特集
AIに「公式」と認識される企業サイトになれる? 「ブランドTLD」にはAIOの期待も
“信頼の証明”としてブランドTLDが担う役割を考える<前編>
2026年7月1日 06:55
Google AI Overviews(AIによる概要)をはじめとした“AI検索”が情報検索手段の主流になるにつれ、企業サイトはトラフィックの減少に直面してきていますが、問題はそれだけではありません。精巧に作られた偽サイトがAIの回答に引用され、ユーザーを誤導するインシデントが現実に発生しているのです。
この問題の根本には、WHOISやSSL/TLS証明書といった、従来は十分に機能していたサイトの「信頼の証明手段」が、AI検索時代において、ほぼ機能しなくなっているという構造的な課題があります。
では、企業のサイトがAIに対して「ここが公式だ」ということをどうやって証明するのか? その有力な解の1つとして可能性が期待されているのが「ブランドTLD」です。
ブランドTLDとは、.com/.netのようなgTLD(Generic Top Level Domain:分野別トップレベルドメイン)の1つとして、企業が社名やブランド名の文字列を「新gTLD」として創設して自社で利用できるもの。現在、じつに14年ぶりとなる新gTLDの申請受付が8月12日(米国時間)まで行われている。
GMOインターネットグループのGMOブランドセキュリティ株式会社では、企業がブランドTLDの申請・運用するためのサポート/コンサルティングを提供する「GMO『.貴社名』申請・運用支援サービス」を展開。企業のブランド保護や偽サイト防止などの観点からブランドTLDの意義をアピールしているが、そこにもう1つ、AI検索時代における“AIO(AI最適化)”の視点からの期待も浮上しているという。
本記事では、GMOインターネットグループの専門家が、AI検索時代の信頼基盤としてのブランドTLDについて考察する。まず前編では、その前提となるAI検索の概況などについて、「GMO AI最適化ブースト」などのサービスを展開するGMO NIKKO株式会社の田口雅光氏による寄稿をお届けする。(編集部)
AI検索によって、企業サイトに今、何が起きているか
AI検索市場の規模感をまず整理しておきましょう。主要AI検索プラットフォームの現状は以下の図のとおりです。
この変化が企業サイトのトラフィックに与える影響は、以下の図のようにデータが如実に示しています。
BtoBサイトの73%でトラフィックの減少が確認されており(Seer Interactive 2025)、今後のポイントは、AIによる要約の中に自社のサービス名や商品名が出てくるか否かという点に尽きるでしょう。AIの回答に載るか載らないかが死活問題になってきます。
検索における「勝敗」の定義は、「検索順位1位の獲得」から「AIの回答に含まれること」へと、徐々にシフトしているのです。
AIOが悪用され、偽サイトがAIの回答に引用される
AIの回答に載るように努力をしているのは、正当な企業や組織ばかりではありません。攻撃者もこれを悪用し、偽サイトをAIに「信頼できる情報源」と誤認させる攻撃が現実に発生しています。
例えば、ユーザーがAIに「動画編集ソフトの無料体験版をダウンロードしたい」「PDF変換ツールのおすすめは?」と質問する。AIが提示する回答には、一見すると公式のソフトウェア配布サイトへのリンクが含まれているが、実はそれは巧妙に作られた偽のツール配布サイトだった――そうした事例が発生しているのです。
攻撃者は、ユーザーがダウンロードするファイルにマルウェアを仕込み、個人情報を窃取します。このような「偽サイトがAI回答に紛れ込む」ケースが実際に報告されており、ユーザーが被害に遭うケースが増加しています。AIを信頼しているがゆえに、疑わずにリンクをクリックしてしまうことが被害を拡大させています。
なぜ偽サイトがAIの回答に紛れ込むのか
AI検索エンジンは、情報の真偽を人間のように目で確かめるわけではありません。コンテンツの構造、被リンク、外部での言及状況などを機械的に処理し、「信頼性が高そうな情報源」を確率的に推論して提示します。精巧に作り込まれた偽サイトは、このプロセスをすり抜けることがあるのです。
加えて、ユーザーがAIによる要約を鵜呑みにして、元URLを確認しないケースが増えています。こうした“ゼロクリック化”が進んでいることもあって、偽情報が「AIが引用した公式情報」として流通しても気付かないリスクが現実化しています。
偽サイトがAIの回答に紛れ込む4ステップ
- STEP 1:偽サイトの自動・大量生成
攻撃者はAIを使い、AIに「信頼できるサイト」と誤認させやすいキーワード配置・箇条書き・レビュー形式で最適化された偽サイトを数分で大量生成する。 - STEP 2:AIによる誤認識
AI検索が、偽サイトを巡回。「信頼できるサイト」のように最適化された構成のため、AIは本物の公式サイトと誤認してしまう。 - STEP 3:偽サイトをユーザーへ提示
ユーザーがAIに質問すると、AIは「こちらが公式サイトです」「こちらのリンクからダウンロードできます」と、偽サイトのURLを自信を持って提示する。 - STEP 4:被害発生
ユーザーはAIを信用しているため、疑わずにクリック。フィッシングサイトで個人情報を入力したり、マルウェアを含むファイルをダウンロードしてしまう。
攻撃者は「AIがどんな文章やサイトを好んで引用するか」を深く理解しており、AIに好まれるテキスト構造をサイトに組み込んでいます。人間の目には明らかに怪しいドメインであっても、AIの判断フィルターをすり抜け、回答に紛れ込むケースが発生してしまいます。
この問題の深刻さは「悪い情報が広がる」というレベルではなく、攻撃者とAIが技術面で「軍拡競争」をしている状態です。攻撃者がAIを使って攻撃を自動化するほど、偽コンテンツの精度も上がり続けるという「いたちごっこ」となっています。
以上のような状況を踏まえたうえで、ブランドTLDが担うAI検索時代の信頼基盤としての役割について、後編(近日掲載予定)で具体的に考えていきます。



