【イベントレポート】
~「ユビキタスネットワーク技術サミット2002」講演レポート下り最大24MbpsのADSL+は2003年1月に承認の見込み■URL 11月21日と22日の2日間、都内のホテルで「ユビキタスネットワーク技術サミット2002」が開催された。主催は情報通信技術委員会(TTC)、電波産業会(ARIB)、The ATM Forum。テクニカルセッションでは、ユビキタスを実現するインフラとして、DSL・ワイヤレス・光ファイバーについて講演が行なわれた。
●下り最大24MbpsのADSL+は2003年1月に承認の見込み まず、住友電気工業IT技術研究所の松本一也氏がDSL技術について講演した。現在のDSLで採用されている方式や、日本での普及状況などを説明した後、ITUで今年勧告された「ADSL2」や、2003年1月に承認が予定される「ADSL+」について触れた。 ADSL2は従来とデータレートは同じだが、速度よりも長距離化といった機能を求めたもの。ADSL+は、現在のADSLで使っている25.9kHzから1104kHzまでの間に249波の信号を使って通信を行なうものを、上を2倍となる2.2MHzまで広げて伝送路を増加させ、下りの通信速度を最大で24Mbps程度まで伸ばす方式。さらに、New Annex of G.992.1として、ADSL+と同じ方式だが、ISDNとの干渉に対応したものも2003年1月に承認の見込みだという。 また、高速化と同時に長距離化についても検討を進めているとし、同期に柔軟性を持たせて長距離化を図るバージョンのAnnexC方式や、LDSL(Long reach DSL)も2003年1月の会合で承認される予定とした。
●ホットスポットは第4世代移動通信へのイントロダクション 次に慶應義塾大学の中川正雄教授が、ワイヤレス技術について講演を行なった。中川氏は移動体通信では2004年に第3世代を少し進めた3.5Gとなり、10Mbpsの通信が可能になると予測、その後の4G、5Gへの展開に独自の予測を披露した。 4Gでは、マルチパスの影響を防ぐマルチキャリア方式のCDMAとなるとし、アンテナもアレイアンテナに変化すると予測した。アレイアンテナは送受信のいずれもアレイタイプとなるMIMO(Miltiple Input Multiple Output)を採用することで、並列とダイバシティを両立できるとし、この分野の技術については、盛んに研究と議論が行なわれている最中だという。 移動体通信が発達する一方で、無線LANの高速化も進んでいく。IEEE 802.11aの倍となる100Mbpsの通信も検討中で、25GHz帯の無線を使った100Mbpsの通信方式の標準化の準備も進められているという。高速な無線LANがホテル・コンビニ・喫茶店・空港などで使えるようになり、これが第4世代移動体通信へのイントロダクションとなる可能性を示唆した。 中川氏は、高速化と無線の周波数や出力の関係にも触れ、1Gbpsを実現するためには60GHzの周波数が必要で、20Gbpsを実現するためには200Wの無線出力が必要になるとした。この周波数で高出力を出すと「通信のついでにお茶も沸かせる」と例をあげ、実際の使用には電磁波の危険性が高い領域になるとした。 また、中川氏はこの問題を回避して10Gbpsを超える通信を行なう方法として光無線LANを挙げた。中川氏が検討している方式は赤外線を使った従来からの光無線通信ではなく、照明にデータ伝送を織り込んでしまうというものだ。現在行なっている実験では、青色LEDと蛍光材を組み合わせた照明では1Mbps、赤青緑3色のLEDを使った照明では10Mbpsほどの伝送速度が得られていると説明した。
●光ファイバによる通信のトレンド 講演の最後は、NTT アクセスサービスシステム研究所の前田洋一氏が「広帯域光学アクセス・システムの標準化傾向」として、B-PONを中心とした光ファイバを使った通信のトレンドについて解説した。 PONとはPassive Optical Networkの略で、光ファイバの信号を光学スプリッターという分岐装置でそのまま分けるもの。1対1で光ファイバを敷設する必要がないため、安価で広帯域なネットワークを構築する場合に向いている。NTTのサービスでは、Bフレッツ・ファミリータイプに採用すると、ファイバを複数のユーザーで共用しているため、専用で使うベーシックタイプよりも低コストでサービス提供を行なえる。 前田氏は、B-PONの標準化がITU-Tで行なわれており、終端装置などの標準化を目指しているとした。さらに、B-PONはWDMによる多重伝送を行なえば、通常のデータ伝送と同時に、光ファイバを伝送路としたCATV放送を容易に行なえると説明した。 ◎関連記事 (2002/11/22) [Reported by 正田 拓也] |
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