5分でわかるブロックチェーン講座

「ソニーのMaaS」のブロックチェーン活用が本格化、スターバックスやマクドナルドが中国デジタル人民元プロジェクトに参画

(Image: Shutterstock.com)

暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報にわかりやすく解説を加えてお届けします。

1. ソニーによるMaaS領域でのブロックチェーン活用

次世代移動サービス「MaaS(Mobility as a Service)」領域におけるブロックチェーン活用が加速している。

ハードウェアに限らず金融分野でも大きくシェアを伸ばしているソニーは、ブロックチェーンを活用したMaaS関連の新サービスを開発していると発表した。ソニーが導入した「ブロックチェーン・コモン・データベース(BCDB)」は、移動に関する様々なサービスにおいて共通データベースとして活用される予定だ。

BCDBは、オランダの水産省が開催したブロックチェーン・チェレンジプログラムを通して開発された製品だ。ソニーもこのプログラムに参加していたという。

BCDBでは、ユーザーの移動履歴を匿名化された状態で管理することができる。ユーザーは、改ざんが極めて困難な状態で自身の移動履歴を把握することができ、より効率化された移動手段にアクセスすることができるようになるという。また、ユーザーの匿名化された移動履歴を異なる企業間で共有できる点も大きな特徴だといえる。

ソニーは、MaaSだけでなく教育分野でのブロックチェーン活用にも力を入れている。基盤技術であるブロックチェーンは、多種多様な分野に適用できることから今後も様々な領域での導入が進むだろう。

なお、MaaS領域では、トヨタもブロックチェーン研究部門を設立し取り組みを本格化させている。

参照ソース


    ブロックチェーン技術を活用したMaaS共通データベース基盤を開発
    [Sonyプレスリリース]
    ソニーがブロックチェーン活用のデータベース基盤を開発──トヨタも注力、盛り上がる「MaaS+ブロックチェーン」
    [CoinDesk Japan]
    ソニー・グローバルエデュケーションが描く、ブロックチェーンを活用した教育データネットワークの未来
    [仮想通貨 Watch]

2. スターバックスやマクドナルドが中国国家プロジェクトへ参画

 中国中央銀行が推進するデジタル人民元「DC/EP」に関する動きが目紛しくなってきた。

 中国地元メディアで4月23日、DC/EPの試運転が行われると報じられた。大きく注目された理由として、試運転を実施する際の参画企業にマクドナルドやスターバックス、サブウェイ、テンセントといった著名企業が指定された点があげられる。なお、参画企業は計19あり、中国の雄安新区の店舗が対象となっている。

 習近平氏が自ら声明を出すほどブロックチェーンに注力している中国政府は、DC/EPを使った実証実験を本格化させている。先週も紹介したが、東南部の蘇州市では、公務員の受け取る交通費手当をDC/EPで支給する方針だという。

 なお、中国中央銀行はDC/EPの試運転を進めていると明かしたものの、正式にローンチしたわけではないとの声明を出している。

参照ソース


    【速報】中国のマクドナルドやスターバックスなどで「デジタル人民元」試用か=地元メディア
    [CoinPost]
    Starbucks, McDonald's could trial China's central bank digital currency - report
    [TheBlock]

3. Twitterで暗号資産の送金が可能に

 昨今のブロックチェーンは、分散型金融(Decentralized Finance:DeFi)と呼ばれる領域を中心に盛り上がりをみせている。

 DeFiとは、文字通りブロックチェーンを使った金融事業のことだ。既存の金融システムから特定の管理者を排除することにより、手数料を大幅に削減したり金融システムにアクセスできない国や地域へサービスを提供したりする。ブロックチェーンは金融領域から誕生した仕組みであることを鑑みても、ごく自然な成り行きだといえるだろう。

 そんなDeFiにおいて、2017年に設立されたレンディングサービスのDharma(ダーマ)が、Twitter上で暗号資産を送金できる「ソーシャルペイメント」の提供を開始した。これにより、銀行などの金融システムを介さずとも個人間送金が可能になる。

 今回の新サービスでは、Twitterのアカウントネームを使って暗号資産を送金することができる。価格変動の少ないステーブルコインDaiを使い、送り先をTwitter上で選択、金額を指定して送金する手順だ。なお、受け取ったDaiは暗号資産取引所で法定通貨に換金することもできる。

 Daiは、米ドルの価格に連動するよう設計されたステーブルコインである。ステーブルコインの代表例としては、Facebook主導のLibraなどがあげられる。

 Twitterで暗号資産を送金できるサービスは以前より複数存在していた。SNS上での送金ができることにより、銀行送金と比較して手数料を劇的に削減、ないし無料で送金できる。そのため、出稼ぎの多い国での国際送金や寄付、少額決済(マイクロペイメント)といった場面での活用が期待できるだろう。また、インターネットさえあれば送金が可能なため、銀行口座を持たない個人間での送金も可能になる。

 今回のDharmaの新サービスのように、DeFi分野では急速にブロックチェーン活用が進んでいる。少し踏み込んでブロックチェーンを理解する場合、DeFiに関する情報は確実に拾っておきたいところだ。

参照ソース


    ツイッターでドル送金 DeFi活用で「ソーシャルペイメント」実現
    [CoinPost]
    Introducing Social Payments – a Twitter-native financial ecosystem.
    [DharmaのTwitter投稿]
    Dharma brings DAI stablecoin payments to Twitter
    [Decrypt]

4. ICO復活の鍵、リバーシブルICO

アメリカ、中国、日本に次ぐGDP世界第4位のドイツは、金融規制当局を通して“改良版”ICOである「リバーシブルICO(rICO)」を認可した。

暗号資産バブルを引き起こすきっかけとなったICO(Initial Coin Offering)は、法整備が進まず詐欺が横行したことで現在はほとんど目にしなくなった。しかしながら、ICO自体は新たな資金調達手法として非常に重要な仕組みであることから、これまでに様々な改良が加えられてきている。rICOもそのうちの一つだ。

rICOは、ICOで調達した資金をフェーズごとに分割してプロジェクト側が受け取る仕組みだ。そうすることで、ICO直後に発生する資金の持ち逃げや、開発計画からの逸脱を防ぐことができると考えられている。

投資家がICOで支払った資金はすぐにはプロジェクト側に渡らず、スマートコントラクトによってロック(凍結)される。投資家は、プロジェクト側が開発計画の達成に尽力していないと感じた場合、投資金の一部を引き出すことができるのだ。この仕組みにより、詐欺行為を抑止できるだけなく、プロジェクトの進捗を促することにも繋がると期待されている。

ドイツの金融規制当局は、rICOで使われるスマートコントラクトに対して、法的効果があるとの見解を示した。スマートコントラクトは、特定の条件下でのみ自動執行される契約プログラムであるため、そこに恣意性を持たせることはできないためだ。

ドイツはこれまでにも、他国に先駆けてSTO(Security Token Offering)を承認するなど、暗号資産を活用した資金調達の仕組みをリードしてきている。経済大国であるドイツの取り組みは、欧州だけでなく世界各国へ大きな影響を与えるだろう。

参照ソース


    独規制当局、仮想通貨の新資金調達法『リバーシブルICO(rICO)』を認可
    [CoinPost]
    The 'reversible ICO' is born in Germany
    [Decrypt]

編集部より: 当連載は、第9回(3月末掲載)まで仮想通貨 Watchにて掲載していたものです。第9回以前はこちらからご覧ください

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。暗号資産・ブロックチェーン業界で活躍するライターの育成サービス「PoLライターコース」を運営中。世界中の著名プロジェクトとパートナーシップを締結し、海外動向のリサーチ事業も展開している。Twitter:@tomohiro_tagami / @PoL_techtec