スッキリ分かるWi-Fiルーター(ASUS編)
【Wi-Fi 6×メッシュ】ASUS「ZenWiFi XD6」第3回
メッシュWi-Fiでも設定簡単! Wi-Fiルーターのメッシュ利用も
2021年10月1日 10:00
自宅にWi-Fi環境を整えようと思い、すぐさま必要なものを買いそろえ、迷わず設定を済ませられる人は、そう多くはないだろう。
本連載でもメッシュWi-Fiの利便性を説明してきたが、「もし買っても、2台も設定するのは大変だろうし……」と、二の足を踏む人もいるはずだ。
筆者は、長年ネットワーク機器を触ってきたが、昨今の家庭用ネットワーク機器は本当に扱いやすくなった。あれこれ設定をいじらずとも自動でやってくれる部分が多いし、最低限必要な設定も会話(ウィザード)形式で進んだり、スマートフォンアプリで手軽に設定できたりもする。
メッシュWi-Fiの機器が2台以上で使ってこそなので、1台で動かす一般的なWi-Fiルーターに比べて難しそうに思うはず。そこで実際にASUS製メッシュWi-Fiルーター「ZenWiFi XD6」を用いて設定をしてみたい。
【Wi-Fi 6×メッシュ】ASUS「ZenWiFi XD6」 記事一覧
メッシュWi-Fiの導入はアプリで簡単
ZenWiFi XD6の設定に必要なのは、ZenWiFi XD6の本体と1台のスマートフォン。今回は筆者のAndroidスマートフォンを使った。
まず、スマートフォンに「ASUS Router」アプリをインストールする。AndroidならGoogle Playストアで検索すれば、すぐに見つかる。
- ASUS Router(Google Play)
- ASUS Router(App Store)
次に、ZenWiFi XD6の本体2台とACアダプタ、付属のLANケーブルを1本取り出す。LANケーブルの一方をインターネット接続用のモデムへ、もう一方をZenWiFi XD6の本体のどちらか1台のWANポートへ接続する。
つなぎ終えたら、ZenWiFi XD6の本体にそれぞれACアダプタを接続。本体が起動するまでしばらく待つ。ZenWiFi XD6の場合、前面下部にあるLEDランプが青に点灯すれば起動済みだ。
本体が起動したら、スマートフォンで「ASUS Router」アプリを起動し、ガイドに従ってセットアップを進める。今回はZenWiFi XD6なので「ASUS ZenWiFiシリーズルーター」を選択。
するとアプリが自動的に近くにある機器を探しに行く。少し待つとZenWiFi XD6がリストアップされた。
表示されたZenWiFi XD6のリストをタップすると、スマートフォンのBluetoothがオンになっていれば、Bluetoothを使って接続設定のやり取りをしてくれる。
Bluetoothが使えなかったり、画面のようにリストへ表示されない場合は、画面下部にあるカメラを起動してZenWiFi XD6本体裏面にあるQRコードを読み取れば、同じように接続設定ができる。
次に、Wi-Fiネットワーク名(SSID)とパスワードを入力する。ZenWiFi XD6では、2.4GHz帯と5GHz帯のSSIDを共通にできる。明示的にSSIDを分けたい場合は、「2.4GHzと5GHzを個別に設定する」をオンにする。
続いて、先のSSIDの設定とは別に、ZenWiFi XD6の設定画面にログインするための、管理者のユーザー名とパスワードを設定する。
これで設定自体は終了だ。本体のセットアップと最適化が行われ、しばらく待つとセットアップが終わって使用できる状態になる。なお、設定に使ったスマートフォンにも、このSSIDとパスワードのWi-Fi接続情報が設定されており、インターネットに接続できる状態になっている。
こうして文章にすると長いようにも見えるが、実際にはアプリに示される数ステップの手順をなぞっていくだけで終わる。設定項目にはメッシュWi-Fiの設定に関わるものはなく、自動で設定されるため、実質的にはWi-Fiルーター1台分の設定と変わらない。
筆者宅ではインターネット回線に「NURO光」を使用しており、モデムとルーターが一体になったものを使っているため、他社のインターネット環境で接続する場合は異なる設定項目が表示される場合がある。とはいえ設定すべき項目は自動判定されるので、特に迷うことはないはずだ。
この後、ZenWiFi XD6を好きな場所に設置する。1台はモデムとLANケーブルで物理的に接続するので場所が限られるが、もう1台はACアダプタをいったん外して好きな場所に設置できる。ただし、あまり遠くに置くと機器間のWi-Fiが届かなくなるので注意が必要だ。
「ASUS Router」アプリのホーム画面に表示されるネットワークマップから、メッシュノード機(モデムとLANケーブルで直接つながっていない親機)をタップすると、電波強度を確認できる。「最良」と表示される範囲であれば問題ない。
Wi-Fiルーターとしての機能も活用できる
ここまでの手順で、ZenWiFi XD6を用いたメッシュWi-Fiでのインターネット接続は完了しているはずだ。ZenWiFiでは、これに加えてさまざまな機能が利用できる。
例えば、通信の種類によって優先順位を付けられる「QoS」(Adaptive QoSとも呼ばれる)機能があり、ゲームやストリーミングなどの通信をほかの通信より優先させ、混雑時にも速度が遅くなりにくくできる。どの通信を優先するかは、端末や通信内容、アプリなどから、ユーザーが自由に決められる。
あくまで家庭内LANを経由したものだけで、4Gなどのモバイルネットワーク通信は止められないが、SIMを入れていないPCやタブレット端末などで活用できる。
「AiProtection」で利用できるペアレンタルコントロールの機能では、時間やジャンルでさまざまな制限を掛けられる。
まず、時間制限では、指定したデバイスのインターネット通信を、指定した曜日と時間で遮断できる。子どもに渡したスマートフォンなどを、決めた時間以外に通信できないようにするものだ。
あくまで家庭内LANを経由したものだけで、4Gなどのモバイルネットワーク通信は止められないが、SIMを入れていないPCやタブレット端末などで活用できる。
また、年齢に応じた利用制限として、就学前、就学年齢、学生、大人と年齢層ごとに制限するコンテンツがプリセットされている。
コンテンツのジャンルはポルノやギャンブルのほか、メッセンジャーやブログ、ゲーム、メディアストリーミングなど幅広い。ジャンルごとに個別に選択もでき、プリセットを基本にカスタマイズもできる。
コントロールの対象は、特定のデバイスを指定できるだけでなく、メッシュノード機も指定できる。この場合、そのノードに接続している全てのデバイスがコントロール対象となる。
例えば、子ども部屋で接続できるノードに対して時間やジャンルを指定しておけば、違う端末でもアクセスを制限できる仕組みだ。
時間やジャンルといったコントロールは、プロファイルごとにも管理ができる。子ども用の端末が増えたときは、用意してある子ども用プロファイルへ、新しいデバイスを追加することで、同じ条件でコントロールできる。もちろん、複数のプロファイルを作成し、端末ごとにコントロール内容を変えることもできる。
このほか、ゲスト用に隔離されたWi-Fiネットワークの設定も可能だ。「WiFi」設定の「ワイヤレス設定」、「ゲストネットワーク」と進むと、ゲスト用ネットワークのSSIDとパスワードを設定できる。
普段使っているSSIDとパスワードを知らせると、家庭内LANにアクセスされることになるが、こちらは別のネットワークとなるためセキュリティ的に安心できる。
ほかには、コンピューターウイルスやマルウェアの侵入検知、悪質なウェブサイトのブロックなどをしてくれる「AiProtection」という機能も搭載されている。こちらは標準状態でオンになっているので、特に設定は不要だ。
これらの機能は「ASUS Router」アプリで設定できるが、より細かく設定を確認・変更したい場合は、ウェブブラウザーから設定画面を表示させよう。スマートフォンのウェブブラウザーからでも利用できる。例えば、ポートフォワーディング機能などは、こちらだけで設定が行える。
「AiMesh」でWi-FiルーターをメッシュWi-Fiに追加
ASUS製Wi-Fiルーターのほとんどには、メッシュWi-Fiに組み入れる独自機能「AiMesh」が搭載されている。そこでASUS製Wi-Fiルーター「TUF-AX5400」を、実際にZenWiFi XD6のメッシュWi-Fiへ組み入れる設定を試してみよう。
2台のZenWiFi XD6でメッシュWi-Fiを構築している環境で「ASUS Router」アプリを開くと、ホーム画面に「ノードを追加」というボタンが表示される。これをタップすると、「AiMesh」に対応するWi-Fiルーターを自動的に検索できる。
なお、TUF-AX5400は、あらかじめ初期化(購入時の状態に戻す)した上で電源をオンにしておく。
検索で見つかったTUF-AX5400をタップし、次の画面で適用ボタンを押すと、自動でメッシュノードとして登録されて設定が進み、数分待つと設定が完了する。数回のタップだけで、1文字も入力することなく作業が完了してしまった。
あとは「TUF-AX5400」を好きな場所に設置してメッシュWi-Fiの範囲拡張に使える。Wi-FiルーターにLANケーブルを1本も挿さずに使えるというのは筆者には奇妙な感覚だが、実に便利な機能であることは確かだ。
なお、AiMesh機能は、ZenWiFi XD6などのメッシュWi-Fiルーターだけでなく、AiMeshに対応したWi-Fiルーター同士でもメッシュWi-Fiを構築できる。既にASUS製のWi-Fiルーターを使っていて、新たにメッシュWi-Fiを構築したいなら、AiMesh対応のWi-Fiルーターを買い足すことも選択肢となるわけだ。
有線バックホールも使える
最後におまけで覚えておきたい知識を1つ。メッシュWi-Fiは、LANケーブルを使うことなくWi-Fiの範囲を広げられるのがメリットなのだが、メッシュ機器間の通信にもWi-Fiを使用するという性質上、多量の通信が発生するとWi-Fiの通信が混雑しやすいという側面もある。
もし、通信速度の低下や遅延などが気になることがあるなら、有線バックホールを使用するという手がある。メッシュ機器間に有線LANケーブルをつなぎ、機器間通信を有線LAN経由にすることで、Wi-Fiの混雑を減らす仕組みだ。
有線バックホールを使う場合は、基本的にはメッシュ機器間を有線LAN接続するだけでいい。機器間通信を明示的に有線LAN経由にしたい場合は、「ASUS Router」アプリでメッシュノードをタップし、「バックホール接続優先度」の項目を「自動」から「1G WANを最初に」へ変更しよう。
有線バックホールは、メッシュWi-Fiにおける通信の混雑解消に有効な手段ではあるが、お手軽さが失われる方法でもあるので、必ず使うべき機能とは言えない。メッシュWi-Fiを使用していて、通信速度に問題を感じたときに使えるオプションの1つとして、覚えておく程度でいいだろう。
(協力:ASUS JAPAN株式会社)