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【使いこなし編】第91回

バッファローのWi-Fi 6ルーターで「Wi-Fi EasyMesh」を使う

 連載の使いこなし編では、自宅Wi-Fiの電波状況を良くする方法を解説している。今回からは「Wi-Fi EasyMesh」を使って、一軒家や複数部屋があるマンションなどで、快適なWi-Fi環境を構築してみたい。

今回から「Wi-Fi EasyMesh」を使って、自宅Wi-Fiのエリアを広く快適にしてみよう

バッファローのWi-Fi 6ルーターが「Wi-Fi EasyMesh」に順次対応

 Wi-Fiルーターのメッシュ機能とは、複数台を用意して相互に接続することで、Wi-Fiの電波エリアを広げられる機能だ。

 テレワークでのビデオ会議では、どうしても電波の届きにくい隅の部屋を使ったりするケースも多くなりがちだ。

 ワンルームであればメッシュWi-Fiは不要だが、家が広ければ、これまでのWi-Fiではどうしても家中すみずみまで安定して電波を届かせるには無理があった。

 その中でも「Wi-Fi EasyMesh」は、Wi-Fiに関する製品の認証などを行う機関である「Wi-Fi Alliance[*1]」が提唱する、メッシュWi-Fiの相互接続性を確保する認証プログラムとなる。

 これまでのメッシュWi-Fiは、主に同一メーカー間のモデルで揃える専用のものだったが、Wi-Fi EasyMeshに準拠していれば、メーカーを問わず相互にメッシュ接続できるようになる。今後はかなり自由度が増すようになるはずだ。

[*1]……このWi-Fi Allianceが認証した無線LAN(IEEE 802.11)機器には、「Wi-Fi CERTIFIED」ロゴを付けることが許され、無線LANで相互に接続できることが認証された機器としての証になる。つまり、本当は機器の種類で言えば(W-LAN)が正しいのだが、なぜか「Wi-Fi」の方が通じやすくなってしまう、本連載タイトルにも「Wi-Fi」が入っているワケ

 このWi-Fi EasyMeshに、バッファローのWi-Fi 6ルーターが対応しつつある。これから発売されるルーターはもちろん、Wi-Fi 6に対応していれば、発売中モデルも順次ファームウェアのアップデートにて対応することになっている。対応状況は、以下のページで随時更新されている。

対応モデルではWi-Fi EasyMeshの設定項目が表示される

バッファローのWi-Fi 6ルーター「WSR-5400AX6S」と「WSR-3200AX4S」をつなげてみる

 今回は、ともにバッファローのWi-Fi 6ルーター「WSR-5400AX6S」と「WSR-3200AX4S」をつなげてみる。

 WSR-5400AX6Sは、5GHz帯が4803Mbps(160MHz 4x4)、2.4GHz帯が573Mbps(40MHz 2x2)のWi-Fi 6通信が可能なプレミアムモデル。WSR-3200AX4Sは、5GHz帯が2401Mbps(80MHz 4x4)、2.4GHz帯はWi-Fi 6に非対応となるスタンダードなモデルだ。

バッファローのWi-Fi 6ルーター「WSR-5400AX6S」(左)と「WSR-3200AX4S」(右)

 ただし、読者が実際にメッシュで運用するときには、この2台の組み合わせで使うことは、チョットもったいないのでオススメではない。予算が許せば複数台のWSR-5400AX6Sを、そうでないならWSR-3200AX4Sを複数台または中継機の「WEX-1800AX4」あたりを組み合わせるのが、ベストなチョイスかもしれない。

 なぜなら、相互に無線通信する速度が同じであれば、その速度がいかんなく発揮できるからだ。スマホなどでWi-Fi 6を使う場合、ほとんどで1201Mbpsまでのリンク速度なので、ハイグレードなWi-Fiルーターではどうしても宝の持ち腐れ感があった。

 しかし、メッシュ環境ではその速度がフルに生かされる。組み合わせの中に低い速度の個所があると、それに引っ張られてしまい、上位モデルの速度が生かされないことになってしまう。本記事では、この2モデルを用いることで「Wi-Fi EasyMeshがきちんとつながるんだ」という課程を見て欲しい。

 メッシュWi-Fiは、インターネット回線を直接接続する「コントローラ」1台と、コントローラの制御下に入る複数台の「サテライト」で構成される。

メッシュ機能を使うと、エリアをより拡張できる

 バッファローのWi-Fi EasyMeshでは、サテライトを4台まで接続できる。メッシュの特徴は、複数あるWi-Fi親機(コントローラまたはサテライト)の電波が届くエリアをWi-Fi子機が移動したとき、最も速く通信できるWi-Fi親機へ同一のSSIDでスムーズに再接続する高速ローミングという仕組みを利用できることだ。これにより、Wi-Fi子機を使いながら移動しても、通信が途切れる感じがないので、広いエリアにいるままのような感覚で使い続けられる。

 また、最新セキュリティである「WPA3」が使えることもポイントだ。ほかのメッシュWi-Fiはもちろん、Wi-Fi EasyMeshでも、WPA2でしかつながらないケースは多いのだが、現時点ではバッファロー同士であればWPA3でつなげることができる([*2])。

[*2]……Wi-Fi EasyMeshのうち、初期のリリース1ではWPA2までの対応となっていたが、バッファローで対応しているリリース2ではWPA3に対応している

機器間で通信するバックホールには、有線LANも割り当てられる

 機器間が通信する必要があるメッシュWi-Fi環境では、コントローラとサテライトの間の通信に、帯域が1つ使われてしまう([*3])。このため、3つの帯域を持つトライバンドのモデルが有利なのだが高価なため、多くの製品はデュアルバンドとなっている。

[*3]……この通信をバックホール(backhaul)回線と呼ぶ。無線接続の場合、機器同士のエリアを重ねてバックホール回線を安定させることが大前提となる

 そこで便利なのが、機器間の接続に有線LANを使う方法だ。もちろん部屋間に有線LANケーブルが敷設されている前提にはなるが、最も安定して利用できる。通信エリアが相互に重なっている必要もなく、部屋の数だけサテライトをつなげられるため、ある意味で理想的な接続方法だ。

有線LANで機器をつなげてメッシュ接続を作ることもできる

 バッファローのWi-Fi EasyMeshであれば、有線LANでのバックホール構築にも対応している。一方、各メーカー独自のメッシュWi-Fiでは、有線LANのバックホールには対応しない場合もあるがので、もし有線LANケーブル接続を考えているなら、導入時によくチェックして欲しい。

 今のところWi-Fi EasyMeshには、バッファローのほかNECやNETGEAR、ベルキン(Linksys)のごく一部のモデルが対応しはじめたところだが、これからのWi-Fiルーターで必須の機能になっていくはず。今後普及していって欲しいところだ。

 次回からは、対応ファームウェアにアップデートして、実際にWi-Fi EasyMeshを構築していこう。

今回の教訓(ポイント)

メッシュWi-Fiの標準規格「Wi-Fi EasyMesh」ならメーカーの垣根を超えて利用可能
バッファローのWi-Fi 6ルーターは全てWi-Fi EasyMeshに対応する

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村上 俊一

1965年生まれ。明治大学文学部卒。カメラマン、アメリカ放浪生活、コンピューター雑誌編集者を経て、1995年からIT系フリーライターとして活動。写真編集、音楽制作、DTP、インターネット&ネットワーク活用、無線LAN、スマホ、デジタルガジェット系など、デジタル関連の書籍や雑誌、ウェブ媒体などに多数執筆。楽曲制作、旅行、建築鑑賞、無線、バイク、オープンカー好き。