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【N+I 2003レポート】

~N+I コンファレンス

JPCERT/CCはセキュリティチーム間のハブを目指す

■URL
https://ssl.key3media.co.jp/sfm2003ni/forum_preview_018.html

 Networld + Interop 2003 Tokyoではセキュリティ関連のコンファレンスセッションが数多く開催されているが、その1つとして「社会インフラとしてのインターネットの安全を考える」というセッションが2日に開催された。JPCERT/CCの代表理事を務める山口英氏(奈良先端科学技術大学院大学教授)が中心となり、セキュリティインシデントに対応する組織作りの現状と今後の展望についてパネルディスカッションが行なわれた。

 本セッションで主な話題となったのが、JPCERT/CCという組織の役割だ。この点についてまず山口氏は「そもそもJPCERT/CCは、セキュリティインシデントに対するコーディネート業務を行なうためのCSIRT(Computer Security Incident Response Team)として発足したわけだが、最近ではセキュリティの問題についてはISPのカスタマーサポートが対応するケースが多い」と述べた上で、「IIJや政府のように独自のCSIRTを持つケースも増えているし、JPCERT/CCが何でも引き受けるのは現実問題として無理なので、JPCERT/CCとしては国内においてISPや外部のCSIRTのスイッチングボードになることを目指したい」との意向を示した。

 一方で、JPCERT/CCは昨年発足したAPCERT(Asia Pacific Computer Emergency Response Team)の事務局を引き受けるなど、アジア諸国との連係を強める動きを示しているが、この点について山口氏は「ブロードバンド環境の整備状況やネットの使われ方を見ると、今最も世界でかっとんでいるのは東アジアであり、特に韓国・台湾が日本よりも先行している状況だけに、日本の将来を示すForecastとしてアジアでの情報交換が必要だ」と述べ、単に地理的・政治的要因だけで連係を考えているわけではないとの姿勢も明らかにした。

 ここで山口氏は、今年3月にJPCERT/CCが中間法人格を取得したことに触れ、これまで任意団体として活動してきた過程で、任意団体ゆえに意思決定の手続きにどうしても時間がかかる、上位団体との関係から独立性の確保が難しかったなどの理由で、情報交換が難しい局面があったとの問題を示した。これに対し今回中間法人という形で独立することにより、意思決定を自前の理事会で素早く行なえる体制が整ったほか、営利事業が行えることになったことにより、政府等の補助金に頼らず独自の資金源を確保できるようになったなどのメリットが享受出来るため、今後これらのメリットを生かした事業拡大を行っていきたい、との意向を述べた。

 その上で山口氏は、JPCERTの体制(現在12名)を「今後1~2カ月のうちに25~30名体制にまで拡充したい」と述べた他、従来あまり情報交換のチャネルがなかった法律家や保険関係者との間にもチャネルを設け、従来から行ってきた海外のCSIRTに対する窓口業務などと合わせて「国内外に対するセキュリティ情報のハブとなる組織を目指したい」と述べた。

 その後のパネルディスカッションでは、主に政府におけるセキュリティ体制の問題や、JPCERT/CCと政府との関わりについていろいろと意見が交わされた。

 現在政府は独自のCSIRTとして、内閣官房情報セキュリティ対策推進室の中にNIRT(National Incident Response Team)というチームを持っているが、山口氏はこれに対し「NIRTは本来政府内の全省庁のシステムのインシデントを管理することになっているが、現在のNIRTの体制は弱体でとても全部のシステムを管理しきれていない」「現在電子政府化の進展により、既に7000近くの申請がネットワーク上で可能になっているが、これらのシステムの運用はほとんど外部委託されており、一度問題が起こったときにNIRTや各省庁がどれだけ介入できるかというと疑問だ」と述べ、NIRT自体の体制や外部委託されているシステムへの監査などをもっと強化すべきだとの意見を示した。

 またJPCERT/CCと政府との関わりという点では、特にサイバー犯罪における警察との関係に触れ、「警察はICPOを中心に独自の国際協力体制を持っており、その点ではJPCERT等のCSIRTが行なっている国際協力とは別個になっているが、国際的にも警察・CSIRTの双方で『お互いに仲良くしよう』というコンセンサスが取れている」ということで、日本でも警察とは定期的に情報交換の場を持っていることが説明された。

 これに関して山口氏は、「一部ではJPCERT/CCが情報提供などで犯罪捜査に協力しているのではないかとの懸念が示されているが、警察は自分自身で捜査した一次情報でしか動かず、仮にJPCERT/CCが情報を提供したところでそれは伝聞情報(二次情報)になってしまうので、仮に情報を提供したところで警察も受け取らないし、だから我々も個別の情報については警察には提供していない」と述べた。そのため警察との情報交換はあくまでセキュリティ情報収集の体制作りなどの「メタ情報」レベルにとどめているという。

(2003/7/3)

[Reported by 松林庵洋風]

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