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第107回:GPS搭載ウェアラブルカメラ「ContourGPS」で地図連動の走行動画


 秋葉原でオープンしたGPS専門ショップ「輝けGPS!」を前々回に紹介したが、同点を取材中、個人的に「欲しい!」と思ったのがGPS搭載カメラ「ContourGPS」だ。これは、撮影した動画を位置情報とともに記録できる新しいタイプのカメラである。そこで今回は、このContourGPSに絞って詳しいレポートをお届けしよう。ウインタースポーツやサイクリングで動画撮影をしてみたいと思っている人は要チェックだ。

動画再生と同期して地図を表示

 最近は国産のデジタルカメラやビデオカメラにもGPSを搭載した製品が増えてきているが、残念ながらGPSのメリットを十分に活用しているものは少ない。せっかく録画しながら位置情報を取得できるのだから、動画の再生に合わせて撮影地点が移動する様子をデジタル地図上に表示する機能があると便利だと思うのだが、そのような機能を搭載したカメラは見当たらなかった。

 ところがここに来て、海外製のGPS搭載ドライブレコーダーやハンディカメラで、このような機能を持った製品が相次いでリリースされている。今回紹介するContourGPSもその1つだ。自動車用のドライブレコーダーがシガーソケットからの給電に頼るのに対して、こちらはバッテリーを内蔵しており、サイクリングやウインタースポーツなどでの使用を想定している。

「ContourGPS」製品紹介ページクリアケースに入った本体

 日本での販売は株式会社美貴本という会社で、同社の直販サイト「Mikimoto Beans」のほか、輝けGPS!などのGPSショップでも扱っている。価格はオープンプライスで、Mikimoto Beansでは4万4800円、輝けGPS!では4万2490円と、いずれも4万円以上の値付けとなっている。ちなみにこのような製品を美貴本では“ウェアラブルカメラ”、輝けGPS!では“GPSアクションビデオカメラ”というカテゴリ名で呼んでいる。

液晶画面を省いたシンプルなボディ

 ContourGPSのサイズは95×58×34mm、重さは147g。ボディの外装はアルミおよびグラスファイバー製で、ゴーグルのバンドやヘルメットなどに装着するものだけにコンパクト・軽量に設計されている。最近のカメラにしては珍しく、液晶画面はいっさい搭載されておらず、光学ファインダーすら省かれている。

 外装も極めてシンプルで、レンズの反対側に電源ボタンと背面ドアロックスイッチが搭載されているほかは、上部に大きなスライド式の録画スイッチがあるだけだ。レンズバリアもなく、撮影時以外は付属のゴム製レンズキャップを被せて保護する。

 ドアロックスイッチを解除して背面のフタを開けると、中にはバッテリースロットやmicroSDカードスロット、USB端子などが見える。充電はUSBケーブル経由でPCからの給電によって行う。バッテリー持続時間は約3時間で、充電時間は約4時間。microSDカードはSDHC対応で、最大32GBまでに対応。購入時には2GBのmicroSDカードが付属する。

 背面にはこのほか、録画する際の解像度切り替えスイッチおよびメモリカード初期化ボタンがある。解像度切り替えスイッチは「1」と「2」の番号を切り替えられるようになっており、初期設定では「1」に1920×1080/30fps、「2」に1280×720/30fpsが割り当てられている。ファイルフォーマットは.mov(コーデックはH.264)だ。

 ほかに1280×960/30fpsや1280×720fps/60fps、ピクチャーモードを各番号に割り当てることも可能で、この設定はPCに接続した状態で変更する。なお、ピクチャーモードとは一定時間ごとにジオタグ(位置情報)付きの静止画を撮影する機能で、撮影間隔は3秒、5秒、10秒、30秒、60秒の5段階。

 また、測光方式やコントラスト、シャープネス、露出などライティング設定もPCと接続しないと変更できない。測光方式は中央部測光、平均測光、スポット測光の3種類が用意されている。ライティング設定は「Everyday Outdoor」と「Dusk(暗がり)」という2種類のプリセットが用意されているほか、「Custom」を選択することで設定値を細かく調整できる。

ボディの素材はアルミとグラスファイバー左右のデザインは対称
レンズの画角は135度背面のスイッチ
背面のフタを開けるとカードスロットやスイッチがある

オプションで多彩なマウントを用意

 ContourGPSの外装には手に持つためのグリップやバンドなどが見当たらない。ContourGPSが何かにマウントして使うことを前提としていて、普通のカメラのように手持ちでの使用は想定していないためだ。

 マウントは2種類が同梱されている。1つは回転式フラットサーフェイスマウント。これはヘルメットなどに両面テープで貼り付けて使うもので、購入時には2個が付属する。もう1つはゴーグルストラップマウントで、スノースポーツやバイク、自転車などに使うゴーグルのストラップにセットできるマウントだ。こちらはストラップに通して使うものなので、回転式フラットサーフェイスマウントとは違って、一度セットしたあとも自由に取り外せる。

 このほかにも多彩なマウントがオプションで用意されており、自転車のハンドルバー用のマウントや、サーフボードやウェイクボード用のマウント、自転車ヘルメット用マウント、三脚用のマウントやRAM Mounting Systems社と共同開発したロールバーマウント、ヘッドバンドマウント、ライフルに取り付けるためのピカティニーマウントなどもそろっている。このマウントの種類の豊富さがContourGPSの大きな魅力だ。

 今回はゴーグルストラップマウントを使用した。ContourGPSの側面にあるレールに樹脂製の部品をはめ込み、ストラップを通したマウントベースにはめ込むだけで簡単に取り付けられる。マウントとの接合部となっている本体横のレールは強度が高く、しっかりと取り付けられるが、その分、取り外す際は固くて少し苦労する。精密部品だけに、自転車やバイクで使うときはハンドルバーなどに取り付けるよりも、ヘルメットやゴーグルなどに取り付けたほうが衝撃吸収の意味でも安心だと思う。

回転式フラットサーフェイスマウントゴーグルストラップマウント
左からストラップ、バッテリー、USBケーブルストラップに通したマウントベース
アダプターをセットした状態スキーゴーグルに装着した状態
マウントの接合部

操作しやすいスライド式の録画スイッチ

 前述したようにContourGPSには液晶が搭載されていないので、操作状態などはすべてLEDの点灯とビープ音によって確認する。まず電源ボタンを3秒間押し続けるとスイッチが入り、GPSの測位がスタート。この間、録画動作LEDがグリーンに点滅する。衛星が捕捉されて、録画の準備ができるとLEDが消える。

 都心でコールドスタート(衛星軌道情報を持たない状態でスタート)させた場合、捕捉には8分ほどかかったが、ウォームスタート(衛星軌道情報を持った状態でスタート)の場合はかなり速く、スイッチを入れればすぐに使えるようになる。

 録画スイッチはスライド式の大型スイッチで、グローブなどをした状態でも操作しやすく、スイッチがオン/オフのどちらのポジションになっているかも確認しやすい。

スライド式の録画スイッチ録画スイッチを入れるとランプが点灯する

 なお、カメラのレンズは先端のリングで回転させることが可能で、デフォルトの位置から左右に90度ずつ回せる。マウントの仕方によって天地の方向が変わるので、リング回転によって撮影する向きを合わせるわけだ。

 あとは移動しながら撮影するだけだ。今回は自転車に乗って起伏のあるMTBコースなども走行してみたが、ContourGPSを取り付けた状態で運転すると少々頭が重く感じる。ただ、マウントがしっかりしているせいか左右にぶれたりせず、煩わしさはあまり感じない。「カメラの存在を忘れる」とまではいかないが、カメラを付けることでのストレスはほとんど感じなかった。

ヘルメットに付けるとしっかり固定される

将来的にはスマートフォンとの連動も可能に

 録画を終えたら、PCに接続して動画や静止画を転送する。撮影した動画や静止画を管理するソフトとしては、「Storyteller」という専用ソフトが用意されている。Storytellerは、Windows XP SP2以降とMac OS X 10.5以降に対応(いずれも要QuickTime 7以上)しており、美貴本が提供するContourGPSの紹介サイトからダウンロード可能。ContourGPS本体のカメラの設定などもStorytellerを使って行う。

 解像度やライティングのほか、マイク感度やGPSのオン/オフなどもPC上で行うので、出先でこれらの設定を変えるならノートPCを持っていく必要がある。このソフトは設定ダイアログのウィンドウサイズがけっこう大きく、ディスプレイ解像度が800×480ピクセルの筆者のネットブックでは、最下段のボタンが表示されず困った。ソフトウェアの最低動作環境にはディスプレイの推奨解像度が記されていないので注意しよう。

 なお、本製品にはBluetooth通信機能が搭載されており、将来的にはスマートフォンとの通信が可能になる予定だ。米国ではすでにiPhone用のアプリがリリースされており、Android用アプリも開発中とのこと。iPhoneと無線接続させると、iPhoneの画面で撮影中の映像を確認できる。つまりiPhoneがContourGPSのライブビューファインダーになるわけだ。さらにBluetooth接続すると撮影モードやライティング設定もiPhone上で変更できるようになり、わざわざPCを持ち歩く必要もなくなる。美貴本のサイトでは現在、このアプリについては「開発中」とアナウンスしている。

鮮明なフルHD動画と地図連動機能

 さて、転送した動画をStorytellerのリスト上でダブルクリックすると、動画が再生されるとともに、小さいウィンドウが起動して地図が表示される。動画の再生に合わせて地図上のアイコンが移動する様子は見ていて飽きない。どの地点からどのような景色が見えるのかがわかるのは楽しいものだ。フルHDの映像も鮮明で、自転車の走行動画をとてもリアルに映し出してくれる。都市部の映像を見ると、Googleマップのストリートビューの動画版のような使い心地で、街中の臨場感が生き生きと伝わってくる。この視覚効果は格別で、地図好きにはたまらない魅力だろう。

 Storytellerにはこのほか、動画の気に入った部分だけを抽出して「Contour.com」のオンラインコミュニティに公開するアップロード機能も搭載されている。ただし、一般道の走行シーンなどを撮影した場合、他人の自動車のナンバーなどが大きく映り込んだ映像をアップロードして公開するとトラブルになる可能性もあるので、投稿する際には十分に注意が必要だ。

Storyteller

ポジション1の設定画面

静止画撮影の設定画面

 なお、以下に紹介する動画は、Storyteller上で動画を再生させているところをデスクトップキャプチャソフトで録画したものである。キャプチャの段階で動画がコマ落ちしてしまっているが、実際はきちんと滑らかに再生されているのでご注意を。この動画は、あくまでも動画再生と地図との連動機能を見せることを目的としたもので、実際の動画品質はContour.comに投稿された数々の動画で確認していただきたい。

◇河川敷の走行動画

 

GPSの軌跡ログは街中での精度が今ひとつ

 それではContourGPSのログを見てみよう。今回は幕張海浜公園のMTBコースおよび都内の市街地でサンプルを記録した。比較に使ったのは単体GPSロガーの「M-241」で、いずれも自転車に乗っての記録である。地図上の赤線がContourGPS、水色の線がM-241を示している。

 MTBコースのログを見てみると、両機で軌跡が離れている部分が少なくない。見晴らしのいい平地ではまだ近い部分もあるが、左端の森の部分に入ると違いがかなり大きくなる。この森の中のコースについてはM-241のほうが実際の軌跡に近く、ContourGPSはカーブ半径がひと回り小さくなってしまっている。軌跡そのものもジグザグで誤差が激しい。

MTBコースのログ

 一方、都心の路上で取得したログを見ると、ContourGPSの誤差はさらに激しくなる。ビルが密集した悪条件のせいか、M-241に比べてかなり軌跡の線が暴れている。ちなみに画面左側で大きく右左に膨れている部分は信号待ちで止まった時で、止まっている間に正確な位置に戻ったり、誤差が大きくなったりと時によって症状が変わる。

 移動している時は一応、道路幅内に軌跡が収まってはいるものの、街中では単体ロガーに比べると精度が今ひとつと言わざるをえない。やはりできるだけ見晴らしのいい野外で使うべき製品だと言える。

市街地のログ

多彩なスポーツに対応する魅力的なカメラ

 このようにGPSの精度については物足りなさがあるものの、フルHD動画の美しさと地図との連動機能はかなりすばらしい。操作性については、細かい設定をするのにPCとの接続が必要なのが少し面倒だが、設定さえしておけば電源スイッチや録画スイッチの使い勝手はとてもいい。

 さらに、スノースポーツや自転車だけでなく、サーフボードやRAMマウントにまで対応する豊富なマウント群は、さまざまなスポーツをする人には大きな魅力と言えるだろう。

 1つ惜しいのは、このContourGPSは防水仕様ではないこと。背面のフタにもパッキンらしきものは見られないので、水には強くないと考えていいだろう。スキーやスノーボードで使うなら、転倒には十分気を付ける必要がある。重量の問題などがあるのだろうが、フィールドでの使用を前提とした製品であるなら防水仕様にしてほしかった。この辺りは今後の進化に期待したい。

 最近は動画カメラがかなり安価になってきているので、4万円台となると少し手を出しづらいかもしれないが、このカメラは機能を割り切ることで実現した軽量・コンパクトなボディと豊富なマウントを兼ね備えており、さらに地図との連動機能というユニークな機能も持っている。スポーツ中の動画を撮影したい人にとっては魅力的な製品と言えるだろう。


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2011/3/31 06:00


片岡 義明
 地図に関することならインターネットの地図サイトから紙メディア、カーナビ、ハンディGPS、地球儀まで、どんなジャンルにも首を突っ込む無類の地図好きライター。地図とコンパスとGPSを片手に街や山を徘徊する日々を送る一方で、地図関連の最新情報の収集にも余念がない。書籍「パソ鉄の旅-デジタル地図に残す自分だけの鉄道記-」がインプレスジャパンから発売中。