5分でわかるブロックチェーン講座

ブロックチェーンはマルチチェーン化の時代へ突入、CoinbaseとFTXがNFTマーケットプレイスを発表

イギリスでNFTゲームが賭博委員会の調査対象に

 暗号資産・ブロックチェーンに関連するたくさんのニュースの中から見逃せない話題をピックアップ。1週間分の最新情報に解説と合わせて、なぜ重要なのか筆者の考察をお届けします。

CoinbaseとFTXがNFTマーケットプレイスを発表

 大手暗号資産取引所CoinbaseとFTXが、こぞってNFTマーケットプレイスのローンチを発表した。Coinbaseはイーサリアムを採用、FTXはソラナを採用するなど、昨今のマルチチェーンのトレンドが浮き彫りになる結果となった。

 Coinbaseが発表したNFTマーケットプレイスは、ローンチに先立ちウェイティングリストへの登録を開始している。1日で100万人近い登録があったとされており、影響力の高さが伺えるだろう。暗号資産の取引所とは独立した形で、KYCなしで利用できるようだ。将来的には、イーサリアム以外のチェーンに対応する計画も立てているという。

 一方のFTXは、一般的にNFTマーケットプレイスで使用されるイーサリアムではなく、ソラナを採用した。NFTの特徴である二次流通市場での転売収益を意味するロイヤリティは設定できない仕様だ。これは、ロイヤリティが設定されたNFTが有価証券とみなされる可能性があるためだという。

 CoinbaseとFTXでそれぞれ異なるチェーン戦略をとったわけだが、今週は昨今激化しているマルチチェーン化について考察したい。

参照ソース


    How to Deposit NFTs to FTX
    FTX

英賭博委員会がNFTゲームSorareを調査

 英国の賭博委員会が、人気NFTゲームSorareを調査していることを明らかにした。賭博法違反の可能性があるという。

 Sorareは、サッカー選手などのトレーディングカードをNFTとして発行したブロックチェーンゲームの一種だ。NFTであるため、ゲーム外でプレイヤー同士のトレードが行える点が特徴である。

 賭博委員会によると、Sorareはライセンスを取得せずにギャンブル要素を含んだゲームを提供しているという。Sorare内でトレードされているカードの価格が、実際の試合結果に左右されている実態を鑑みて、この点が賭博にあたるという指摘だ。

 NFT活用のゲームでは、度々この点についての議論が繰り返されてきた。日本でも、RMT(Real Money Trade)に近い様相として、NFTをガチャのようにランダムに販売する機能は、賭博法違反となる可能性が指摘されている。

 Sorareに対する賭博委員会の調査結果次第では、他のNFT活用のブロックチェーンゲームにも少なからず影響を与えることになるだろう。

参照ソース

今週の「なぜ」マルチチェーン化について考察

 今週はCoinbaseとFTXによるNFTマーケットプレイスや、英国によるNFTゲームの賭博法違反の可能性に関するトピックを取り上げた。ここからは、なぜ重要なのか、解説と筆者の考察を述べていく。

【まとめ】

ブロックチェーンは多様化の時代に突入
マルチチェーン化の是非
DeFiで加速したマルチチェーン化はNFTでも進むのか

 それでは、さらなる解説と共に筆者の考察を説明していこう。

ブロックチェーンは多様化の時代に突入

 NFTマーケットプレイスをローンチする環境として、Coinbaseがイーサリアムを採用し、FTXがソラナを採用した。イーサリアムもソラナも、いわゆるパブリックチェーンと呼ばれる分野にカテゴライズされるブロックチェーンである。

 これまで覇権を握ってきたイーサリアムが、スケーラビリティ問題によるガス代の高騰などの影響から足踏みしている状況を受け、ここ数年で他のブロックチェーンがシェアを奪う事態となってきた。

 その筆頭がソラナであり、他にはBinanceのBSCやAvalanche、イーサリアムのレイヤー2であるPolygonなどがあげられる。これらは、イーサリアムと比べて分散性に欠けるため、個人的にはパブリックチェーンと呼ぶのはどうかと思うものの、世間的には認められているようだ。

 その多くが、イーサリアムよりも高い処理性能を持ち、安い取引手数料を強みとしている。処理性能を高めるには分散性を犠牲にする必要があるため、当然の結果と言えるだろう。

マルチチェーンの是非

 ブロックチェーンは多様化の時代に突入している。イーサリアムの開発が遅れていることが主な原因であり、それを待っていられないという開発者が他のチェーンに移り始めているという状況だ。

 これを、文字通り「マルチチェーン化」と呼んでいる。今週は、米CoinDeskがマルチチェーンに関する市況レポートを公開していたが、それによると、イーサリアム以外に先述のBSC、ソラナ(Solana)、Polygon、Avalancheが有力候補となっているようだ。

DeFiで使用されているブロックチェーン(参照:CoinDesk

 イーサリアム以外のチェーンが盛り上がる流れは、基本的に以下の通りとなっている。


    1.ブロックチェーンを開発してネイティブトークンを発行
    2.PRなどでネイティブトークンの時価総額が高騰したタイミングで、グラントプログラム(資金提供)を開始するための独自ファンドを組成
    3.原価ゼロで発行したネイティブトークンを開発者にばら撒く
    4.ネイティブトークン目当てに開発者が殺到
    5.ブロックチェーン上にDAppsを開発してもらう

 気になるのは、ここにエンドユーザーが一切介在していない点だ。つまり、トークンの発行体と開発者で完結する一連の取り組みを経て、ブロックチェーンが乱立しているのである。

NFTの今後

 マルチチェーン化に拍車をかけたのが、DeFi市場の盛り上がりだ。イーサリアムのガス代が高騰して少額取引ができなくなってしまったため、他のチェーンが台頭している。

 しかし、他のチェーンで起きていることは、イーサリアムの焼き増し状態なのだ。結局のところ、DEX、レンディング、ステーブルコインなどが開発され直しているだけである。

 ブロックチェーンの開発企業と、そのネイティブトークンを受け取ってDAppsを開発する企業および開発者が、根本的な解決には取り組まず、わかりやすい類似プロジェクトをローンチし続けているだけなのだ。

 日本でも人気のNFTでも、今まさに同じことが起きようとしている。OpenSea一択となっているNFTマーケットプレイスだが、OpenSeaに勝てないとみるとイーサリアムから離れ他のチェーンで同じものを立ち上げる。FTXの戦略だ。

 異なるチェーンで同じものを作るより、同じチェーンでより良いものを作った方が、ユーザーにとって愛されるプロダクトになるのではないだろうか。

田上 智裕(株式会社techtec代表取締役)

リクルートで全社ブロックチェーンR&Dを担当後、株式会社techtecを創業。“学習するほどトークンがもらえる”オンライン学習サービス「PoL(ポル)」や企業のブロックチェーン導入をサポートする「PoL Enterprise」を提供している。海外カンファレンスでの登壇や行政でのオブザーバー活動も行う。Twitter:@tomohiro_tagami