5分でわかるブロックチェーン講座

ビットコイン半減期が4年ぶりに到来、価格上昇の要因と今後の展望

マネーロンダリング対策「トラベルルール」の整備が進む。

(Image: Shutterstock.com)

暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報にわかりやすく解説を加えてお届けします。

1.ビットコインに半減期が到来

 約4年ぶりとなるビットコインの半減期が12日に到来した、

 4月8日に初の半減期を迎えたビットコインキャッシュや今回のビットコインのように、多くの暗号資産には半減期が存在する。

 半減期とは、マイニングによって新規に発行される暗号資産の量を、文字通り半減させていく仕組みだ。半減期を設定することで、発行量の引き締めによるインフレ防止と通貨の希少性向上を促すことができる。

 通貨の価値は市場の需要と供給によって決まるが、半減期を境にそれまで存在していた供給に変化が加えられる一方、需要に変化は起こらない。従って、理論上は半減期後に通貨の価値が高まるのだ。

 実際、これまでに2度迎えた半減期後には、ビットコインの価値が高まっている。

・1度目(2012/11/28):約1300円、新規発行量:50BTC → 25BTC
・2度目(2016/07/09):約7万円、新規発行量:25BTC→12.5BTC
・3度目(2020/05/12):今回、新規発行量:12.5→6.25BTC

 半減期は4年に1度訪れるとの認識が定着しているが、決して4年と定められているわけではない。厳密には、21万ブロックごとに訪れるよう設計されており、1ブロックあたり約10分で形成されることから、計算上およそ4年に1度訪れるわけである。

 3度目となる今回は、多くのマイニング拠点が集まる中国が雨季に入るタイミングと重なる。そのため、水力発電が盛んになり電力コストが安価になるという。その結果、マイニングにおける損益分岐点が下がる傾向にあり、半減期によるマイナーの撤退が少なく、ハッシュレート(マイニング速度)も下がらないだろうと予想できるだろう。

 実際、マイニング難易度を示すディフィカルティは、過去最高に近い16.10Tを記録している。これは、電力コストが低下する一方、半減期に伴う需要の増加からビットコインの価格が上がり、マイナーが増えたことでハッシュレートが高まった証拠だといえるだろう。ハッシュレートの増加(マイナーの増加)は、ビットコインネットワークの分散化を意味するため、良い材料として扱われるのだ。

参照ソース


    ビットコインマイナー、半減期前に収益狙う──中国の雨季も好材料か
    [CoinDesk Japan]
    Bitcoin hash rate and difficulty nears all time highs
    [Messari]

2. ビットコインが再び100万円を突破

 ビットコインの価格が5月7日に100万円を超え、8日には1万ドルに達した。これにより、時価総額も1800億ドルに届く勢いをみせている。

 価格上昇の要因としては、5月12日に予定している半減期への期待が考えられる。また、新型コロナウイルスの影響により停滞していた米国の経済活動が動き始め、株式市場と合わせて復調傾向にあることも追い風になってそうだ。

 また、米国の大手暗号資産取引所Coinbaseによると、新型コロナウイルスによる1200ドルの給付金が支給された直後、1200ドル単位での入金が激増したという。これも需要増による価格上昇に影響しているだろう。

 一方で、ビットコインに対する売り圧力の懸念も出ている。ブロックチェーンのデータ分析企業Glassnodeによると、ビットコイン保有者のうち、85.09%(2579万アドレス)が含み益状態にあることが明らかとなった。一方で、10.82%(328万)が含み損状態であり、4.09%(124万アドレス)が損益がない状態になっているという。

 つまり、多くのビットコイン保有者が含み益状態にあるため、半減期後の売り抜けが多く発生する可能性が考えられるのだ。

参照ソース


    ビットコイン、17年バブルから続く「重要トレンドライン」へ 100万円突破で
    [CoinPost]
    ビットコイン保有アドレス、85%が含み益 アクティブアドレス数は仮想通貨バブル期の水準へ
    [CoinPost]
    Bitcoin nears $10,000 as halving fever intensifies
    [Decrypt]

3. トラベルルールへの対応が加速

 半減期に伴い暗号資産市場が盛り上がりをみせている中、金融活動作業部会(FATF:Financial Action Task Force)によって発表された「トラベルルール」への取り組みも本格化している。

 FATF(ファトフ)は、暗号資産に限らずあらゆる金融資産におけるマネーロンダリングを取り締まる組織だ。世界各国に対して、金融資産に対する法整備を勧告する役割を持っている。日本で2度に渡り施行されてきた改正資金決済法および改正金融商品取引法についても、FATFによる勧告が背景となり制定されている。

 そんなFATFが、2019年6月に発表したのがトラベルルールである。トラベルルールでは、各国の暗号資産関連事業者(VASP:Virtual Asset Service Provider)間における暗号資産の送受金に対して、送り主と受取人の個人情報を相互に記録することが規定されている。トラベルルール自体は暗号資産に限った制度ではなく、1996年よりあらゆる金融資産で同様に規定されてきたため、暗号資産もその対象に含まれた形だ。

 そんなトラベルルールに今回、新たな通信規格が開発された。新規格「IVMS101」では、暗号資産の取引と合わせて、送り主と受取人のデータを送ることができるという。

 トラベルルールは対応に多くのコストを要するため、暗号資産ビジネスからベンチャー企業が排除される可能性が懸念されてきた。今回新たな規格が開発されたことにより、トラベルルールへの対応コストが大きく削減できるだろう。

 なおトラベルルールの施行により、暗号資産の最大の特徴である「金融プライバシー」が失われる可能性も示唆されている。例えば、匿名通貨と呼ばれる暗号資産には取引の当事者を秘匿化する仕組みが備わっている。

 ビットコインやイーサリアムといった主要な暗号資産においても、プライバシー保護の傾向が年々高まっており、この特性に対してどのようにアプローチしていくかは今後の課題であるといえるだろう。

参照ソース


    仮想通貨の資金洗浄対策、FATFトラベルルールに対応する通信規格がリリース
    [CoinPost]

4. 相次ぐ海外取引所の撤退

 海外の大手暗号資産取引所Deribit(デリビット)が、日本の居住者に対する利用制限の実施を発表した。これは、BitMEXに次ぐ日本市場からの撤退となっている。

 Deribitは、ビットコインのオプション取引で人気を集めていた取引所だ。BitMEXと同様、5月1日に施行された改正資金決済法および改正金融商品取引法の影響により、今回の市場撤退を決定している。

 2017年4月より、現物の暗号資産取引を提供するには金融庁の認可が必要となっていた。そして今回の金融商品取引法の改正により、オプション取引を含むデリバディブ取引を行う際にも、認可が必要になったのである。

 こうした状況を考えると、BitMEXやDeribitに続き、今後も海外取引所の日本市場撤退のニュースが報じられるだろう。一方、国内では既にDMMやGMOが金融庁の認可を得ている。

参照ソース


    仮想通貨取引所Deribit「日本居住者向けサービス」を停止
    [BITTIMES]
    Deribit moved to block users in Japan after the country tightened its crypto rules. Other derivatives exchanges are weighing their options
    [TheBlock]

編集部より: 当連載は、第9回(3月末掲載)まで仮想通貨 Watchにて掲載していたものです。第9回以前はこちらからご覧ください

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。暗号資産・ブロックチェーン業界で活躍するライターの育成サービス「PoLライターコース」を運営中。世界中の著名プロジェクトとパートナーシップを締結し、海外動向のリサーチ事業も展開している。Twitter:@tomohiro_tagami / @PoL_techtec