地図と位置情報

地図を活用した防災・災害時対応アプリまとめ――いざというのときのために

連載「趣味のインターネット地図ウォッチ」からの派生シリーズとして、暮らしやビジネスあるいは災害対策をはじめとした公共サービスなどにおけるGISや位置情報技術の利活用事例、それらを支えるGPS/GNSSやビーコン、Wi-Fi、音波や地磁気による測位技術の最新動向など、“地図と位置情報”をテーマにした記事を不定期掲載でお届けします。


 今日9月1日は「防災の日」ということで、地図を活用した防災アプリをまとめてみた。災害時の避難所の位置を地図上で確認できる機能のほか、安否確認の機能を持つアプリも多く、あらかじめ家族で使い方を確認しておくことで、いざというときに安否情報を確認することが可能となる。このほか、AR(拡張現実)技術により、カメラの実写映像に防災関連の情報を重ね合わせることが可能なアプリもある。いざというときのために、このようなアプリをスマートフォンにインストールしておくのがおすすめだ。

全国避難所ガイド(iOS/Android)

価格:無料
http://www.hinanjyo.jp/

全国避難所ガイド

 全国の自治体が定めた災害時の避難所や避難場所(広域避難場所、一時避難場所、帰宅困難者一時滞在施設、津波避難施設など)を収録するアプリ。避難所の収録件数は10万件以上で、給水拠点や医療機関なども収録している。現在地周辺の避難所を検索して、道順をルート案内する災害時用ナビゲーション機能も搭載しており、オフラインでも使用できる。

 現在地に連動した「防災情報」をプッシュ通知する機能を搭載するほか、避難勧告や国民保護情報、気象警報や地震情報などの防災情報(Lアラート)の配信機能も搭載している。さらに、Googleパーソンファインダーの安否登録・確認、災害用伝言板(web171)や「J-anpi安否情報まとめて検索」の安否確認にアクセスすることもできる。

 地図は標準マップのほか、国土地理院の標準地図や単色地図、空中写真(オルソ画像)、色別標高図などに切り替えることが可能で、活断層や火山、土砂災害警戒区域、浸水想定区域などのハザードマップを重ね合わせることもできる。

わが家の防災ナビ(iOS)

価格:無料
http://tokusuru-bosai.jp/app.html

わが家の防災ナビ

 日本気象協会が提供する防災情報アプリで、防災・気象関連情報にはLアラート情報(災害情報共有システム)を利用している。住宅の立地条件などを入力すると、大雨の際の洪水や土砂災害などの危険度を判定して「わが家の避難計画」を提案する機能を搭載するほか、家族構成に合わせて必要な備蓄品をチェックする機能も搭載している。さらに、地震速報や注意報・警報、避難勧告などの防災・気象関連情報が発表されたときに、プッシュ通知で利用者へ情報を届けることもできる。アプリ内で「家族グループ」を作成し、家族の居場所を知ることも可能だ。
 このようなアクションを実行してアプリ内でチェックマークを付けると、アプリ内で「防災ポイント」がたまり、ポイントがたまると「トクする!防災」プロジェクトの協賛企業が提供する防災アイテムのプレゼントに応募することが可能だ。

ココダヨ(iOS/Android)

価格:無料
http://www.cocodayo.jp/

ココダヨ

 地震や火山噴火などの自然災害発生時に、家族の位置情報および安否情報を共有できる。登録可能なメンバーは最大4人で、災害発生時は警報に連動して、お互いの居場所を通知することができる。通知する際は「助けて」「困った」「無事」という3つの選択肢が表示されるため、タップするだけで簡単に自分の状況を知らせることが可能だ。

 安否情報を通知したあとに状況が変化した場合は、続けて通知して状況を更新することもできる。届いた通知をタップすることで、地図上で居場所を確認することも可能だ。平時でも位置情報の共有機能を利用することが可能で、共有レベルを「都道府県」「市区町村」「街区、番地」の3つのレベルから選べる。

goo防災アプリ(iOS/Android)

価格:無料
http://advance.bousai.goo.ne.jp/web/

goo防災アプリ

 日常から災害発生時まで集約した総合防災アプリ。安否確認サイト「J-anpi」と連携しており、災害時に安否情報の登録や家族の安否情報の検索を行える。事前に登録情報を準備しておくことも可能だ。防災マップの機能では避難所、公共施設等のオープンデータ、公衆電話などを検索できる。また、大規模災害に備え、標高での施設絞り込みや、一部オフライン状況下でも地図を利用することもできる。

 防災情報のカテゴリーメニューより人気質問サイト「教えて!goo」のコラムや、避難時に発症した場合を想定した「家庭の医学」「くすり検索」など、災害対策に役立つコンテンツも提供している。さらに、事前に地域を登録しておくことで、その地域に関連した気象・災害情報をプッシュ通知で受信することが可能で、「エリア連動通知」をONにしておくことで、現在地の情報も受信できる。受信したい情報の種類やタイミングなども細かく設定できる。

ARハザードスコープ

http://www.cadcenter.co.jp/camp/ARscope.html

ARハザードスコープLite

 GPSと連動して、AR(拡張現実)技術によって、スマートフォンのカメラで撮影された実写の映像に、その場所の防災情報を合成して表示することができるアプリ。地域の特徴に合わせた防災情報をアプリに搭載して、自治体オリジナルの防災アプリとして提供するもので、「にいがた防災アプリ」「三郷市ハザードマップ」「川口市ハザードマップ」などさまざまな地域のアプリに搭載されているほか、各地の実証実験や学術研究にも協力している。また、東京23区における建物倒壊危険度や火災危険度、災害時活動今何度、避難施設情報を表示する「ARハザードスコープLite」も提供する。

 周囲の避難施設をAR画面上にアイコンで表示し、選択中の避難施設名と種類、直接距離と方向をテキストで表示できる。また、色分けされた危険度情報を合成表示することも可能で、現在地を中心とした周囲の危険度を確認できる。平面地図を確認することも可能で、避難施設アイコンをタップして目標の避難施設を指定して矢印を表示できるほか、避難施設の種類別にレイヤー表示したり、アイコンデザインを分けて同時表示したりすることもできる。さらに、津波情報に対応しているアプリでは、実際の風景の中にどこまで津波が来るかをAR合成で表示することが可能で、想定津波の高さを視覚的に確認できる。

震災時帰宅支援マップ(iOS/Android)

価格:各400円
http://mapple-on.jp/products/kitaku

震災時帰宅支援マップ

 書籍地図「帰宅支援マップ」のスマートフォンアプリ版で、「首都圏版」「中京圏版」「京阪神版」の3つがある。震災などの有事に有用な調査データを収録している。地図データは初回ダウンロード時に端末に保存することが可能で、大地震の発生後に電波がオフライン状態でも使える。地図は1枚の大きなシームレスマップを採用しており、概略図から詳細図までの切り替えも画面の拡大・縮小だけで簡単に行える。任意の地点を目的地に登録すれば、目的地の方角を常に指し示す方向誘導機能も使える。

 歩いた箇所は30秒間隔で軌跡点として表示されるので、進行方向の正誤確認も簡単に行える。現在地や地図上の任意地点から、広域避難場所や避難所、帰宅支援ステーション、病院、トイレなど帰宅に必要な12ジャンルのスポットを検索することも可能。さらに、2013年4月から東京都で施行された「帰宅困難者対策条例」に基づいて、無理に移動しようとせずに安全確保を推奨する「一時待機マニュアル」を掲載するほか、地図上で一時滞在のための施設も検索できる。

防災セーフティマップ(iOS)

価格:無料
http://bousai-safety.strikingly.com/

防災セーフティマップ

 全国12万6000カ所以上の避難施設を表示できるアプリ。現在地周辺の施設を検索してナビゲーションを行える。地図データと避難施設データを端末に保存することにより、オフラインでも使用することができる。また、場所をシェアして、その場所についてウェブで調べることもできる。

 東日本大震災や、各地の土砂災害など、過去の災害地図を表示することが可能で、独自の「標高マーカー」により、周囲の標高を色別で分かりやすく図示できる。さらに、地図上の好きな箇所を長押しすることにより、その場所の標高を調べることが可能なほか、避難可能距離も表示可能で、災害到達予想時間や歩行速度などを入力して、施設を絞り込むこともできる。

片岡 義明

IT・家電・街歩きなどの分野で活動中のライター。特に地図や位置情報に関す ることを中心テーマとして取り組んでおり、インターネットの地図サイトから法 人向け地図ソリューション、紙地図、測位システム、ナビゲーションデバイス、 オープンデータなど幅広い地図関連トピックを追っている。測量士。インプレスR&Dから書籍「位置情報ビッグデータ」(共著)が発売中。