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iPhoneの写真を数十年後まで残すため、コスパ最強のiCloudをバックアップに活用しよう!

 データの保存は喪失リスクとの戦いだ。保存する期間が長ければ長いほど、喪失のリスクは高くなる。例えば「子どもが大人になるまで」とか「老後の楽しみとするため」とかの目的で写真や動画を保存しようとすると、保存期間は数十年という単位になり、何らかの対策をしていなければデータを喪失するリスクは極めて高くなる。

 とはいえ、実際のところ完璧な保存は困難だ。なので、「データは消えるもの」と考え、消えたらそこまでと割り切る選択肢もある。デジタル以前の時代はそうだった。筆者のような昭和オジサンからすると、気がつけば再生できなくなっていた思い出のビデオテープなんていくらでもある。

 だが、今の時代はもっと高い確率で残す方法はある。とくにiPhoneユーザーであれば、iCloudを使うことでデータを安全かつ簡単に保存できる。まずはiCloudを使うところから始めよう。本稿では、有料プランとなる「iCloud+」の利用を想定し、その価値を十分に引き出す使い方を解説する。

iCloudは課金する価値あり!

 iPhoneユーザーにとっては、iCloudが簡単かつ高機能かつ信頼性も高いバックアップ手段となっているので、これを使わない手はない。

iCloudの設定画面。筆者もそれなりにヘビーなiPhoneユーザーだが、200GBに収まっているし、30%くらいが多数所有するデバイスのバックアップデータである

 数年もiPhoneを使っていると、無料の5GBでは足りなくなっていると思うが、その場合は有料のiCloud+を使う必要がある。iCloud+の月額料金は、50GBが150円、200GBが450円、2TBが1500円、6TBが4500円、12TBが9000円となっている。

iCloud+ 料金表
容量月額料金
50GB150円
200GB450円
2TB1500円
6TB4500円
12TB9000円

 よほど動画を多く撮る人や、利用歴が長い人でなければ、200GB(月額450円)のプランで収まるケースがほとんどだろう。月額450円、1年で5400円は、バックアップにかかるコストとしては高くない。単純にストレージの耐用年数で考えたとき、5万円のNASや外付けドライブが10年持つかと言われたら微妙だ(保証期間でいえば、ほとんどの製品は3〜5年しかない)。

 また、NASや外付けドライブだと、バックアップは自分で実行・管理する必要があるが、iCloudは手間いらずだ。コスパとタイパを合わせて考えると、200GBまでのiCloudはむしろ安いとすら言える。

 iCloud+のストレージ容量は、ファミリー共有機能により、最大6人(自分のほかに5人)の家族と共有できる。例えば、家族4人がそれぞれ200GBプランを契約するなら、代表者が2TBプランを契約してファミリー共有した方がお得となる。

実質的なバックアップとして機能するiCloudの同期機能

 ここまでは便宜上「バックアップ」と書いてきたが、iPhoneでは「同期」と「バックアップ」の2つの方法で、iCloudにデータが保存される。

 同期機能により、写真やメモ、ブックマーク、連絡先、iCloud Driveを使う汎用ファイルなどなど、さまざまなデータがiPhoneとiCloudで同期する。例えばiPhoneで写真を撮ると、すぐに自動でiCloudにアップロードされる。これが実質的なバックアップとして機能する。

 データに追加・更新があれば同期は随時実行されるため、例えば夕方にiPhoneが故障した場合でも、朝に入力したスケジュールや昼に撮った写真も保護される。ただし無制限に同期するとモバイル通信のデータ容量を使いすぎてしまうので、Wi-Fi未接続時の通信量を制限する機能も用意されている。

iCloudに同期するアプリの設定画面。それぞれがどのくらいの容量を使うかも表示される

写真・動画とiCloud Driveは通信量と本体ストレージを節約する設定がある

 写真・動画の同期に関する設定は、設定アプリの「アプリ」-「写真」-「モバイルデータ通信」で可能だ。モバイルデータ通信をオンにしていても、「アップデートの制限なし」をオフにしていると、1日一定量以上の同期をしなくなる。この制限の詳細はAppleも公開していないが、Wi-Fiのない環境だと大容量動画がいつまでも同期されない(バックアップされない)、というケースも発生しうる。自宅にWi-Fiがない人は注意が必要だ。

写真アプリの設定画面。iCloud同期にモバイルデータ通信を使うかどうか設定できる

 iCloud Driveの同期に関しては、Apple Accountの設定(設定アプリの一番上のユーザー名の項目)の「iCloud」にある「Drive」-「モバイルデータ通信」で設定できる。こちらも無制限にデータ通信するかどうかを設定できる。

 写真・動画とiCloud Driveの同期機能には、iPhone内のストレージ容量を節約する機能がある。写真については上記「iCloud」にある「写真」で「iPhoneのストレージを最適化」を選択していると、iPhoneには写真・動画の低解像度データだけが残り、拡大表示するときは随時iCloudからダウンロードし、しばらく表示していないオリジナルデータは自動でiPhoneから削除されてストレージを節約する、という動作になる。

iCloud Driveの設定画面
iCloud上にオリジナルデータがあるけどiPhone上にはない場合、ファイル名の横にクラウドマークが表示される

 iCloud Driveのファイルについては、「iPhoneのストレージを最適化」相当の機能が標準となっていて、iPhoneにはファイル名や更新日時などのメタデータのみが保存され、ファイルを開くときにiCloudからオリジナルデータをダウンロードする仕組みとなっている。不要になったファイルは、長押しして「ダウンロードを削除」を選ぶことでiCloud上のオリジナルデータを残しつつiPhone上から消せる。

 この仕組みにより、ストレージ容量が少ないiPhoneでも、2TBのiCloudを契約していれば2TB分の写真・動画ライブラリや各種ファイルを扱えるようになる。大量の写真・動画・ファイルを持っている人も、iPhoneはあえて小容量のモデルを購入し、浮いたコストで大容量のiCloudを契約する、ということも可能だ。

 ストレージを節約する機能を使うと、iCloud上にはオリジナルデータが保存されるが、iPhone上にはオリジナルデータが保存されない。そのため、iCloudが使えなくなると、オリジナルデータが失われることになる。iCloudが使えなくなるケースについては後述するが、基本的にはまれなケースで、過失に注意しておけば心配ない。

iPadやMacとの同期も便利

 また、iCloudの同期機能は、iPhoneだけでなくiPadやMacでも使えるので、複数のAppleデバイスを併用するときの連携を容易にしてくれる。例えばiPhoneのAirDropで受け取ったPDFをiPadで編集し、Macで最終確認して返送する、といった作業も、iCloud Driveの同期機能があれば簡単だ。

 複数のAppleデバイスを使っている人は、iCloudを活用しないのは損だし、iPhoneユーザーがこれからPCやタブレットを買うなら、MacやiPadを優先するべきですらある。

同期しないデータを保護するバックアップ機能

 続いて、バックアップ機能について解説しよう。iPhoneで扱う多くのデータはiCloudと同期できるが、同期できないデータに関しては、バックアップ機能でiCloudに保存される。バックアップ機能で保存されるデータとしては、iPhoneのホーム画面のレイアウトやiCloudの同期に対応しないアプリのデータなどがある。

 このバックアップと前述の同期機能のおかげで、例えばiPhoneが故障して新しいiPhoneに移行するときも、簡単に、前のiPhoneとほぼ同じ状態に復帰させることができる。

iCloudバックアップの設定画面

写真・動画の同期がオフの場合バックアップに含まれる

 写真・動画とメッセージアプリのデータについては、iCloudとの同期をオフにしていると、バックアップに保存される。言い換えると、同期をオンにしていればそれらはバックアップに含まれず、バックアップデータの容量を節約することになる。

 バックアップデータの容量節約方法としては、特定のアプリのデータだけバックアップに含めない、といった設定も可能だ。例えば自分のPCやNASから転送した動画ファイルなんかは、オリジナルデータがPCやNASに残っているので、あえてバックアップしない、という選択肢もアリなわけだ。iCloudのストレージ容量とバックアップ時の通信量の両方を節約できる。

 バックアップは手動でも実行できるが、基本的に1日1回、条件が揃ったタイミングで自動的に実行される。条件は「充電器に接続されている」「Wi-Fiに接続されている」「スリープ(画面ロック)中」「iCloudに必要な空き容量がある」などだ。大抵は夜、寝ている間に充電器に置いておけば、自宅のWi-Fi経由でバックアップする、というパターンに落ち着くだろう。

 設定を変えるとWi-Fiなしのモバイル通信でもバックアップできるようになるが、データ通信量には注意が必要だ。2回目以降のバックアップは差分しか通信しないが、初回はギガバイト単位で通信するので、自宅にWi-Fiがないとすぐに1カ月分のギガを消費することになってしまう。

クラウドにもデータ消えるリスクはある

 iCloudなどのクラウドのサーバーは、プロが運用・管理しているので、故障や経年劣化など機械的な理由でデータを喪失するリスクは極めて少ない。Appleがサービスを終了することも考えにくい。

 しかし、クラウドなら絶対に安心というわけではなく、ユーザー側の過失によってデータを失うリスクはある。言い換えれば、過失がないようにユーザーが気をつけておけばいいので、どういった可能性ががあるか、理解しておこう。

 まず、iCloudなどローカルのデータと同期するクラウドの場合、ローカル側でデータを削除すると、クラウド側のデータも削除される。誤操作やウイルス感染など、ユーザー側の過失でデータが消えるリスクがある。

 とくに「iPhoneの内蔵ストレージ容量が足りないから写真・動画を削除したらiCloudからも消えてしまった」というパターンには注意が必要だ。前述の通り、iCloud写真で「iPhoneのストレージを最適化」をオンにしておけば、iPhoneの内蔵ストレージ容量は自動で節約されているので、iPhoneの内蔵ストレージを空けるために写真を削除する必要はない。iPhoneの内蔵ストレージを空けたいなら、使っていないアプリを削除する方が手っ取り早い。

高度なデータ保護は犯罪捜査に支障が出ると批難されるレベルでデータが保護される

 あとは、iCloudで「高度なデータ保護」の設定をオンにしておくと、クラウド上のデータが暗号化され、データを盗み見されるリスクが極めて低くなるのだが、Appleデバイスを1台のiPhoneしか使っておらず、そのiPhoneを紛失したうえで復旧キーや復旧用連絡先も喪失すると、iCloud上のデータにアクセスできなくなり、実質的にデータ喪失状態となる。高度なデータ保護を利用する場合は、復旧キーや復旧連絡先を確認しつつ、できれば複数のAppleデバイスを併用しよう。

アカウント永久停止でiCloudのデータも失われてしまう

 さらにレアなケースではあるが、違法行為や規約違反行為でアカウント永久停止、いわゆるアカウントBANとなることもある。重大交通事故くらいの確率かもしれないが、重大交通事故と同じくらいの危機意識を持ち、どんなリスクがあるかは理解しておこう。

 例えば怪しいサイトやSNSアカウントからApple Gift Cardのコードを購入したとき、そのコードが詐欺などの違法行為で取得されたものだと、違法行為の現金化に加担したと見なされ、Apple Accountが永久停止となる可能性がある。また、パスワードなどの管理が甘いと、アカウントを乗っ取られて違法行為に使われ、アカウント永久停止になるリスクがある。

 このほかにも違法データ(児童性的虐待コンテンツなど)を扱ったりすると、アカウント永久停止&通報となることがある。iCloudの場合、前述の高度なデータ保護をオンにしていると、写真ライブラリ内は誰にも見られることはなくなるが、送信メールはチェックされるので、そこで違法データ探知の対象になるとされている。

 アカウント永久停止になると、iCloud上のデータも同アカウントで購入したコンテンツも全てサヨナラだ。とにかく規約違反や犯罪行為にはかかわらないように注意しよう。

さらなるデータ保護にはNASや外付けドライブを併用しよう

 クラウドもユーザーの過失によって消えるリスクがあるので、万一に備え、別のバックアップを取っておくのも無駄ではない。

 もっとも簡単なのは、写真アプリの設定で、「iPhoneのストレージを最適化」ではなく「オリジナルをダウンロード」を選ぶというのも手だ。iPhone内のストレージ容量が必要になるが、写真・動画の量が少なく、大容量アプリもあまり使わない人には有効な手である。オリジナルデータがiPhoneに残るので、iCloudが使えなくなってもデータは残る。

 写真・動画の量が多く、iPhoneの大容量モデルを購入するコストを避けたいなら、NASや外付けドライブにバックアップを取る手もある。

 iCloudにオリジナルデータが残るようにしておけば、NASや外付けドライブの信頼性やバックアップの頻度は高くなくても良い。数カ月おきにUSB接続の外付けストレージにデータを書き出すくらいでも良いだろう(エラーチェックの手間を省くために毎回フォーマット&書き出しするとベターだ)。

 最悪の場合、数カ月分のデータは失われてしまうが、めったに起きないiCloudのデータ喪失が発生しても、数カ月分のデータを失うだけで済むなら上出来だ。

 また、動画をたくさん撮影するなど、ライブラリが200GBを超えてくるとiCloudの月額料金も高くなってくるので、そこを節約するためにNASや外付けドライブを活用する手もある。動画だけをNASや外付けドライブに保存してiPhoneから削除し(同期しているiCloud上からも削除されることに注意しよう)、それ以外の写真などをiCloudの200GBプランに収める、といった運用だ。