【業界動向】
米Sanswireら、802.11プロトコルを使った「National Wireless Network」を構築カバーエリアは“米国全土”~成層圏飛行船による無線ブロードバンドサービス■URL 無線LANサービス企業の米Sanswireが成層圏飛行船を開発しているベンチャー企業Telesphere Communicationsとジョイントベンチャーを設立し、米国全土だけでなくカナダやメキシコの一部までもカバーエリアとする無線ブロードバンドサービスを計画していることが明らかになった。 この計画では、人工衛星が飛ぶ宇宙よりも低い層である成層圏に直径約60メートルの飛行船「Stratellite」(成層圏を意味する英語のstratosphereと人工衛星を意味するsatelliteを合わせた造語)を飛ばし、802.11プロトコルを使った「National Wireless Network」を構築しようとするものだ。この飛行船は高度約21キロを飛行し、視界に入るエリアは76万8,000平方キロにもなる。それぞれの飛行船は地上から遠隔制御され、12カ月、成層圏にとどまることができる。飛行船は数百キロの荷物を積むことができ、太陽電池で姿勢を制御するためのモーターを搭載している。
これまで人工衛星を使ったブロードバンドサービスは存在したが、データを高速にダウンロードすることはできたものの、地表から人工衛星までの距離が遠すぎるためにデータをアップロードすることができず、双方向の通信を確立するために別の通信手段を必要とした。飛行船の場合、人工衛星程高い高度を飛行しないため、地上からでも双方向通信が可能になるという。 SanswireとTelesphereのジョイントベンチャーは、12月11日にアリゾナ州フェニックスにおいてTelesphereが開発した飛行船のプロトタイプを使ってこの無線ブロードバンドサービスの公開実験を行なう予定だ。この公開実験では半径16キロ以内に設置されたラップトップコンピューターが飛行船を介して接続される様子を見られるという。 TelesphereのスポークスマンFrank Lively氏は成層圏飛行船を利用することのメリットについて「人工衛星に比べて積荷を簡単に回収、アップグレード、再打ち上げを一時間ほどのうちに行なうことができる点にある」と説明した。また、この飛行船を使ってブロードバンドサービスを計画しているSanswireのCEO、Michael Molen氏は「我々のNational Wireless Networkは国全土をホットスポットに変え、会員がいつでもどこでも自分が選ぶ場所でインターネット接続できるようにするだろう。“ラストマイル”という言葉は問題ではなくなる」と新サービスへの期待を表明した。 SanswireとTelesphereのこのジョイントベンチャーに伴う契約で、Sanswireは最大で50%のTelesphere Communications株式を保有する権利を持つ。Sanswireはこの飛行船ネットワークを使った無線ブロードバンドインターネット接続サービスの権利を保有するだけでなく、Telesphereと協力して個々の飛行船に他の無線サービスプロバイダーがアンテナを設置するためのスペースを設けて、それをマーケティングして行く考えだ。Telesphereでは、SanswireのNational Wireless Networkだけではなく、携帯電話、第3世代や第4世代携帯電話、MMDS、ページャー、固定無線電話、HDTVなど飛行船の空きスペースを使ったさまざまな用途が考えられるとしている。Telesphereによる最初の成層圏飛行船の打ち上げ予定は2004年となっている。 (2002/11/29) [Reported by 青木 大我 (taiga@scientist.com)] |
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