特別企画

会計ソフトで笑顔に?なぜっ? ソリマチ「会計王」の秘密に迫る

 「確定申告」や「会計」と聞くと、「大変そう」「面倒だなぁ」とネガティブなイメージがついてくるものだ。Windows 95時代に発売して20年、累計145万本を出荷しているソリマチの「会計王シリーズ」は、多くのファンを得ているという。

 ソフトウェアで20周年を迎える製品というのも、そんなにたくさんあるわけではない。果たして会計王とはどんな製品なのか。ユーザーに受け入れられている理由はどこにあるのかを、インタビューをもとに紹介しよう。

“初心者の皆さまからの問い合わせ”にも一日がかりで応えるサポート力

 今回、取材対応していただいたのは、開発部門で長年会計王の開発を担当するSMB事業部 SMB開発部 部長の清塚幸一氏。いつもは、新潟県長岡市にある新潟本社で開発業務に携わっている。

 「初心者の皆さまに安心して使ってください!とわれわれが強くアピールできるのは、実際に多くの会計初心者、パソコン初心者の皆さまをサポートしてきた実績があるからです」。

 実はソリマチでは会計王などの製品のほかに、農家向けのソフトウェアを開発し、長年提供してきた実績があるのだという。

 「農業をされている方向けのソフトウェアは、会計王を発売するずっと前から開発、提供してきました。現在でも会計王とは全く異なる農家の方向けのプロダクトがあります」。

 こうした日常業務で全くパソコンを使う業務がない人たち向けのサポートを長年行ってきた実績があることで、「会計、パソコンの初心者の方にも使いやすい操作、そしてそれを支援するサポートがありますと自信を持ってお話しできるのです」と清塚氏は指摘する。

 確かにそれだけの実績があるのであれば、「初心者の方も安心して使っていただくことができます」と言い切ることができるのもわかる。

 「実際に、当社のサポートセンターに、『自分の目の前にパソコンとCDがあるが、あとはどうしたらいいのか?』という電話がかかってきたこともあります。パソコンも会計王も初めて使うので、その後はどうすればいいのかわからないということだったようですが、そのお客さまには、当社のサポート担当者が一日がかりで電話サポートを行い、無事に使っていただけるようになりました。大変なやり取りだったようですが、結果、お客さまの“笑顔”でサポートを終えることができたわけです」。

 ソリマチではサポートもすべて自社スタッフによって行い、サポート窓口に寄せられたユーザーの声を社内にフィードバックしていく仕組みを構築している。

 「サポートで伺うユーザーの皆さまの声は、次の製品開発に生かすことができる貴重な声でもあります。こうした声をフィードバックしていくことが、初心者から長いこと会計王をお使いの皆さままで、使いやすい製品を開発する礎となっているのです」。

お客さまの声フォーラム
ソリマチサポートセンター

「初心者でも使いやすい」と「プロが満足する機能の高さ」を両立

 では会計王とはどんなソフトなのか。その基本的な機能を紹介していこう。

 まず、導入・設定部分だが、「初心者でも使いやすく!」という発売時から変わらぬコンセプトを具現化するように、初めて会計ソフトを使う人でも初期設定が簡単にできるよう、自分の会社の業種を選ぶだけで初期設定の手間を軽減する機能を搭載している。

 また、会計の知識を持ったプロ向けにも、業務に合わせて細かな勘定科目設定ができるようにするなど、初心者にやさしいといいながら、プロにとっても使いやすくなるよう配慮した点も特徴となっている。

 仕訳・入力では、簿記や帳簿に慣れていない人もスムーズな入力ができるよう、伝票の日付によって税率を自動設定する機能、取引に該当する「摘要」を選ぶだけで自動的に仕訳をしてくれる自動仕訳機能を装備した。

SMB事業部 SMB開発部 部長の清塚幸一氏

 「いかにも会計ソフトらしい見た目で、初めて会計ソフトを使う人には古くさい画面に見えるかもしれません。でも、画面1つにも工夫が凝らされています。最近、パソコンの解像度が上がってきましたね? そのため、最新パソコンで見ると文字が小さく表示されてしまって、見にくいといった声が出てきました。そうしたお客さまに配慮するために、当社では、あえて文字を大きくしているんです。見た目の新しさはないかもしれませんが、視認性を重視した画面になっています」。つまり、使い続けていくうちに、良さを実感できる画面設計になっているということだ。

 伝票の入力形式についても、選んで入れるだけの「らくらく仕訳入力」、複数行にわたる仕訳入力ができる「振替伝票入力」、単式簿記で入力できる「出納帳入力」、3種類の元帳から選んで入力できる「元帳」と、その会社のスタイル、入力作業を行う人の会計の知識によって選ぶことができる。

 また入力にあたっては、長年、会計王を使い続けているユーザーを意識した機能があるという。

 「会計の専門家や、経理部門の担当の方がキーボード操作をする場面をご覧になったことがありますか? 大量の伝票を入力することが多い方のキーボード操作のスピードは、驚くほど速いのです。そのスピードを邪魔することなく、操作できるソフトでなければならないという思いから、当社では『BKI』を採用しています」。

 このBKIとは、ビジネス・キーボードオペレーション・インターフェイスの略。要するに、マウスやタッチ操作によって入力する項目場所を移動することなく、数値や文字を入力した後はエンターキーをたたくだけで、次にカーソルがあってほしい位置に移動する操作だそうだ。「とにかく最小限のキータッチで操作ができるよう、考えて設計しています」。

 なるほど、20年という歴史を持ち、多くのユーザーに使い続けられているのは、こうした長年使い続けているユーザーの利便性を上げるための工夫があちこちになされていることが要因のひとつなのではないか。

 会社の現状を把握するために必要な管理・分析を行う集計機能としても、貸借対照表、損益計算書といった財務状況をリアルタイムで把握できる。資金繰り、分析機能も充実しているが、ワンタッチで消費税納付見込み額を把握して、いざ支払う時に資金不足にならないよう経営者をサポートする機能が用意されている。

 さらには、こうした基本機能に加え、購入後はもれなく次の新バージョンを提供する無償バージョンアップ、最大で15カ月無償の電話サポートを提供している。

 会計や税務に対する疑問に対しては、ソフトを使った実践的な業務の進め方を教えてくれる「実務解説本」、専門家が解説する「消費税徹底攻略本」の提供、ユーザー登録することで、ソリマチ製品に詳しい税理士など専門家から指導を受けることができる「みんなの税務顧問」も用意されているそうだ。

ユーザーが理解しやすいように、会計実務解説本【左】と消費税攻略本【右】を会計王のパッケージに同梱している

青色申告、白色申告と個人の確定申告にも対応

 会計王といえば法人向けのイメージがあるが、実は個人の青色申告から法人の決算まで広く対応していて、ユーザーの約4割は個人事業者だ。

 「個人事業者として初めて購入したお客さまが、法人となっても会計王を使い続けるというケースはよくあります。ステップアップしていく人にも満足してもらいたいですし、一度購入いただいたら、ずっと使い続けてほしいですよね。使っていくうちに良さがわかるという声が多く、一度使うとなかなか手放せないという方がたくさんいらっしゃいますよ」と清塚氏は話す。法人化を目指している個人事業者にも会計王は強い味方となってくれるようだ。

「使いやすさ」は変えず、新しいことにも挑戦し続ける

 20年の歴史を重ねても、変化していくべき部分はどんどん変えているのだと話す。「会計ソフトは、毎年行われる税制改正には迅速に対応します。熱い男・松岡修造氏が登場するテレビCMで消費税と戦うとアピールしているのも、消費税改正に対応していることをアピールすることが狙いです。もちろん、Windowsのバージョンアップにもタイムリーに対応しています。最近ではクラウドへの対応もスタートしています」。

 その一方、20年間決して変わらない部分もあるという。それは、「初心者の皆さまにとっても使いやすいソフトであること、です」と、清塚氏は言い切る。

 「これは最初のバージョンから一貫している部分です。自分で申告のために会計ソフトを買ったものの、うまく使いこなせなかった…というお客さまがいなくなるよう、使いやすく、使うのを止めずに使い続けてもらうソフトになるよう、開発を行っているのです」。

 あのテレビCMが熱く、インパクトがあったのはそんな思いがこもっていたからでもあるようだ。ちなみに、テレビCMにはソリマチの社員が登場しており、「私たちはソリマチ」というのはまさに実感を持って歌われているという。

1995年発売の初代「会計王」
2006年発売の「会計王8」から、イメージキャラクターとして松岡修造氏が起用された
2014年に発売された最新の「会計王16」

 こうしたユーザーの声を受けた地道な進化とともに、開発のトップである清塚氏には、テクノロジーの進化をどう取り入れていくのかという課題がある。

 「これまでの会計王は、先ほどお話ししたBKIのように、キーボードにこだわった仕様としているとお話ししました。しかし、次世代のインターフェイスでは、キーボードに頼る必要がなくなるかもしれません。マウスでも、タッチ操作でも、キーボードでもない、新しい操作が主流となる可能性もある。そもそも一般企業の皆さまにとっては、会計業務を行うことが目的ではありません。本来の業務に専念するために、何もしなくても会計処理はなされている方がずっといいわけです。それを実現するために、われわれはどんなことができるのか。クラウドサービスの動向などを含めて、注視していく必要があると思います」。

 例えばクラウドへの対応では、第1弾としてオンラインストレージデータサービスの提供を開始した。これは、データの消失を防ぐための機能だ。

 「これは本当にクラウド利用の第1弾です。まず、ここから始め、今後クラウドサービスの進化に合わせて、それを取り入れた機能を提供し、より簡単に会計業務を処理することができるものへと進化させていきたいと考えています」。

 開発のトップとして、新しいことにも熱い思いをぶつける清塚氏の顔は、まさに熱く燃える男!!といった印象だった。長い歴史を重ね、さらに新しいものに意欲的に取り組んでいく、ソリマチと会計王の将来は面白いものになっていきそうである。

三浦 優子