【イベントレポート】
~「周波数資源開発シンポジウム」でNEC阪田氏が講演ユビキタスのキラーアプリは“VoIP携帯電話”と“UWBによるホットスポット”■URL 独立行政法人通信総合研究所と社団法人電波産業会は26日、情報通信月間参加行事としてシンポジウム「周波数資源開発シンポジウム」を開催した。その中から、日本電気株式会社インターネット研究所所長阪田史郎氏の「ユビキタスITの技術動向と今後の展望-セキュリティ技術を中心として-」と題した講演を紹介する。 阪田氏は、ユビキタスコンピューティングを実現するための無線LANソリューションにおける主要課題として「ローミング」「ビジネスモデル」「キラーアプリ」「セキュリティ」の4点を挙げた。 第1点目の課題として「無線LANの仮想的広域利用」を実現するためには、事業者間でのローミングが不可欠であり、ローミングをサービスレベルで提供するためにはAAA(Authentication、Authorization&Accounting:認証、認可、課金)機構がさらに必要だと阪田氏は述べている。既に、このようなローミングを行なうための仲介サービスも現われており、今後は802.11aや802.11bの混在環境で、片方が切れても、もう一方のネットワークに自動的にローミングするシステムなどが登場し、その技術には「Mobile IP」と「802.11f」が利用されると予測した。 2点目の課題となるビジネスモデルの問題では、アクセスポイントの設置費用や回線費用をISP側と店舗側でどう費用を分担するかという問題を挙げ、利用者が無料で利用できるサービスへの発展なども考えられると述べた。また、利用者の要求度が高い「新幹線」や「カフェ」、「電車」におけるホットスポットの増加が、ユビキタスコンピューティング普及の鍵を握るとした。 ユビキタスコンピューティング普及へのキラーアプリケーションには、「VoIP携帯電話」と「UWB(ultra-wideband)による10m以内での超高速ホットスポットサービス」を挙げた。VoIP携帯電話は、定額制などのメリットもある一方、通信相手が限定される点や、移動しながらの利用が難しい、端末の消費電力が大きい、伝送帯域確保に100kbps程度必要とするためアクセスポイントが大量に必要になるなど多くの障害を抱えており、当面の実現は難しいだろうと語った。 UWBは10m以内の近距離に限るものの、約100Mbpsの超高速で通信できるため、映画(DVD)や大容量ファイルをホットスポットでダウンロードしたりストリーミングするなどの用途にも対応が可能だ。このため、リモコンやMPEG4 Video、4~9Mbps程度のテレビストリーミングなどへの応用が考えられている。また、AV機器などの室内利用においては、HCF(Hybrid Coordination Function)の概念により優先制御と品質保証の制御を可能にする802.11eが有望だと予測した。 セキュリティにおいては、“セキュリティ方式全般”の標準化を図る「IEEE 802.11i」と“セキュリティの中の認証機構”を推進する「IEEE 802.1x」を説明した。これらは、IEEE802.11において現在強力に推進されており、802.11iは2003年末には仕様策定されるという。802.11iは、従来のWEPと比較して、AESに対応している点や、KerberosやRADIUSといった認証システムのサポートが強化されているため、非常に高度な無線LANセキュリティが実現されるという。また、802.1xの認証方式では、「EAP-MD5」や「EAP-TLS」、「EAP-TTLS」など複数の方式が登場しているが、それぞれ長所・短所があり、定着へは時間が必要だと語った。 また、ユビキタス情報環境での“究極のヒューマンインターフェイス”は「ウェアラブル端末」だとし、それを利用することによって、「超分散コンピューティング」や「インターネット・パベイジョン(pervasion)」も発展するだろうと語った。インターネット・パベイジョンとは、ウェアラブル端末により一層インターネットが普及することを指し、これによりトラフィック特性や状況に応じたエンドトゥエンドのQoS制御が必要になるという。ウェラブル端末の今後の傾向では、2010年までは機能や情報受信が優先され、利用方法も特定のアプリケーションのみに限られる。しかし、2010年以降はデザイン重視型の“ファッション性”や情報発信重視の傾向へ進み、利用アプリケーションも日常的なものまで利用可能になることによって、一層普及していくだろうと予測した。 (2003/5/26) [Reported by otsu-j@impress.co.jp] |
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