収票の該当する部分を色分けしてみた。順番にそれぞれの式に該当する部分を見ていこう。

給与所得控除ってなに?

 1行目の式に該当するブルーの部分。源泉徴収票では「(会社から見た)支払金額」が650万円、「給与所得控除後の金額」が466万円となっている。650万円は給与と賞与の合計額、令和元年の(自分から見た)収入=年収だ。

 「年収は?」と尋ねられたらここに記載された金額を答えればよい。466万円は収入から給与所得控除というものを引いた金額で、所得と呼ばれている。税金の話で頻繁に出てくる収入(=年収)と所得の関係は1行目の式で求めることができる。

 この「給与の収入金額-給与所得控除=給与所得」という式を見て「給与所得控除ってなに?」と思われた人がいるだろう。給与所得控除はサラリーマンの必要経費と言われ、「スーツ、カバン、クツ代、自腹スマホ&電話代、自腹PCなど会社には請求できないけど仕事に必要な経費があるはず」ということで、収入に応じて一定額を「税金を払わなくていいよ」と課税の対象から差し引いて(控除して)くれるものだ。給与所得控除は以下の計算式で求められる。

 計算してみよう。事例の安倍さんの年収は650万円なので「360万円超 660万円以下」に該当し、計算式は「収入金額×20%+54万円」となる。

給与所得控除
650万円×20%+54万円=184万円

給与の収入金額(年収)-給与所得控除=給与所得
650万円-184万円=466万円

 源泉徴収票には書かれていない給与所得控除の184万円を年収から差し引くと、466万円の所得を導き出すことができる。

 ご自身の源泉徴収票を見ながら「支払金額は538万2000円だから、給与所得控除後は……」などと計算すると、源泉徴収票に書かれた額と微妙に差異が発生した人がいると思う。

 年収660万円未満の人の給与所得控除後の金額の算出は「令和元年分の年末調整等のための給与所得控除後の給与等の金額の表」という速算表を使用することになっている。これが差異の原因だ。その一部を見てみよう。

 年収538万円以上538万4000円未満の人の給与所得控除後の額は376万4000円となっていて、年収が538万1000円でも538万2000円でも一律376万4000円となる。

 パソコンが普及する以前、そろばんの時代には細かな計算をするより速算表の方が便利だったのだろう。ご自身の源泉徴収票を正確に計算したい方は、この速算表で確認していただきたい。

謎だらけの所得控除欄をひもとく

 2行目の計算式「給与所得-各種所得控除=課税所得」の各種所得控除は源泉徴収票のピンクの部分だ。源泉徴収票の大きな面積を占めていて、謎だらけなのがこのピンクの部分だ。源泉徴収票の分かりにくさの、ある意味で主役とも呼べる部分なのでジックリ解明していこう。

 最上段の「所得控除の額の合計額」に306万円と記載されている。その下の段には○印や数字の1、38万円、97万円、12万円などの金額が記載されているが、予備知識なしにこれらの関係を理解するのは難しい。

 「所得控除とは」から説明しよう。「大学生の子どもがいるとお金掛かるよね」といった感じで、所得控除は扶養する家族や生命保険の支払いなどの個人個人の事情に合わせて、所得から一定額を差し引き(控除し)、税額を算出する金額(課税所得)を引き下げ、納税額を減らすものだ。同じ年収のサラリーマンなら、養う家族が多い人は独身の人より納税額が減ることになる。

 各種所得控除の中で多くの人が関係するのは配偶者控除、扶養控除といった人的控除。毎月天引きされている年金、健康保険、雇用保険といった社会保険料控除。生命保険に加入している人の生命保険料控除だろう。これらの所得控除が源泉徴収票のピンクの部分に「分かりにくく」記載されている。この分かりにくい所得控除欄の謎を順番に解いていこう。

(源泉)控除対象配偶者の有無等

 左上の(源泉)控除対象配偶者の有無等の「有」に○が付いていれば控除対象となる配偶者がいるということだ。旦那さんの配偶者は奥さん、奥さんの配偶者は旦那さん。事例の安倍さんの奥さんは専業主婦なので控除対象の配偶者となり、「有」に○が付いている。その右側の金額が配偶者控除の額で38万円となっている。

 年末調整で提出した「令和元年分給与所得者の配偶者控除等申告書」を思い出してみよう。あらためて見ると、安倍さんの年収、奥さんの年収から判定された控除額が右下に38万円と記載されている。年末調整で提出した申告書がここに反映されている。

 もし事例の安倍さんの奥さん(配偶者)が正社員としてフルタイムで働いていると所得制限を超えるので控除の対象とならない。配偶者ではあるけれど、控除対象配偶者ではないということだ。また、安倍さんの所得が1000万円(年収で1220万円)を超えると、奥さんが専業主婦でも配偶者控除を受けることができない。

控除対象扶養親族の数に記載された数字の意味を知ろう

 配偶者控除の右側は「控除対象扶養親族の数(配偶者を除く。)」という欄があり、その下の特定の欄に1、老人の欄の左に1、真ん中に1となっている。右端の「16歳未満扶養親族の数」にも1と記入されている。

 扶養控除は子どもや親を養っていると受けられる控除だ。扶養控除は対象となる親族の年齢により控除額が異なっていてやや複雑なので図を見ていただこう。

 令和元年の年末時点の年齢が16~18歳(ほぼ高校生)であれば38万円。19~22歳(ほぼ大学生)であれば63万円。23~69歳であれば38万円。70歳以上で同居していれば58万円、別居であれば48万円となっている。年齢以外の条件もあり、控除対象となるのは所得が38万円以下の扶養親族だ。

 増額になっている19~22歳はほぼ大学生で、対象となる親族を特定扶養親族と呼ぶ。「大学に通う子どもがいるとお金が掛かるから控除を増やして税金を減らしましょう」という趣旨だ。

 ただし、大学に通っていることは条件となっていないので、浪人中でもフリーターでも年齢と所得の条件を満たし、生計を一としていれば(親が養っていれば)別居でも控除の対象となる。もう1つ増額されているのは70歳以上で、老人扶養親族と呼ぶ。老人扶養親族は同居(同居老親等)と別居で控除額が異なる。

 事例の源泉徴収票を見ると特定(特定扶養親族)が1となっているので、ほぼ大学生の子どもが1人いることが分かる。老人の欄は真ん中の1は70歳以上の老人扶養親族が1人いることを表し、左側の「内」に1とあるのは老人扶養親族の内、同居老親が1人いることを表している。

 もし別居で老人扶養親族がいる場合は真ん中が1、左側の「内」は空欄(0人)となる。老人の右側のその他の欄は高校生など一般の扶養親族の人数を記載する。右端の「16歳未満扶養親族の数」は16歳未満の子どもの人数で、所得税では控除の対象とならない。

 源泉徴収票には、控除対象扶養親族の人数しか記載されていないので、その人数を控除額に換算する必要がある。事例では特定扶養親族が1人で63万円、同居老親が1人で58万円、16歳未満の扶養親族が1人で0円となる。

生命保険料控除は年末調整を思い出そう

 ピンクの部分の下の段は左上が「社会保険料金等の金額」。これは毎月の給料から天引きされた厚生年金、健康保険、雇用保険の合計額で事例では97万円となっている。その右隣は「生命保険料の控除額」で12万円。最下段にも12万円、9万円、12万円の金額が記載されている。これらの金額の謎を解いていこう。

 最下段の項目名は左から「生命保険料の金額の内訳」「新生命保険料の金額」「旧生命保険料の金額」「介護医療保険料の金額」「新個人年金保険料の金額」「旧個人年金保険料の金額」となっている。これらは生命保険に関する項目だ。

 生命保険は平成23年以前に契約したものは旧制度、平成24年以後に契約したものは新制度と分けられている。さらに旧制度は「一般」「年金」の2つ、新制度は「一般」「介護医療」「年金」の3つに分けられ、計5つに分類されている。

 ピンクの部分の最下段の5項は5つに分類された保険料の支払った金額が記載されている。保険料ごとに控除額を算出し、合計した額が上段の「生命保険料の控除額」となる。ただし生命保険料控除には上限額があり、この例では上限額の12万円となっている。5つに分類された保険ごとの控除の限度額は図のとおりだ。

 年間に支払った保険料と控除額の関係は以下のとおり。旧制度の控除額の上限は5万円。新制度の控除額の上限は4万円。事例では「旧生命保険料の金額」と「旧個人年金保険料の金額」でそれぞれ12万円を支払っているので、控除額は上限額の5万円ずつ。

 新制度の「介護医療保険料の金額」に9万円を支払っているので、控除額は4万円。3つの保険の控除額は5万円+4万円+5万円=14万円だが、全体の上限額が12万円なので最上段の「生命保険料の控除額」は12万円となる。

 この生命保険料の一連の用語や計算に見覚えはないだろうか。年末調整で提出した「令和元年分給与所得者の保険料控除申告書」の結果がここに反映されている。

 このように年末調整と源泉徴収票は密接につながっている。言い方を代えると「年末調整で記入ミスをすると、納税する金額に間違いが発生する」ということだ。注意しよう。

無印の基礎控除を見逃すな

 ここまでの控除額を合計してみよう。

配偶者控除    38万円
特定扶養親族   63万円
同居老親     58万円
社会保険料控除  97万円
生命保険料控除  12万円
合計       268万円

 ピンクの部分の最上段にある「所得控除の額の合計額」の306万円に38万円足りない。源泉徴収票のどこにも記載されていないが、所得がある人は全員に38万円の基礎控除がある。記載されていない自分自身の基礎控除を足すと、所得控除の額の合計額は306万円となる。これで謎だらけの所得控除欄は全て解明できたこととなる。

 各種所得控除の計算ができたので、所得税の計算式の2行目の式の課税所得を算出してみよう。

給与所得-各種所得控除=課税所得
466万円-306万円=160万円

令和2年(2020年)から基礎控除と給与所得控除が改正される

 冒頭でも紹介したとおり、今年、令和2年(2020年)は大きな税制改正が実施される節目の年だ。収入のある全ての人に適用される所得税の基礎控除が平成7年(1995年)以来、25年ぶりの改正となる。

 収入のある全ての人ということは、サラリーマンも個人事業主もパートもアルバイトも、全員に関係することなのだが、日本人は税に無関心なので、ほとんどの人は知らないと思われる。

 25年前、筆者は税に無関心なサラリーマンだった。当時は基礎控除という言葉を知らなかったかもしれない。なので25年前の基礎控除の改正を知ったのは最近だ。知らなくても困ることはないが、簡単に説明をしておこう。

 基礎控除はは戦後間もない昭和22年に創設され、最低限の生活を維持するために必要な収入からは税金を取らないという趣旨で、生きていくために必要なカロリー(=食費)などを考慮して控除額が設定されたという。ザックリ言うと「年収から最低限の食費の金額は差し引いて税金を計算しましょう」ということだ。

 基礎控除の額は頻繁に変更されてきた。一部を抜粋すると昭和25年:2.5万円、昭和35年:9万円、昭和45年:17.8万円、昭和55年:29万円、平成元年~6年:35万円、平成7年~31年:38万円と増えてきた。創設時の考え方を今に反映してみよう。昨年までの38万円を日割りすると1041円/1日、これが一家の最低限の食費となる。微妙だ。

 70年前と現在では世帯人数も違うし、当時は専業主婦が当たり前だったので、家族環境の変化を考慮すると、基礎控除=食費という考え方をこの時代に当てはめるのは無理がありそうだ。

 令和2年からベースとなる基礎控除の額は48万円となる。これまでの38万円から10万円増えた。また、昭和22年(1947年)から70年ほど基礎控除は一律に適用されてきたが、令和2年からは以下の表のように納税者本人の合計所得金額に応じて、その控除額が異なることとなった。

 基礎控除の改正に合わせ給与所得控除も改正された。次の表は上段が令和2年(2020年)以降、下段が令和元年(2019年)以前の給与所得控除の計算式だ。

 比較すると年収850万円以下では10万円減。給与所得控除の上限は220万円(年収1000万円)から195万円(年収850万円)に引き下げられた。この給与所得控除と基礎控除の改正により、年収850万円以下の人は基礎控除が10万円増え(38万円→48万円)、給与所得控除が10万円減り、トータルはプラスマイナスゼロ、増税も減税もない。年収850万円を超える人は給与所得控除が減ることで増税。所得2400万円を超える人は基礎控除も減り、さらに増税となる。

 多くの人は増税も減税もないが、税金の説明のニュアンスは変化する。例えば、大学生の子がバイトをして稼いだ金額が103万円以下なら扶養親族となり控除の対象となる。この103万円の金額の根拠は、昨年までは「年収103万円から給与所得控除の65万円を引くと所得が38万円、そこから基礎控除の38万円を引くと所得は0円」というロジックだった。

 今年からは「年収103万円から給与所得控除の55万円を引くと所得が48万円、そこから基礎控除の48万円を引くと所得は0円」となる。これまで税金の話で頻繁に出てきた「所得が38万円……」が令和2年以降は「所得が48万円……」とニュアンスが変化する。

 冒頭に書いたように、これから数年は38万円と48万円がネット記事では混在する。増税も減税もない人も、税制改正があったことを理解していれば、税金の記事を読んで迷うことはないだろう。

課税所得に税率を掛け納税額を算出

 所得税の計算式の3行目は課税所得に税率を掛けて所得税の納税額を算出する式だ。

課税所得×税率=所得税

 源泉徴収票のグリーンの部分に該当するが、グリーンの面積が小さいように内容も簡単だ。課税所得の額に応じた税率を掛けるだけで、簡単に納税額は計算できる。まずは税率を確認しよう。所得税の税率は以下の表となっている。

 税率は課税所得の額により5%から45%まで税率は上がっていくが、税率は課税所得全体にその税率が掛かるわけではなく、その金額の部分に対する税率となる。

 例えば課税所得が300万円の場合、195万円までの部分の5%、195万円を超え300万円までの部分の10%を合計した額が納税額となる。実際に計算してみよう。

課税所得300万円の所得税

195万円×5%=9万7500円 ①
105万円(300万円-195万円)×10%=10万5000円 ②

①+②=9万7500円+10万5000円=20万2500円

となる。税率表の右側にある控除額を使用すると、簡単に計算することができる。

課税所得金額×税率-控除額=納税額
300万円×10%-9万7500円=20万2500円

 事例の安倍進次郎さんの所得税を計算してみると、

課税所得×税率=所得税
160万円×5%=8万円(課税所得は1000円未満の端数は切り捨て)

 源泉徴収票に記載された「源泉徴収税額=所得税」の8万1600円にかなり近づいたが、まだ1600円の差異がある……もう一息だ。所得税の納税額は計算のとおり8万円で間違いないが、平成25年(2013年)から25年間は東日本大震災の復興特別所得税を上乗せする必要がある。復興特別所得税=「所得税の納税額の2.1%分」を上乗せしよう。

8万円+(8万円×2.1%)=8万1680円
100円未満を切り捨て       =8万1600円

 ピッタシ。うーん、快感だ。これで源泉徴収票の謎を全て解くことができた。このように給与所得控除、各種所得控除額、課税所得、税率など源泉徴収票に記載されていない所得税の算出方法を知らないと理解できないのが源泉徴収票だ。税制の改正は頻繁に行われ年々複雑になっているが、基本的な考え方はそれほど変化はない。一度理解すると一生役に立つ知識だ。

 事例の源泉徴収票に記載された年収から所得税算出までの流れをイメージ図にしてみた。全体を把握するときの参考にしていただきたい。

「INTERNET Watch」ではこのほかにも、サラリーマンと個人事業主がぜひ読んでおきたい税金に関する記事を多数掲載しています。まとめページ『サラリーマンと個人事業主の税金の話』よりご参照ください。