趣味のインターネット地図ウォッチ

銀座駅の地下道にビーコン200個、「駅すぱあと」アプリで現在地を高精度測位

 株式会社ヴァル研究所は、株式会社NTTドコモの協力のもと、乗換案内アプリ「駅すぱあと」を活用したBLEビーコンの実証実験を開始した。期間は12月15日から2カ月間。Android版は同日より提供開始した最新版(バージョン2.13.0以上)において同実証実験に対応済み。iOS版も後日アップデート(バージョン3.2.0以上)で対応する予定で、こちらもリリース時から2カ月間実施する。

 今回の実証実験では、銀座駅の地下(改札外)に設置された約200個のビーコンをスマートフォンで検知し、ユーザーの現在地を表示するとともに、ユーザーの現在地に関連した情報の配信を行う。

 ビーコンの受信には、ヴァル研究所が提供する駅すぱあとのアプリに、NTTドコモのジオフェンシングプラットフォーム「39Geopla」(http://39geopla.net/)のSDKを導入することで実現した。利用する場合は同アプリでの位置情報の取得を許可するとともに、スマートフォンのBluetooth機能および位置情報をオンにしておく必要がある。

 利用方法は、Android版の最新バージョンにおいて下部メニューから「その他」を選び、「地下通路案内」のアイコンをタップすると地下通路マップのコーナーになる。現在、提供されているのは銀座駅のみで、「銀座」をタップすると地下通路のマップが表示される。

「駅すぱあと」アプリの「その他」のメニュー
地下通路マップ

 なお、Android版では、銀座駅の改札の外へ移動してビーコンに接近すると、駅すぱあとのアプリで地下通路マップを使えるという内容の通知が表示されるので、ここから地下通路案内を起動することもできる。iOS版では、到着駅を銀座にして経路検索をすると、検索結果に表示される到着時間の5分前に通知が表示されるので、ここから地下通路案内の画面に移動することもできる。

地下通路マップの通知
銀座駅の屋内地図

 屋内での現在地の測位は、地下に設置された複数のビーコンの電波強度を測定し、三角測量の原理で場所を推定する。実際に銀座駅を訪れてみたところ、改札を出たらすぐにマップ上に自分の位置を示す青いサークルが表示された。現在地の更新間隔は10秒ごとで、歩くとそれに伴ってサークルも地図上で移動する。また、右下のボタンをタップすることで手動で測位することも可能だ。階段を登って地上に出たり、地下の店舗入口に入って行ったり、改札を通ってプラットホームに降りたりすると、すぐにサークルが非表示となる。

 銀座駅の地下道はかなり幅が広いが、屋内地図上で左右どちら側にいるかもきちんと表示される。ごくたまに誤差が発生して離れた場所を指し示すこともあるが、すぐに正しい位置に修正されるのでほとんど気にならない。

左右どちら側にいるかがきちんと分かる
イベント広場にいるときの表示

 屋内地図については、出口番号が大きめに書かれていて分かりやすい。また、「JR有楽町駅方面」など方面案内も大きく記載されているほか、切符の販売機やエレベーターの位置はアイコンで表示されている。一方、店舗やカフェなどの店舗名については全く記載されておらず、この点は少し残念だ。

 位置に連動した情報提供については、屋内地図の下部にバナー表示される。なお、この情報は有料版では非表示となるので注意が必要だ。このレポートを書いている12月15日現在、銀座の街も含めた「おすすめイルミネーション特集」のみしか表示されず、バナーをタップすると特集サイトが表示される。今後はこのような特集のほか、百貨店の公式サイトへ飛ぶリンクも増やしていく予定だ。また、この情報配信へのユーザーの反応については、クリック数などを集計することで調査する。

出口番号が大きく書かれていて分かりやすい
特集サイト

 ヴァル研究所によると、今回の実証実験では、地下鉄駅から地上への出口案内のニーズを調査するとのこと。実証実験では現在地を表示するだけで、経路検索やナビゲーション機能は提供しないが、銀座駅のように多くの路線が乗り入れており、長い地下道で結ばれているような駅の場合は、自分の現在地が分かるだけでも重宝する。測位精度も高く、10秒ごとという短い間隔で位置情報が更新されるので、地上でGPSを使用するのに近い感覚で利用できる。銀座駅を訪れる機会があったら試してみてはいかがだろうか。

片岡 義明

IT・家電・街歩きなどの分野で活動中のライター。特に地図や位置情報に関す ることを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから法 人向け地図ソリューション、紙地図、測位システム、ナビゲーションデバイス、 オープンデータなど幅広い地図関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報ビッグデータ」(共著)が発売中。