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Visaが人気NFTコレクション「CryptoPunks」を購入、将来的なNFT市場への参入も示唆

暗号資産とDeFiの利用が進んだ国ランキング

 暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報に解説と合わせて、なぜ重要なのか筆者の考察をお届けします。

Visaが人気NFT「CryptoPunks」を購入

 決済大手Visaが、人気NFTコレクション「CryptoPunks」を購入し話題となった。まだまだ黎明期なNFT市場ではあるものの、最古のNFT作品といわれるCryptoPunksの一つを49.5ETH(15万ドル相当)で購入している。

 CryptoPunksは、限定1万個の24ピクセル四方のアート作品だ。1万個すべてが異なるデザインとなっており、それぞれNFTとして発行されていることから一意性が担保されている。

 Visaは発表の中で、NFTを「ソーシャルメディアやコマース、エンタメの未来における重要な要素」と評価した。また、CryptoPunksを購入した経緯については、「NFT市場で何が起こっているのかを理解するには、実際に体験する必要があった」と説明している。

 今回NFTの購入に際しては、カストディ企業Anchorageへ購入業務を委託したという。また、購入したNFTはそのままAnchorageが保有している。これは、NFTを購入するのにイーサリアム(ETH)が必要なことや、上場企業として暗号資産を保有するのに煩雑な手続きが必要であることが影響しているのだろう。

参照ソース


    NFTs mark a new chapter for digital commerce
    Visa

暗号資産とDeFiの利用が進んだ国ランキング

 ブロックチェーン分析サービスを手がけるChainalysisが、1年間で暗号資産の利用が進んだ国ランキングを公開した。併せて、DeFiの利用が進んだ国ランキングも新たに公開している。

 昨年に続き公開されたChainalysis Global Crypto Adoption Indexによると、1年間の暗号資産の普及率は、全世界で880%も増加したという。成長を牽引したのは、ベトナムやインド、パキスタンといった新興国となっている。

 2020年版と2021年版のランキングはそれぞれ以下の通りだ。

2020年版


    ウクライナ
    ロシア
    ベネズエラ
    中国
    ケニア
    米国

2021年版


    ベトナム
    インド
    パキスタン
    ウクライナ
    ケニア

 2021年版では、8位に米国が、13位に中国がランクインしている。残念ながら日本は2年続けて圏外となった。一方で、1年間でDeFiの利用が進んだ国ランキングでは、1位がアメリカ、2位がベトナム、3位がタイ、4位が中国、5位がイギリスという結果となっている。

 Chainalysisによると、暗号資産の普及が進んだ国とDeFiの進んだ国とで経済規模がほとんど真逆になるような結果となった理由としては、主に規制の影響が関係しているという。暗号資産の規制が厳しくなることで利用が減少する一方で、DeFiなどに流れる傾向があるとしている。

参照ソース


    The 2021 Global Crypto Adoption Index: Worldwide Adoption Jumps Over 880% With P2P Platforms Driving Cryptocurrency Usage in Emerging Markets
    Chanalysis
    Introducing the Chainalysis Global DeFi Adoption Index
    Chanalysis

今週の「なぜ」VisaのNFT購入はなぜ重要か

 今週はVisaのNFT購入や暗号資産およびDeFiの利用が進んだ国ランキングに関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。

【まとめ】

NFT市場は暗号資産市場に類似する
NFTは実際に所有することがわかることが多い
NFTの本質は何か

 それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。

暗号資産とNFT

 現在、ビットコインやイーサリアムを保有する上場企業は世界に30社ほど存在している。Visaはここに含まれていないにも関わらず、今回NFTを購入したため大きく話題となった。ではなぜ、Visaは暗号資産ではなくNFTへの参入を決めたのだろうか。

 法律的にも技術的に、暗号資産とNFTは異なるものとして定義されている。法律的にはNFTは未整備な部分が多いものの、暗号資産とNFTは異なるものとして規制される可能性が濃厚だ。

 技術的には、暗号資産をFungible Tokenというのに対して、NFTはNon-Fungible Tokenと名付けられている。暗号資産がビットコインやイーサリアムの他に多数誕生したのと同様、今後NFTも数多く誕生することになるだろう。

 ビットコインとCryptoPunksを比較すると、ビットコインの発行上限が約2100万BTCであるのに対してCryptoPunksは1万に設定されている。発行上限だけを見れば、ビットコインよりもCryptoPunksの方が価値は高いことになる。

NFT市場の課題とVisaの役割

 現状のNFT市場には課題が多く残されている。例えば、NFTとして発行された画像データとはいえ、第三者がスクショを撮ったりコピペして使用したりすることは可能だ。また、ブロックチェーンに詳しい人でない限り、その画像データがNFTとして発行されていることを確認するのはハードルが高いだろう。

 したがって、まだしばらくNFTが一部の人にしか価値を持たないものであることは間違いないと考えられる。そこで重要なのは、外部環境の整備だ。例えば、ブロックチェーンに記録されたデータを簡単に閲覧できるようにするためのローカライズされたエクスプローラーや、非開発者向けのNFT発行ツールなどがあげられる。

 そう考えるとVisaの参入は極めて重要な意味を持つ。Visaの担う役割は、何と言ってもクレジットカードでNFTを購入できる環境の整備だ。現状、NFTのマーケットプレイスでNFTを購入するにはETHが必要になる場合が多く、そもそもETHを持っていない人が市場から排除されてしまっている。

NFTの本質は権利・存在証明

 高値で売買されたニュースばかりに注目が集まるNFTだが、その本質はやはり権利や存在の証明だ。デジタルデータに一意性を持たせることができるNFTは、アートやコレクションの売買以外にも多くの使い道が考えられる。

 例えば、ここ最近台頭しつつあるのがソーシャルトークンと呼ばれる類のもので、NFTの保有者のみがアクセスできるコミュニティなどが形成されてきている。他にも、資格や修了証、土地の所有権などをNFTとして発行するのも有効だ。

 単にデータをブロックチェーンに記録するだけでなくNFTとして発行しておくことで、ブロックチェーンに対応した他のサービスに接続することができるようになる。これがスマートコントラクトでありNFTの本質ではないだろうか。

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。“学習するほどトークンがもらえる”オンライン学習サービス「PoL(ポル)」や企業のブロックチェーン導入をサポートする「PoL Enterprise」を提供している。海外カンファレンスでの登壇や行政でのオブザーバー活動も行う。Twitter:@tomohiro_tagami