本音の情報で旅行サイトのナンバー1へ、TripAdvisorのCEOに聞く


 旅行口コミサイト「TripAdvisor」日本版の開設から1年近くが経った。同サイトは、世界2000万人以上の会員が投稿した旅行に関する口コミ情報を無料で検索・閲覧できることを特徴としている。

 また、これまでに「汚いホテルランキング」や「外国人に人気の日本有名スポットランキング」、東京・お台場にある実物大ガンダムの口コミを投稿する「実物大ガンダム Real G お台場」ページの開設など、ユニークなプロモーション展開も行っている。

 米TripAdvisorの創業者であるスティーブン・カウファー代表取締役兼CEOは、「TripAdvisor」以外にも、米国で転職口コミサイトやオンライン自動車コミュニティを手がけており、ネット口コミの第一人者として知られているという。今回は、世界の旅行サイト市場の動向や、日本での現状と今後の展開について話を伺った。

日本版のユニークユーザーは200万人、口コミは10万件

米TripAdvisorのスティーブン・カウファー代表取締役兼CEO

 「TripAdvisor」日本版についてカウファー氏は、「予想以上に順調に伸びている」と話す。試験運用期間を含め日本版開始から13カ月で200万人近くのユニークユーザーを獲得。「TripAdvisor」は、米国をはじめ、英国、イタリア、ドイツ、フランスなど、すでに世界7カ国で展開していたが、「1年でこれだけのユニークユーザーを獲得できた国はない」という。

 日本版サイトは、他の国と異なり、トップページにFlashの地図を設置。地図上から場所を選んで旅行情報を検索できる直感的な作りになっている。「日本のユーザーは、テキスト入力などの検索よりも、クリックしていくことで欲しい情報を探す傾向がある。よって、日本版のサイトだけFlashの地図を使ってナビゲートする方法を実装した」。

 日本版サイトでは、開設から13カ月で12万件以上の口コミを掲載した。日本人はとても細かく口コミを書くところが特徴という。「例えば、お風呂が気持ち良かっただけではなく、バスタブの広さやアメニティの種類、部屋にあるオーディオシステムの説明、ホテルで見たイベントの時間などを細かく書いている」。

 また、「TripAdvisor」では、宿泊施設に対し、口コミ情報と併せて5段階評価を付けられるが、日本人は他の国のユーザーに比べ、ポジティブな評価をすることが多いという。「ただし、良い評価をしていても改善してほしい点なども書いてあり、客観的に評価しようという意識を感じられる」とのことだ。

 「TripAdvisor」では、すべての投稿情報をスタッフが目視確認している。主に個人への誹謗中傷や“やらせ”を見つけるために行う。「ユーザーには、口コミをできるだけ詳しく書いてもらえるようお願いしている。そうすることで、詳しい口コミを見た人が、それに習ってより詳しい口コミを書くという循環ができあがっている」。

 「TripAdvisor」は、ユーザーから高評価を得たホテルを紹介する「トラベラーズ チョイス アワード 2009」を1月に発表した。同時に、清潔感でのレイティングが低いホテルを集めた「汚いホテルランキング」も発表した。 汚いホテルランキングに選ばれたホテルからは苦情が来ることもあるという。

 ホテルからの苦情に対してはこう話すのだという。「残念には思うが、このランキングはホテルに泊まったお客さんの意見を反映したもの。まずはレビューを見てください」。多くの場合はレビューを見て納得し、サービス向上を図り、来年は汚いホテルに選ばれないように努めるという。「この流れが最終的にはホテル業界の質の向上になり、旅行者の満足につながると信じている」とカウファー氏は話す。

すでに日本単体での黒字を実現。旅行会社との提携も進める

TripAdvisor日本版サイト

 「TripAdvisor」は広告モデルにより運営されている。主な広告主は、旅行予約会社や大手ホテルチェーンなど。宿泊施設の紹介ページにあるリンクから予約サイトにアクセスした際の送客数に応じて広告費を徴収している。

 日本版の売り上げについては、「国ごとの収益については非公開だが、想定以上に伸びている。日本単体での黒字を実現した。当初考えていたよりも早い段階で利益を上げることができた」と説明。カウファー氏は、日本版開始を早くしなかったことについて「事業戦略上のミステイク」としたが、「遅すぎることはなかった。1年間の成長がそれを証明している」と話した。

 日本法人のトリップアドバイザーは7月、旅行サイト「楽天トラベル」を運営する楽天トラベルと国内宿泊施設の予約業務で提携した。 その他の旅行会社との提携については、「TripAdvisorは、宿泊施設を予約する前に見るメディア。旅行者に対して有用な情報を提供している。ある意味、旅行の予約会社とはすべておつきあいできると考えている。具体的な社名は出せないが、他にも話は進めている」とした。

 2009年春は、新型インフルエンザの影響で海外旅行を控える人が多かった。グローバルで見ても、メキシコへ行く旅行を検索するトラフィックは大幅に減ったという。「しかし、カリブだったり、他の地域への旅行検索は伸びた。一部のユーザーは旅行を止めたが、大多数のユーザーは行き先を変えたと思う」とカウファー氏は語る。一方、日本では、5月上旬に海外旅行関連のトラフィックに大きな影響があったと説明。「ただし、それはどの旅行系サイトも同じ状況だったと思う」。

 今後のサービスについては、グローバルでは、米国ですでに開始している「航空券の比較」「貸別荘の情報」が大きなセグメントになってくると説明。また、旅行先を決めていない人たちにベストな提案ができる、個人へのレコメンデーションサービスにフォーカスしていきたいという。日本独自のコンテンツとしては、旅行に関する質の高いブログをユーザーが見られるように、関連性の高いページに旅行ブログのリンクを張るサービスを始めた。今後も日本のユーザーに喜ばれるような独自機能を追加してく考えだ。

 このほか、ソーシャルアプリケーションの活用についても言及した。「TripAdvisor」では、SNS「Facebook」上などで利用できるアプリケーションとして、自分の旅行先を他のユーザーと共有できる「私の旅行マップ」を提供している。Facebookでは1200万人が利用しているという。カウファー氏は、「アプリケーションをダウンロードしたとき、Facebook上の友人に通知される仕組みがバイラルを生んだことで爆発的に広まった。『mixiアプリ』においても、そのような機能があれば、今までの経験を生かして、アプリケーションを投入していきたい」と述べた。

 カウファー氏は、「現在の経済状況にあっても、オンラインの旅行予約は成長市場になっている。それに伴い、旅行に関する情報のニーズも増えている」と話す。また、Eコマースが進んでいる日本の市場に寄せる期待も大きい。「TripAdvisorの特徴である“本音の情報”こそ、ユーザーが求めているもの。それにより、ナンバー1の旅行サイトを目指す。そして、旅行者にとって一番役立つサイトになりたい」とアピールした。



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(野津 誠)

2009/9/3 11:00