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【N+I 2003レポート】

~N+I コンファレンス

RFIDはリアル社会とバーチャル世界を結ぶ

■URL
https://ssl.key3media.co.jp/sfm2003ni/forum_preview_018.html

 千葉・幕張メッセで開催されているNetWorld+Interop 2003 Tokyo。開催2日目となる3日には、「無線タグ(RFID)の応用と展開」と題しコンファレンスが行なわれた。コンファレンスでは、NTTサービスインテグレーション基盤研究所の岸上順一がコーディネータとなり、国立情報学研究所 ソフトウェア研究系の佐藤一郎氏、慶應義塾大学環境情報学部助教授の中村修氏、サン・マイクロシステムズの湯本由起子氏がそれぞれRF-IDタグの研究状況や応用などについて報告を行なっている。

 まずRFIDについておさらいしておこう。RFIDとはRadio Frequency IDの意味で、無線で情報を送信する機能を持った小さなチップだ。これに情報を書き込み、あらゆるモノに付けることで、モノの情報を一括してコンピュータで管理できる。インターネットとの連携も含め、ユビキタス社会の実現に重要な役割を果たすデバイスだ。

●RFIDのトレンドはマイクロ波方式


 まず、国立情報学研究所 ソフトウェア研究系の佐藤一郎氏がRFIDの概要と現在の技術トレンドについて技術面を中心に解説した。詳細な内容はここでは避けるが、RFIDの特徴として、「リーダーの電源を利用するため、RF-IDチップ自体は電源を持っていないこと」「チップ自体は、自らの識別子を返信することしかしないこと」を挙げている。トレンドは、JRのICチップ型プリペイドカード「SUICA」が採用する13.56MHzもしくは135kHzを利用した電磁誘導波方式から、マイクロ波を利用するUHF方式、2.45GHz方式へと移り変わっているという。

 その主な原因は通信距離の問題だ。電磁誘導波方式では通信距離が数十センチメートルと短く、意識的な読み取り作業が必要になる。一方、UHF形式ならば3メートル、2.45GHz形式なら1mと通信距離が伸びるのだ。佐藤氏は「SUICAは確かにRFIDだが、人がカードを取り出して、センサーにかざさなければいけない。これではバーコードと大差ない。このレベルから、人がなにもしなくても自動で持っているモノを認識するような仕組みに変えていかなければならない。読むために人間がなにもする必要がないというのはある意味で怖いが、流通や在庫管理への応用にはいいだろう。実現すれば劇的にアプリケーションが変わってくる」と語った。

 また、今後、複数のタグを同時に読み取れるような仕組みや、タグ情報の漏洩といったプライバシーの問題などの課題に取り組んでいくという。最後に佐藤氏はRFID技術の意義について、「リアルの世界と(インターネットという)バーチャルの世界を結ぶ技術だ。これまでITはバーチャルの方向にしか進んでこなかった。RFIDの出現でインターネットの世界はリアル世界と結ばれ、生活やビジネスが大きく変わってくるだろう」と述べた。

 なお、佐藤氏はコンファレンス終了後に、現在検討されているRFIDの応用アプリケーションとして、「有料テレビ番組を管理するペン型RFID」を紹介した。ペン立てのようなリーダと組み合わせて利用することで、ペンを指すだけで有料テレビが見られる仕組み。これが実現すれば「コンビニで番組購入も可能になる。さらに番組がオンデマンドになり、ペンを持ち歩いて別の場所に移れば、さきほど見た続きからでも見られる」と語った。

●意外なAuto-ID Centerの発足由来


 続いて慶應義塾大学の中村修氏は、慶應大学がMIT(マサチューセッツ工科大学)らと共同で進めているRFID関連の標準化団体「Auto-ID Center」の活動と現状についてレポートを行なった。

 まず中村氏は、米国Auto-ID Center誕生のきっかけを披露。なんと、米国では流通の過程でモノがなくなることが多く、物流企業がそれを防ぐシステムを要求したことがきっかけだという。RFIDが普及すれば、各製品個別にタグを付けて管理することで、在庫管理や製品追跡が可能になる。1999年に発足したこの団体には、前述のMIT、慶應大学のほかに、英ケンブリッジ大学、豪アデレード大学、中国の復旦大学、スイスのチューリッヒ工科大学などが参加している。

 Auto-ID Centerは、Action GroupとWorking Groupの2つの組織から構成されている。Working Groupは「Real Space Network」「Ubiquitous Networking」をキーワードに、学問的な研究を重ね、ソフトウェアの仕様などを決める。一方のAction Groupはその成果を実用化する役割を受け持つ。

 現在は、各種RFIDタグ、リーダの評価検証をはじめ、RFIDからの情報をインターネットでやりとりする場合に必要なONSと呼ばれるアドレス変換サーバ(Object Naming Service)や、モノの情報を蓄積するデータベースの記述言語、PML(Physical Markup Language)に関するシステム設計・実装が主な作業だという。今年末まで基礎研究を続けながら、これらの実証実験を繰り返し、来年1~3月期には実験結果のフィードバックを行なう予定だ。

 最後にスピーカーとなったサン・マイクロシステムズの湯本氏は、Auto-ID Centerの成り立ち、RF-IDタグの物流業への応用などを紹介。内容は、おおむね佐藤・中村両氏の報告に沿ったものだったが、「普及にはチップ単価が安くなることが必須。5セント以下になれば普及する」との見方を示したほか、インターネットの進化について、「パソコンから車、電話、テレビさらにRFIDを積んだモノ全体へと拡大していく。RFID=ネットワークコンピュータになるのではないか」と述べた。

(2003/7/3)

[Reported by 伊藤大地]

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