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地方移住を検討中の人に知ってほしい「宮崎の暮らしってどんな感じ?」実際に移住した筆者が解説

ITエンジニアの移住・転職を考えるイベント 3月2日開催、参加者を受付中

 コロナ禍となった2020年初頭以降、国を挙げてリモートワークが推奨されたわけだが、実質的にリモートできる職種とできない職種がある。その中でもIT系の業務は、よほど現場張り付きで見てくれと言われるものでない限り、かなりリモートに向いた仕事であろう。どこにいても仕事ができるなら、もはや住む場所は駅に近いとか、通勤圏であるといったことにこだわる必要がなくなってくる。そうしたことから、地方への移住を検討し始める人が増えている。

 そんな中、筆者の故郷・宮崎県では、県内のICT企業を振興するため、ハイクラスのエンジニアに宮崎に来てもらうことで技術向上を狙うという活動「ひなターンみやざき」を2021年度からスタート。移住や転職の参考になる情報の発信や交流イベントの開催などに取り組んでいるところだ。

 筆者も2019年より宮崎県に転居して、執筆活動を続けているところだ。こうした肌感覚も含めながら、「宮崎の暮らしってどんな感じ?」というのをご紹介したい。都市部から宮崎県への移住を検討されている方の参考となれば幸いだ。

「ひなターンみやざき」が近く3月2日(土)に開催するリアル/オンラインイベント「ひなた 照らす ICTプロジェクト vol.6 トーク&交流会」では、筆者も登壇。宮崎県移住者や参加者も交えながら、宮崎での暮らしや働き方について情報共有します。参加者受付中(参加無料)。

サーフィン、ゴルフ、美味しい食べ物…「住めば楽園」

 かつて宮崎県は「陸の孤島」と呼ばれた場所だった。陸路では九州の玄関口である福岡から、九州の背骨にあたる九州山地を「山越え」しなければならないため、鹿児島に行くよりも時間がかかる。この事情は今でも変わらないが、飛行機では東京や大阪からのアクセスが良い。宮崎ブーゲンビリア空港は県庁所在地である宮崎市内にあり、市の中心地であるJR宮崎駅まで電車で10~15分程度。車でも20~30分だ。これほど繁華街に近い空港は、全国でも珍しい。

 このアクセスの良さもあり、LCCの就航に伴って、東京・大阪から多くのサーファーが訪れるようになった。凪の日が少なく、温暖な気候ゆえにほぼ一年中サーフィンが楽しめることから、サーフィンのために移住する人もけっこう多い。人気ポイントの木崎浜は、空港から車で10分だ。

宮崎ブーゲンビリア空港。すぐそばにゴルフ場、その先が人気サーフポイントの木崎浜
一ツ葉ビーチまで、宮崎駅から車で10分。海の近くに住む、早く起きるなどすれば、平日朝の出勤前にマリンスポーツを楽しむことも十分に可能だろう
一年中「海」が楽しめる。住宅地からのアクセスも良く、サーフィンをしない人にとっても、散歩やジョギング、サイクリングコースが充実しているのがうれしいところ

 また、宮崎市内近郊にゴルフ場がたくさんあるのも面白いところ。筆者はゴルフはやらないが、自宅近くのゴルフ場周辺は絶好のジョギング/サイクリングコースも兼ねており、防風林の松林の中は夏でも涼しい。

観光地としても知られる「青島」
宮崎市内には、名門ゴルフコースを有するフェニックス・シーガイア・リゾートもある
宮崎県には多くのサーフポイントがある
宮崎市内にある主要ゴルフ場

 なんでもない食べ物がいちいち美味しいのも、宮崎の隠れた特徴だ。宮崎牛は全国でも有名だが、地元スーパーでも普通に買える価格で手に入る。地鶏の炭火焼きも、ぜひ地元で本物を味わって欲しい逸品だ。魚介類は県北と県南には漁港がたくさんあることから安くて新鮮、回転寿司チェーンで食べても十分旨い。痩せ気味だった筆者の妻は、宮崎に移住後、1年で7kg体重が増えた。

地鳥の炭火焼き
海鮮丼も隠れた名物

 そんな妻が宮崎への移住に付いてきてくれたのは、妻の友人がかつて宮崎に転勤していたことがあり、「あちこち行ったけど、一番良かったのは宮崎! 宮崎ならもう一度転勤してもいい!」と断言していたからである。「住めば都」と人は言うが、「住めば楽園」感が強いのが宮崎の魅力である。

東京より日の入りが30分ほど遅いので、定時に退勤すれば夕焼けの中で家路につくことができ、アフター5が長く楽しめる。夕方にジョギングする人も多い

買い物、移動手段、住まい…宮崎の暮らしってどんな感じ?

 宮崎で生活するとなれば、実際にそこでの暮らしぶりはどうなのか、気になるところだろう。現地の生活は、現地の人の習慣に習うのが一番いい。なぜならば、地元の人はそこでの暮らしに最適化しているからだ。

 まずは買い物のアクセスだが、県内のだいたいの地域には住宅地近郊に大型スーパーやドラッグストアがあり、コンビニもよほどの山間部でなければ各所にある。セブン-イレブン、ローソン、ファミリーマートが中心だ。物価としては、おそらく想像していたよりは安く感じないかもしれない。食品は首都圏よりも多少安いが、全国流通の日用品(洗剤・飲料その他)については同じか、陸路流通が遠いことからちょっと高いこともある。

自動車免許を持ってないという方は、宮崎県が主催する「宮崎ひなた移住倶楽部」の会員になることで、自動車学校教習料金の割引が受けられる。宮崎県への移住を検討している県外居住者を対象とした無料の会員制度で、そのほかにもレンタカー割引、引越費用割引、住宅ローン等の金利優遇などの各種割引・特典サービスを提供している

 宮崎生活を漫喫するなら車は必須。一家で2台所有している家庭も多く、筆者の住むマンションは部屋付きの駐車場が2台分ある。日々の買い物は、車で5~10分程度の範囲が射程距離となるため、生活圏は半径2~4kmぐらいと、都市部よりもかなり広い。アメリカの地方都市で暮らすようなイメージだ。

 宮崎の暮らしの特徴は、外食が多いということかもしれない。大手フードチェーンの方に伺ったのだが、四国と宮崎は全国でも外食率が特に高い地域なのだそうである。昼はもちろんのこと、夜も多くのレストランが家族連れで賑わっている。高校生ぐらいになると、友だちと集まってはあちこちの食べ放題の店へ繰り出すというのも定番だ。

 パソコン・IT機器の入手に関しては、ヤマダ電機、ベスト電器、エディオン、ケーズデンキなどの大手家電量販店が各市に進出しているほか、PC専門店なら宮崎市中心部に「パソコン工房」、そして2023年には「ドスパラ」がオープンした。Apple製品は、宮崎県で最大の売り場面積を誇る「イオンモール宮崎」の中にApple正規サービスプロバイダの「C smart」があり、持ち込み修理にも対応する。

 とはいえ秋葉原のような場所はないので、家電量販店で入手できない機器や専門書はAmazon等で購入することになる。福岡の拠点に在庫があるものは翌日、首都圏からの配送でも翌々日には届く。ただし、宮崎市から遠く離れた地域だと、あともう1日はプラスで考えておいた方がいいかもしれない。

再開発で整備された宮崎駅前

 鉄道(JR九州)は、通学に使う高校生はいるものの、通勤や生活ではほぼ使われない。列車の本数が少なく、路線も南北に走るだけだからだ。つまり住まいは駅を中心に考えるのではなく、幹線道路やショッピングモールを中心に考えた方が、圧倒的に便利である。

 SUUMOによると、賃貸相場としては、宮崎市内のマンションはでワンルーム3.5万円、2LDK/3K/3DKで6.0万円程度である。3LDK以上になるとマンションは少なくなり、戸建ての賃貸が多くなる。新築戸建ての相場は、住宅金融支援機構の2018年度の調査によると、土地付き注文住宅の平均が3362万円であった。ただ、いきなり知らない土地で家を買おうという人は少ないだろう。まずは試しに住んでみるところからお勧めする。

 市の中心地にコワーキングスペースやインキュベーション施設があるのも、土地に余裕がある宮崎ならではと言える。気分を変えてのノマドワークも可能なら、ビーチに行けばワーケーション気分も味わえる。テレワークが可能な職種なら、宮崎のこうしたロケーションを使わない手はない。

市の中心部にあるコワーキングスペース「ATOMica宮崎」(ATOMica
「ATOMica宮崎」がある「宮崎ナナイロ東館」は宮崎市繁華街の中心
筆者がよくワーケーションする一ツ葉ビーチ(海辺・砂浜でのPCの使用はあくまでも自己責任で。筆者の場合はこれまで特に問題は起きていないが、潮風や砂などの影響で故障・劣化の可能性も考えられる)

「お試し滞在」で宮崎暮らしを体験してみるという手も

 宮崎県が開設している移住検討者向けの情報サイト「宮崎県移住・UIJターンサイト あったか宮崎ひなた暮らし」では、県内の各市町村による仕事や住居、子育てサポート施策などの情報がまとまっている。

 また、各市町村では「お試し滞在」の受け入れも行っており、それら受け入れ施策もリストアップされている。今回の記事は主に宮崎市内近郊の生活事情をまとめたが、山間部では環境も大きく異なる。移住後の暮らしをイメージするために「お試し滞在」してみるのも手だ。

実際に移住した筆者が、3月2日のイベントに登壇します

筆者は、3~10月には海辺で仕事することも。宮崎は晴天が多いため、ソーラーパネル&ポータブル電源を持って行くと、めっちゃ発電するので電気代がタダです(ただし、前述したように海辺・砂浜でのPCの使用はあくまでも自己責任で)

 「ひなターンみやざき」では、交流会イベントを年に数回開催しているが、直近となる3月2日に東京・渋谷で開催される「ひなた 照らす ICTプロジェクト vol.6 トーク&交流会」では、筆者も登壇させていただけることになった。

 筆者は宮崎に暮らしながら東京の仕事を続けているわけだが、こうした働き方は、コロナ禍以前には考えられなかったことである。こうした「宮崎に東京を持ってくる」働き方のことや、宮崎での生活や子育て事情、東京と宮崎を行ったり来たりしながらのハイブリッド生活のことをお話しできればと思っている。

 そして地元宮崎にはどんな仕事があるのか、どんな働き方なのか、そうした情報も共有できればと思っている。

[ひなた 照らす ICTプロジェクト vol.6 トーク&交流会]
宮崎県出身、身内が宮崎県と縁がある、宮崎県と接点を持ちたい、宮崎県の自然や環境に興味がある、宮崎県に行ってみたい・住んでみたい……など、様々な目的で「宮崎県」をキーワードに集まったICTに関係する人材の交流会イベントです。リアル会場/オンライン配信で開催します。

  • 開催日時:2024年3月2日(土) 14:55~17:15
  • リアル会場:MEETING SPACE AP 渋谷道玄坂(東京都渋谷区道玄坂2-6-17 渋東シネタワー11F)
  • オンライン配信:お申し込みいただいた方に参加URLを後日送付
  • 定員(先着順):リアル会場 16名、オンライン 100名
  • 参加費:無料 お申し込みはこちら(Google フォーム)
  • 対象者:宮崎県のICT企業への就職を考えている方、宮崎県への移住に関心のあるICT技術者など
  • 登壇者:小寺信良氏(ライター/コラムニスト)、今村充裕氏(株式会社NOWVILLAGE代表取締役)、宮崎県移住者ゲスト2名。このほか、延岡市と宮崎市のPRトークも実施

小寺 信良

1963年、宮崎県出身。18年間テレビ番組制作者を務めたのち、文筆家として独立。専門分野はコンシューマー映像機器、放送機器、映像技術、放送文化、エネルギー問題、子どもとIT、PTAなど。インターネットにまつわる諸問題の解決に取り組む「一般社団法人インターネットユーザー協会」代表理事。2015年より2019年まで、文化庁文化審議会著作権分科会専門委員。2019年より故郷の宮崎県へ移住。コラム「小寺信良のくらしDX」をImpress Watchにて連載中。