5分でわかるブロックチェーン講座

Coinbaseが次の注力領域を発表、DeFiやDAOなどの分散型市場へ舵を切る

各国DeFi団体が合同でFATFへ提言

 暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報に解説と合わせて、なぜ重要なのか筆者の考察をお届けします。

Coinbaseが新戦略を発表

 ナスダック上場企業の暗号資産取引所Coinbaseが、「Crypto2.0企業」と称した新たな戦略を発表した。DeFiやDAOを中心に分散型システムへの注力を表明している。

 「Embracing decentralization at Coinbase(Coinbaseにおける分散化への取り組み)」と題したブログでは、現時点でCoinbaseは暗号資産と法定通貨の橋渡しを行なっているものの、今後はより踏み込んだ役割をこなしていく必要があると主張。暗号資産経済圏における存在感を強めていきたい意向を示した。

 Coinbaseは、ビットコインに対してCoinbaseが行なってきたことを、DeFiやNFT、スマートコントラクト、DAOといった次世代のムーブメントに対しても行なっていく構えだ。そのために、主に次の3点を強化していくと説明している。

  • Coinbaseに上場させる暗号資産の審査を迅速化
  • よりグローバルに事業を展開
  • DAppsのアプリストアを構築

 Coinbaseのナスダックへの上場は、業界外からも大きく話題となった。今では市場全体を牽引する存在としてその一挙手一投足に注目が集まっている。後半パートでは、Coinbaseの新戦略についてさらに深く考察していきたい。

参照ソース


    Embracing decentralization at Coinbase
    [Coinbase]

各国DeFi団体が合同でFATFへ提言

 各国のDeFi団体が合同でFATFに対するDeFi規制の提言を行なった。特に業界のプレイヤーと連携することの重要性について強調している。

 日に日に存在感を増しているDeFiだが、未だ規制が未整備なこともあり、各国の規制当局に加えてAML/CFTを取り締まるFATFからの注目が集まるようになってきた。その中で、不適切な規制によりイノベーションを阻害しないよう各国の業界団体が連携を図っている。

 各国のDeFi団体による連合「国際分散型金融連盟(Global DeFi Coalition、GDC)」が、FATFに対して主に次の点について提言を行なった。

  • DeFiのビジネスモデルを考慮した上で規制を整備する
  • 規制により本来不要なアナログ作業が出ないようにする
  • パブリックブロックチェーンによる取引のリスクは低減していることを理解する
  • ガイドラインはDeFi業界と連携して作成する

 GDCは、シンガポールやスイス、アメリカ、イギリスなどのDeFi団体によって設立された団体であり、FATFなどの国際組織に対してアプローチする際に動いている。現場を理解した上での提言となっており、内容には具体性が伴っているように感じる。

参照ソース


    Crypto lobbyists put DeFi proposals to FATF in open letter
    [The Block]

今週の「なぜ」Coinbaseの新戦略はなぜ重要か

 今週はCoinbaseの新戦略とDeFi連合によるFATFへの提言に関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。

【まとめ】

Coinbaseの戦略は業界全体の動きとリンクする
暗号資産経済圏にアクセスするためのスーパーアプリ
暗号資産に閉じた世界の経済圏は、既にそれだけで十分な規模に拡大している

 それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。

業界の顔になったCoinbase

 Coinbaseは、米国だけでなく世界的にも暗号資産関連の企業として初めて金融業界に認められた存在だ。そのため、Coinbaseの動きは業界全体の動きとして見られることも珍しくない。つまり、Coinbaseの新戦略を理解することは、少し先の業界の未来を占う上で重要なヒントとなるのだ。

 今回の発表では、「上場審査の迅速化」「グローバル化」「DAppsストア」の3つを軸にあげ、その先に分散型システムへの注力を示唆している。

 Coinbaseは、暗号資産市場ではトップのポジションを勝ち取ることができたが、ブロックチェーンによる分散型システムの市場は全く別物であると主張している。

Coinbaseの具体的なアクション

 Coinbaseは、先述の3点を実現するために次の具体的なアクションを行なっていくという。

  • 暗号資産の新規上場時の審査項目を70から12に減らした上で、試験的な取り扱いのための機能を用意する
  • 引き続き各国の規制当局との会話を行う
  • Coinbase Walletを通して、より多くのDAppsへアクセスできるようにする

 1と2は既存事業を拡大するためのアクションとなるが、3については明確に分散型市場への注力を目的としたものだ。

 DeFiなどの分散型市場にアクセスするには、ウォレットが必ず必要になる。現状はMetaMaskがほとんど一強状態にあるため、これをCoinbase Walletがどこまで覆せるか注目だ。

 分散型市場におけるウォレットは、スーパーアプリになる可能性を秘めており、昨今は多くの企業がウォレットアプリを開発しようと資金を投入している。

Coinbaseの新戦略がDeFiやDAOのさらなる成長を示唆している

 今週は、先週に続きCoinbaseとトップの座を争うBinanceへ各国の規制当局から多数の警告が出されている。規制をしっかりと遵守しているCoinbaseと、ほとんど全くと言っていいほど規制を気にしていないBinanceとで、その将来性に大きく差がつき始めている。

 Coinbaseは、米国以外に日本やドイツでも正式にライセンスの取得を完了しており、今後さらにグローバル展開を加速させることが予想される。それと同時に、Coinbase Walletのユーザーを増やしていくことで、DeFi市場でのシェアも獲得していく戦略だろう。

 最近のウォレットは、単に暗号資産を取引できるだけでなく、貸し借りが可能なレンディングサービスやDeFiに直接接続が可能な機能、チュートリアルなどの学習教材も用意されている。

 一昔前は、暗号資産は法定通貨経済圏における支払い手段になるであろうと期待されていたが、今では暗号資産経済圏だけで巨大な市場が形成されている。法定通貨との橋渡しに注力するのではなく、暗号資産に閉じた世界でのポジションを狙っているCoinbaseの新戦略は、DeFiやDAOといった分散型システムの今後の台頭を予感させる。

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。“学習するほどトークンがもらえる”オンライン学習サービス「PoL(ポル)」や企業のブロックチェーン導入をサポートする「PoL Enterprise」を提供している。海外カンファレンスでの登壇や行政でのオブザーバー活動も行う。Twitter:@tomohiro_tagami