【ワイヤレスジャパン2003 レポート】
通信業界の「電池」を目指す日本通信■URL 「ワイヤレスジャパン 2003」で16日にコンファレンス「ユビキタス時代の到来」が開催された。このなかで、日本通信代表取締役社長の三田聖二氏が「MVNOが切り拓く新モバイルソリューション」と題した講演を行なった。 ●ソリューションを売るMVNO
三田氏はまず、MVNOの生まれた背景について語り、「今後、世の中はさらにデジタル化が進むだろうが、技術的に難しければ難しいほど、全体的なソリューションとして、わかりやすく提供しなければならない。MVNOの存在意義はそこにある」と述べた。 携帯電話業界の現状については、「ネットワーク(事業者)とコンテンツ(コンテンツプロバイダー)、ハードウェア(メーカー)の各プレーヤーにはギャップがあるのが事実。プレーヤーが役割をそれぞれ分担していても、顧客はひとつのソリューションとして捉えている」とした。さらに、IBMがハードウェア事業からソリューション事業へと転換したことによって業績を伸ばした実例を挙げながら、「サービスの方が儲かる時代。複雑化した通信のインテグレーションをやる業務を担うMVNOは有望だ」と語った。 ●カスタマイズ性が付加価値にこの後、詳しい業務内容に話題は移った。日本通信では、DDIポケットのデータセンターへ接続する8Mbps回線を、月額3,000万円でレンタルしているという。回線自体は当然、DDIポケットのものと同じだ。では、どのように付加価値を付け、ユーザーを獲得するのか。その答えは「第一種事業者にはできないこと、やりたくないこと」だと三田氏は語る。つまり、すべての顧客に同じようなサービスを提供するユニバーサル・サービスではなく、顧客ごとのニーズに合わせたカスタマイズ性を提供しているのが大きな特徴だというのだ。このため、料金はすべて見積もりベースで、顧客ごとにすべて異なるという。
●10倍の通信料を取らなければ3Gは成立しない 次いで、話題は携帯電話業界全体のビジネスモデルへと転じた。「現在の通話料金はせいぜい月額5,000円。これにデータ通信で2,000円、3,000円上積みしている現状だ。2Gのネットワークでは、コスト償却しているからいいが、次世代のネットワークの設備投資は兆単位、およそ2兆円になる」と述べた上で、「その中には出始めの頃、原価で20万円以上したというFOMA端末(のインセンティブ負担分)が入っていないというから驚きだ。ネットワークの投資だけで2兆円と言われているが、FOMA端末分を入れたら3、4兆円は行くかもしれない。音声通話ではもうこれ以上収入が見込めない以上、データ通信で今までの10倍くらい料金を取らなければ、ビジネスモデルが成立しないのではないか」とも語り、第3世代携帯電話のビジネスモデルに懐疑を示した。 ●通信業界の「電池」を目指すその後、話題は再びbモバイルへと戻った。「数万円という高額を前払いするもので、プリペイド方式は市場に受け入れられるかという意味でも1つの試みだった。電気も通信も基本的には加入サービスで、月額料金を払うビジネスモデルだ。しかし、携帯用の電気、すなわち乾電池はプリペイドではないか。電池は、あらゆる電子機器をワイヤレスにしてきた。それと同じように日本通信も、通信業界における“電池”のような存在になっていきたいと思う」と語った。加えて、「人間はそもそもワイヤレスな存在。最後の線(へその緒)は生まれたときに切られている。技術が進めば、有線できることは無線でもできるはずだ。今後もプリペイド・ワイヤレスに注力していきたい」などと語り、講演を締めくくった。 なお、講演後の質疑応答で、今後、さらに高速な3G回線のMVNOへと発展する可能性について質問を受けると、「招かれないパーティに行くのは性格的に合わない」と比喩を交えながら、「我々は声をかけてもらう側。キャリアさんは大物ですから。我々の付加価値を認めてもらい、誘いを待つほかない。個人的にはCDMA 1x EV-DOはデータ通信専用ということもあり、大きな期待を寄せている」と語る一幕もあった。
(2003/7/16) [Reported by 伊藤大地] |
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