【イベントレポート】
安心・安全なP2Pコミュニケーションを目指す「セキュアP2Pフォーラム」■URL 27日、P2P技術を生かしたビジネス展開を目指す「セキュアP2Pフォーラム」の第1回シンポジウムが、川崎市産業振興会館で開催された。同フォーラムは、P2P型コミュニケーションの実現に向け、年4回程度研究会を開催する。
このフォーラムでは、P2Pを「最短接続経路を経ることによる通信効率の向上、必要に応じて個人同士がつながることによるダイレクトコミュニケーションなど、大きな可能性がある」と高く評価している。その一方で、コミュニケーション内容の管理が徹底できない、違法コンテンツの流通や社会モラルを逸脱したコミュニケーションが起こりえるといったマイナス面を危惧している。そこで、安心で安全に利用できるP2Pのあり方について、技術面、運用面、法整備などを中心に活動していく予定だ。 シンポジウムではまず、慶應義塾大学理工学部の岡田謙一教授が「P2Pは情報共有の本命となるか?」と題する講演を行なった。岡田教授は、「家庭においてインターネットは、重要なライフラインの1つになりつつある。しかし、水道、電気など既存のライフラインに比べると、安全・安心面で弱いところがある」と指摘する。続けて、「もともとインターネットとは、分散ネットワークであり、P2Pネットワークは最もインタミュニケーション形態だ」と語った。 ●パネルディスカッション「セキュアP2Pの光と影」
続けて、実際にP2Pコミュニケーションビジネスを展開している企業の代表者を迎えて、パネルディスカッション「セキュアP2Pの光と影」が行なわれた。パネリストには、Q&Aサービス「OKweb」を展開している株式会社オーケイウェブ代表取締役副社長福田匡成氏、P2Pフレームワーク「SOMAnet」上でグループウェアを提供しているアリエル・ネットワーク株式会社COO小松宏行氏、コミュニティサイトを展開する株式会社ガイアックス代表取締役社長上田祐司氏、および携帯電話コンテンツプロバイダーの株式会社ザッパラス取締役朝雄博氏の4人。 まず小松氏が、「インターネット上では、依然としてクライアント/サーバー型アプリケーションが支配的だが、本来インターネットは分散的なものだ。オープンソースアプリケーションやグリッドコンピューティングなどが出てきたが、P2Pフレームワーク上で動作する、我々が想像もしなかったアプリケーションが存在し得るはずだ」と展望を語った。 また、上田氏は「インターネットを使わない企業は、損をしている。当然、これからP2Pを使わない企業は損をするだろう。P2Pは、コストダウンに大きな貢献をする」と述べた。同氏は、ビジネスを展開するにあたり、必ずしもピュアP2Pである必要はないという。むしろ、収益を上げやすいのはハイブリッド型P2Pだともいう。「P2Pだからといってセキュリティが難しいということはない。それは、クライアント/サーバー型で運用していても同じことだ。“双方向だから”という視点から、セキュリティをどう確保するかが重要になる」とコメントした。 コーディネーターの岡田教授は、「匿名性」について、各社の取組みについて質問した。まず、福田氏は「『OKweb』では、書き込みの内容は確認しているが、匿名ベース。ある企業では、部長の質問に対して、新人社員が解答、部長が新人に対して丁寧にお礼をしたことがある。これが実名だったら、書き込みにくかったはずだ」と語り、匿名性はコミュニケーションを活発にするために有効だという視点を示した。 小松氏は、「P2Pグループウェア『アリエル・エアワン』は、できるだけ匿名性を排除する方向で作った。しかし、実名でなければならないというわけではなく、固有のIDなどで、本人の同一性がある程度確保できればいい。重要なのは、何かが起こった場合に、第三者が該当者の素性を確認できるシステムだ」という。さらに、「固有のIDのような『ペルソナ』は、行動履歴が残り、そこから信頼性やパーソナリティなどが得られ、あたかもネットワーク上に人物が実在しているようになる。しかも、履歴重視の文化では、それが縛りになって逸脱行動が取れない」と分析し、匿名だから必ずしも安心できないということはないと語った。 「ペルソナ」については、ガイアックスの上田氏も触れ、「コミュニティで名乗っているハンドルネームに、ユーザー自身も愛着を持つようになる。そのIDが攻撃されると、わが身が攻撃されたかのように怒る人も多い」という事例を紹介した。また、匿名性に関しては、「既存のクライアント/サーバーでも、匿名性は高い」と指摘した。 携帯電話コンテンツで決済を伴うザッパラスの朝雄氏は、「何かあった時に特定できる仕掛けは必要。だが、決済においても匿名性は最大限守れるようにしたい。これは、実社会で1万円札を使う時と同じだ」と、店員と顧客の関係を引き合いに出しながらコメントした。 会場との質疑応答においては、「安心・安全なP2Pコミュニケーションを目指すため、フォーラムは何を行なうのか」という質問が出された。岡田教授は、「技術面での仕掛けだけでは不十分だと思う。ガイドラインやトラストシールといった運用面や、法律面などを今後検討していきたい」と回答。「セキュアP2Pフォーラム」の今後の活動にしたい。 (2003/1/27) [Reported by okada-d@impress.co.jp] |
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