【ワイヤレスジャパン2003 レポート】
1年以内にIPv6に対応した情報家電の商品化も■URL ワイヤレス関連イベント「WIRELESS JAPAN 2003」3日目の18日、「家庭向け次世代IPv6商品の開発動向」と題する講演が行なわれ、IPv6普及・高度化推進協議会の貞田洋明氏が講師を務めた。 ●IPv4はもう限界
まず貞田氏は、家庭におけるインターネット利用がすでに「ブロードバンド的思考」になってきていると語る。従来のメールとWeb閲覧ができればいいというものから、常時接続でダウンロードなどに高いレスポンスを欲し、メールにデジタルカメラで撮影した画像データを添付するなど、利用の仕方がブロードバンドを前提としたものになっているというのだ。また、家庭の外からエアコンやビデオなどの家電をコントロールしたいというニーズも高まってきているという。 このような利用形態やニーズの高まりに対して、IPv4では限界にきているという。特に問題となっているのはアドレス不足の問題で、例えば世界の人間に1つのアドレスを割り振ろうと思っても、世界人口の60億に対してIPv4では43億アドレスしか存在しないのだ。 ●IPv6利用で情報家電における問題の多くが解決
アドレス不足に対する1つの解決策としてNATの利用が挙げられる。ところが、NATの問題として、「外部から内部へのアクセスが難しい」という“高まっているユーザーニーズに反する問題”が残っている。また、ISPによってはメールとWeb閲覧には対応できるものの、それ以外のサービスを必ずしも提供していないという問題もあるという。 IPv4環境でも工夫をこらすことでアドレス不足を解消しているものもある。例えば、シャープのAV製品「ガリレオ」は、ダイナミックDNSを利用することで家庭の外部からの制御を実現しているし、マイクロソフトのXboxのP2P機能も「NATの裏をつくようにして(貞田氏)」NAT超えを実現している。 そこでIPv6が登場するのだが、家庭向けIPv6商品の実用化を困難にしているものがある。それは「果たして何台売れるのか」という問題だ。家庭向けIPv6商品にどれほどのニーズが高まっているのか、既存の家電への組み込みで発生するコストをどれだけ抑えられるのか、そもそも利用者のスキルを考えた場合に何人が利用できるのか、などを考慮しなくてはならない。 しかしながら貞田氏は、「IPv6を利用することで現在の情報家電における問題点の多くが解消する」とも言う。IPv6ではアドレス長が128bitになり、使い尽くせないほどのアドレスを配布することができる。また、プラグ&プレイ機能、IPSec、QoS、マルチキャストやMobileIPなどの諸機能が規定されている。この結果、DHCPのような複雑な手続きを踏まなくても家電に簡単にアドレスを割り当てることが可能になり、非PC端末のインターネットへの接続が容易になるほか、P2Pアプリケーションの開発においても端末間の暗号化が可能になる。貞田氏は「IPv4はクライアントからサーバーへの片方向の通信だったが、IPv6はユビキタス社会の基礎基盤となる双方向の通信となる」と語る。また「IPv6化には2つの意味があり、1つはIPv4からの変更。もう1つはIPv4では考えられなかった全く新しい利用方法の創出が起きる」と予測する。 ●1年以内にIPv6対応家電の商品化も 日本はIPv6の分野では世界を先導しているというが、2003年になってからIPv6のメリットを生かした商品開発に手を付け始めた段階だという。現在の商品開発状況は、キーボードレスや、低機能マイコンしか搭載していない非PC端末をどのように接続するのか、家庭の外部から内部へアクセスする際に必要とされている機能はどんなものなのか、SIPやVoIP、IPSecを利用したP2Pアプリケーションにはどんなものがあるのかなどを考え始めているという。 例えば「Net.Liferium 2003」では、IPv6環境を構築したさまざまな非PC端末をネットワーク上にのせて展示を行なっていた。ソニーは家庭用ゲーム機「PlayStation2」を使ったテレビ会議システムを展示し、三洋からは無線LANでホームサーバーと接続されたデジタルカメラが提供された。また、横川電機はCDのバーコードを読み取ることで該当するCDに含まれる音楽の視聴データをダウンロードするシステムを構築した。この視聴システムを使えば、どこでどんな楽曲が視聴されているのかといったマーケティングデータを取得することもできる。 ネットワークサービスの分野では、IPv6を使ったネットワークが商用化されている。実験と違い、商用化されることで信頼性が高まり、普及に弾みがつくものと考えられている。貞田氏によれば、「今後の課題は、ファイアウォールで何をすべきかや、MobileIPをどのように使っていくか」だという。 最後に貞田氏は、世界のIPv6の状況を紹介した。韓国では政府が公式にIPv6化をアナウンスし、2011年までにネイティブIPv6環境に移行することが決められた。中国では、2005年までに200億円を投入してIPv6化を推進する。また、米国では国防省がIPv4製品の購入を止め、IPv6化に多額の予算を計上したという。貞田氏によれば、「米国の動きは、情報家電の価格が一気に下がる可能性をはらんでいる」と語った。最後に同氏は、「日本でもここ1年以内にIPv6に対応した情報家電が商品化されるだろう」と予測した。 (2003/7/18) [Reported by okada-d@impress.co.jp] |
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