特集

コロナで休業した飲食店が生き残りをかけて資金を確保!「コロナ対策」補助金支援を受けてみた

人件費、家賃、そして新規事業も……

生き残りをかけて資金を確保!国や自治体の「コロナ支援」を利用してみた

原価BAR 五反田店

 筆者は五反田と銀座にある原価BARという飲食店を共同経営しているのだが、ご多分に漏れず新型コロナウィルスの影響をもろに受けた。

 2月から客足が落ち始め、3月には明らかに飲み歩く人が減った。結局、都からの自粛要請に従い、4月7日から2店舗とも休業している。

 2月はともかく、3月は明らかに赤字をたたき出し、休業などしたら売り上げはゼロになる。中小規模の飲食店はひとたまりもない。

 人件費や家賃はもちろん必要だし、変化した環境に対応すべく、テイクアウトやデリバリー、小売りサービスといった新規事業を開発しようにも、その開発費は「今」払うわけで、そのための資金は(不意打ちだっただけに)準備できていない。

 しかし、政府が相次いで支援策を公開してくれたので、藁にもすがる気持ちで利用させてもらうことにする。

 そこで、今回は筆者が実際に利用した支援策を紹介していきたい。

 得られた支援は、休業中100日間の人件費と、家賃などにも使える支援金400万円、新事業開発などにも使える低金利の融資2500万円だ。筆者としては、これで数ヵ月耐え、様々な試みを経て、生き残りを図っていきたいと考えている。

【ご注意】

この記事は、記事執筆時点(2020年5月5日)の情報に基づいたものです。
支援・補助金制度などは、閲覧時点と異なる場合があります。
本記事は、支援・補助金制度が変わっても、できるだけ参考になるよう、配慮して制作しましたが、正確な情報は、必ず政府の公式Webサイトなどから入手するようにしてください。

人件費は厚生労働省から条件さえ満たせば「全額補助」の場合も……

雇用調整助成金

 まず、厚生労働省は人件費を補填してくれる「雇用調整助成金」を出してくれるとのこと。中小企業で誰も解雇しないなら休業中の人件費を補助してくれる内容だ。

 当初は3分の2の助成率だったものが、現在は10分の9に増え、4月25日には条件を満たすことで特例的に10分の10になるようになった。

 この申請は難しいので社労士さんに依頼することにした。もちろん、報酬は発生するが、品川区が提供している「雇用環境安定化事業助成金」を受けると、この報酬を10万円まで助成してくれるのだ。

 ………とは言え、家賃があるのでピンチには変わりがない。


運転資金確保のため、経産省の持続型給付金を申請

持続化給付金

 国土交通省は不動産関連団体に、賃料の支払いについて柔軟な措置を検討するように要請しているが、結果が出るにはまだ時間がかかりそう。

 そこで、目の前の運転資金を確保しなければならない。2~3月のマイナスと4月から5月、もしかしたら6月くらいまで、すべての固定コストを現金で用意する必要がある。もっとも大きい人件費と家賃も目の前は支払う必要がある。

 最大で200万円を給付してもらえる「持続化給付金」はもちろん、要件を満たしているので、利用することにした。

「持続化給付金」は5月1日のスタートと同時に申し込んだ

  返済しなくてよく、何でも使っていい のでインパクトが大きい。

 5月1日のスタートと同時に申し込んだが、4月中から情報が出ていたので、あらかじめ必要書類を準備しておいたので手間はかからなかった。

 売り上げが半減した月がある場合に申し込めるのだが、原価BARは3月からぼろぼろで4月は4分の1しか営業していないので、余裕で要件を満たしている。

 確定申告書類と売り上げ台帳の写し、通帳の写しだけでOK。約2週間で、給付通知書が発行され、登録した口座に入金されるという。


東京都の支援策「感染拡大防止協力金」を申請

感染拡大防止協力金

 東京都は「感染拡大防止協力金」として、4月16日~5月6日の間に休業した中小企業へ1店舗50万円、複数店舗を休業した場合はさらに50万円支給してくれるというものだ。

 原価BARは2店舗とも4月7日から5月6日まで完全にクローズしているので要件に当てはまる。これも家賃に補填できるので小規模企業としてはとてもありがたい。

  休業を告知する店頭ポスターや誓約書の提出が必要 。嘘をつきやすい要件のため、虚偽が判明した場合は倍返しという誓約書にもサインを求められる。

 書類は誓約書の他、「東京都感染拡大防止協力金申請書兼事前確認書」と「支払金口座振替依頼書」が必要。

本当に自粛期間に休業していたかどうかを証明する必要がある
虚偽申請したら倍返しの誓約書にサイン
Officeアプリなら、名前を付けて保存から「PDF」形式を選べばPDFファイルにできる

 ウェブサイトからダウンロードできるのだが、確認書はエクセル、依頼書はワードも用意されていた。

 当然、デジタルで入力する方が楽なので、エクセル・ワードをダウンロードしたのだが、仲間の飲食店からはどうやってPDFやJPEG形式にすればいいのか、と質問を受けた。

 また、必須ではないが、専門家の書類確認を行うように勧められた。税理士や公認会計士、行政書士などに用意した書類を見てもらうことで、手続きをスムーズに進めるためだという。

  手数料は発生するが、「一定の基準により東京都が別に措置する」 と書いてあったので、依頼することにした。

 4月22日に申請の受付が開始したが、専門家のチェックに時間がかかり、25日に手続きをした。ゴールデンウィーク明けから入金が開始されるとのことだ。

 また、 5月5日には、さらなる自粛要請が行われ、協力金ももう一度出してもらえることになった。5月7日から時短営業する予定だったが、急遽取りやめ、休業は続行することになった。2店舗分の協力金、つまり100万円が得られるのは、助かる。


先を見据え1000万の融資を受けることを決意「日本政策金融公庫」コロナ緊急対策融資を申請

日本政策金融公庫

 さて、ここまでで合計400万円の支援をいただくことができた。

 こうした政府や東京都の支援は本当にありがたい。でも、店を開けられないなら焼け石に水だ。3月4月ときて、5月は持たないだろう。

 ……その状況が見えていたので、最初の段階から、融資を受けて耐え過ごすことにした。

 コロナ緊急対策融資が出たタイミングですぐに動き出した。2月29日に日本政策金融公庫のウェブサイトから書類をダウンロードした。

 この手の作業に慣れていないと拒否反応がおきるのはよくわかるが、必要なことはすべてウェブサイトに記載されているから、ゆっくり読み込んでいけば理解できるはず。細かい部分で判断できないところは後で聞けばいいので、まずは作業を進めると良い。

 書類の記入には相当時間がかかる。週末に作業した。

 新型コロナウイルス感染症特別貸付の当時は、売り上げが20%減少している証明が必要だったので、管理している売り上げデータをそのまま提出。ちなみに、現在は5%の減少でも申請できるようになっている。

1000万円を融資してもらえた

 その後公庫に電話して面談の日を決め、3月12日に五反田支店で面談した。2期分の決算書や身分証明書などを持参し、売り上げの推移などを説明した。

 そこで、さらに 税金を支払った領収書や通帳の他のページ、店の営業許可証が必要 だというので、帰社後送信した。

 すると、あっけなく3月19日に電話が来てOKとのこと。1000万円を希望したが、満額借りられることになった。書類を送るので、必要事項を記入して押印して返送することに。

 なお、ウェブサイトを読んでも理解しきれないときは、さくっと電話することをお勧めする。

 担当者はものすごく丁寧に教えてくれる。こちらを選別するような感じは一切なく、必要なら必要な分だけ借りてください、という態度でありがたかった。

 今回も、この後新型コロナウイルス関連で、もっと有利な融資支援施策が出たときには、そちらの条件を適用できると教えてもらって安心した。

 1週間後の26日に1000万円が着金した。


もしかしたら1000万じゃ足りないかも…

4号認定の指定案件は新型コロナウイルスをはじめ、令和元年の大雨など6つのみ

 しかし、3月中頃からどんどんコロナウィルス関連の状況が深刻化し、1000万円じゃ足りないかもしれない、と思い始めた。

 そこで、さらに手元資金を確保することにした。借金ではあるが、売り上げゼロのまま潰れるのだけは避けたい。

 そこで、東京信用保証協会を利用し、さわやか信金から融資を受けることにした。ネットで見かけた記事を手に入ったのだが、その融資は最大1000万円。状況を説明すると、もっと限度額が大きい融資があることを教えてくれた。

 「4号認定」が必要だと言われたので、品川区立中小企業センターに出向き、認定を受けた。

 4号認定とは、中小企業信用保険法に基づき、災害などで売り上げが減少した中小企業を認定するもので、セーフティネット保証制度等を利用できるようになる。もちろん、今回の新型コロナウィルスはこの災害として指定されている。

 売上表や収入印紙1万円などを持って行くと、すぐに認定されたので、銀行に申し込み。返済の据え置き期間や返済期間は長目にした。

 また、金額は多いほどいいのかな、と思って2500万円を申し込んだが、4月17日に電話があり1500万円との回答だった。

 そして5日後の22日に1500万円が着金した。

 これで、休業中100日間の人件費と、400万円の支援金、そして2500万円の融資が得られた。

 数ヶ月間は耐えられるので、その間にテイクアウトやデリバリー、小売りサービスの開発、提供をスタートしたり、新規事業の開発に成功すれば生き残ることができそう。

嘆いてもお金は降ってこない…!政府や自治体の支援を有効活用しよう

「資金繰り支援内容一覧表」で自分の企業の状態や条件からどんなメニューが利用できそうか当たりを付けられる

 友人の飲食店にこれらの施策を教えると、「お金は欲しいよ!」と食いついてくるものの、書類を集めたり申請書を書く段階で萎えてしまい、「たったそれだけなら自腹切るよ」とか「受けられるかどうか分からないなら面倒」と言って動かない。

 だけど、僕は思うのだ。簡単な作業で何百万円が無制限に転がりこんでくるなんてあり得ないし、どうしても最低限の事務作業が発生する。でも、不満ばかり口に出していても状況は好転しない。

 もし、そもそも自分が何を利用できるのか分からない、という場合は経済産業省が公開している「業種別支援策リーフレット」や「資金繰り支援内容一覧表」などを参考にしよう。

 筆者もこの手の申請はプロの独壇場かと思い、すべて外注していたのだが、今回チャレンジしてみて自分たちでもできるものだと感じた。

 記入例を見ながらできるだけ書き、判別が付かないところは残しておいて、後でまとめて聞けばいいのだ。細かい部分まで自分で調べようとしても情報がなかったりするが、窓口の人に聞いたら5秒で解決することも多い。

 自分が利用できそうな支援策が見つかったら、電話して聞いてみよう。今は殺到してつながりにくいかもしれないので、その場合はウェブサイトをよく読もう。

 今回の政府機関はとことんユーザーフレンドリーに情報を公開しようと努力している。

 口を開けてピーピー泣いていても、必ずしも餌が運ばれてくるとは限らない。最終的には、自分たちの企業は自分たちで守るしかない。

 ぜひ、政府が用意した支援策を有効に活用して、新型コロナウイルスの影響をやり過ごして欲しい。