【N+I 2003レポート】
「ShowNetウォーキングツアー」で最新技術を一巡り■URL もはや「NetWorld+Interop」恒例となった、会場を舞台とした大規模ネットワーク実験「ShowNet」。展示会場内の各出展社ブースやコンファレンス会場がギガビットクラスの回線で結ばれた、いわば最新技術のショウケースだ。 まず、今年のネットワークの概要をまとめておこう。インターネットへの回線、つまりエクスターナルバックボーンは10ギガビットイーサネット(GbE)が2本、光ファイバでNTT大手町ビルにつながっている。スピード、本数とも昨年と同じだ。 セキュリティシステムも昨年同様、IDSシステムを採用。ファイアウォールのようにパケットをワンクッションさせる方式ではなく、不審な動きをするパケットを監視するシステムだ。大きく変わった点は、10GbEがブースの末端まで来たことが挙げられるだろう。 大手町から来た光ファイバはShowNetを司るNOC(Network Operation Center)に入り、ホールごとにあるPOD(Pedestal Operation Domain)に中継。さらにそこから10Base-T、10/100Base-TX、100Base-T、1000Base-SX、10Gbase-LRのタイプで各ブースに接続されている。 ネットワークは、およそ2週間前から機材を幕張メッセに持ち込み、テストを繰り返しながら構築される。広大な展示領域をカバーするため、ケーブルの引き回しだけで高所作業車24台と500人の工員が従事しておよそ24時間かかるという。使用するイーサネットケーブルの長さは延べ90km。幹線は光ファイバ化されているため、この数字には含まれていないというから驚きだ。
では、NOCから順番に見ていこう。NOCはその名前が示すとおり、いわばShowNetの総司令部とも言えるブースだ。中には常時エンジニアが控えており、トラブルがあった場合は部屋の中に設置されたサイレンで通知、すぐに処理が行なえるようになっている。 PODはフロアに設置された中継基地だ。各PODには、天井から光ファイバの束がぶら下がって来ている。これにはNOCからの10GbE回線と各ブースへのデータを送るケーブルが束ねられている。このラックには各スポンサーが提供するルータ、スイッチ、電源など最新設備が整えられている。中には擬似的に負荷を作り出して、ネットワークの耐久性と信頼性をテストする機材や、これらの機器を遠隔操作するためのコントローラーなども含まれる。 ネットワーク構築で一番重要なのはリスクマネージメントと言われるが、その点にも抜かりはない。NOCと各PODとは通常のネットワークとは別に、「スパイネット」と呼ばれる制御用のネットワークが用意されており、メインのネットワークがダウンしたときでもNOCから直接各PODをオペレーティングできるように設計されている。また、POD内は扇風機や冷房で冷却しなければならないほど熱対策が重要になるが、POD内の温度と湿度は常に遠隔監視される。停電対策のためのUPSはもちろん、電源トラブルに備えて各PODの電源は多重化される。 不正侵入やウイルス対策には、前述のIDSシステムが用いられているが、万が一、侵入された場合でも、各PODに設置されたトレースシステムで出所を突き止め、被害の拡大を防げるようになっている。例えばウイルスのようなものが伝播した場合、どこから来てどこへ流れたか、その経路を追跡できるわけだ。
ホール8の壁際にある「ShowNet Cafe」は、IBMの協力により設置されたパソコンで直接10GbEのスピードを体験できる場だ。ブースをひと回りして歩き疲れたら、休憩がてら寄ってみるのもいいだろう。筆者も日頃アクセスしているサイトなどを巡回してその使い心地を試してみたが、「え、普段はパソコンやサーバー側の限界じゃなくって、回線のほうがボトルネックになってたんだ」と感心することしきりだった。 さらにそのそばには、過去のShowNetで使用された機器や当時の写真でその足取りを振り返る「ShowNet Museum」なるブースが用意されている。「現在はセキュリティ面でとても利用できないものばかり」だが、エンジニアの手を焼かせない優秀な機械だったために(?)印象の薄い過去の名機や、彼らをとことん苦しめた迷機(?)が展示されている。 なお、これらShowNetの見どころをエンジニアとともに1時間ほどかけて回る「ShowNetウォーキングツアー」が今年も開催されている。ホール3の2階に受付窓口が設置されており、30分ごとにエントリーできるようになっている。毎回25名の定員制で、人数が多い場合は抽選となる。技術にあまり詳しくなくても楽しめるよう配慮されているので、参加してみてはいかがだろうか。
(2003/7/2) [Reported by 伊藤大地] |
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