地図と位置情報
自動走行車のための高精度3次元地図、2022年までに一般道8万4000km整備目指す
2018年6月21日 06:00
6月13日~15日に開催された「Interop Tokyo 2016」の併催イベント「ロケーションビジネスジャパン(LBJ)2018」。展示ブースでの注目製品はすでに速報記事でお伝えしたが、このほかに、位置情報ビジネスの最新事情が分かる講演やセミナーも行われた。今回は、その中から2つの基調講演をレポートする。
- 『ブロックチェーンと位置情報の組み合わせで何ができる?』
- 『自動走行車のための高精度3次元地図、2022年までに一般道8万4000km整備目指す』(この記事)
自動走行車用ダイナミックマップや船舶データの整備を支援、産業データ共有促進へ
14日に行われた基調講演では、経済産業省の前田泰宏氏(商務情報政策局審議官)が、「コネクティッドインダストリーズと地図情報を含む産業ビッグデータの活用」と題した講演を行った。前田氏は、2017年3月に開催されたCeBIT(ドイツ情報通信見本市)において日本政府が発表した「コネクティッドインダストリーズ(Connected Industries)」のコンセプトを紹介した。
産業分野における電子データ化は進んでいるものの、それぞれがばらばらに管理されており、連携していないという課題がある。そこで現在、産・官・学において、「モビリティ」「ものづくり・ロボティクス」「バイオ・素材」「プラント・インフラ保安」「スマートライフ」の5分野において、データ利活用や標準化、IT人材、サイバーセキュリティ、AI開発などの横断的な支援策について議論を行っている。これにより、将来的には、データをつなげて有効活用することで、技術革新や生産性向上、技能伝承などを通じた課題解決を目指している。
さらに、コネクティッドインダストリーズの実現に向けて2017年10月に発表した「東京イニシアティブ2017」では、リアルデータの共有・利活用に向けて、データ共有事業者の認定制度の創設や税制面での支援、リアルデータを持つ企業とAIベンチャーとの連携によるAIシステム開発支援、実証事業を通じたモデル創出・ルール整備など、支援強化のためのさまざまな政策を発表した。
これを踏まえて、複数企業間でのデータ収集・活用を目的に、補正予算により「産業データ共有促進事業」を支援するとして、2018年2月に公募を実施し、6月1日に採択した13事業者を発表した。
この中で位置情報関連の事業としては、ダイナミックマップ基盤株式会社による、自動走行車用の高精度3次元地図データの構築・整備が挙げられる。2018年度までには高速道路および自動車専用道路の初期整備が完了する予定で、できれば2022年までには一般道8万4000kmの初期整備や維持・更新スキーム構築を目指したいという。ダイナミックマップの静的3次元地図データの整備については、高速道路および自動車専用道路についてはスケジュールが示されていたが、今回は一般道の地図データの初期整備のスケジュール目標にまで踏み込んで言及している点が注目される。
このほか、株式会社シップデータセンターによる、船舶の運航データを収集・活用する事業も採択されている。同事業では、収集した運航データをもとに、船位情報(船舶の位置情報)と時刻にマッピングした海象気象情報を付加して、造船所や舶用メーカー、船主、オペレーター、船舶管理会社などがデータ分析・解析事業者を介してデータを共有するプラットフォームを構築する。2022年にはデータ保管隻数を550隻、データ取引件数を350件にすることを目指しているという。
前田氏は最後に、「データの利活用の目的とミッションは縦の列で(個々の企業で)じっくりと議論をしていただき、それがある程度明確になったら企業を超えて柔軟に横の関係を作っていく。そのような縦と横との連携が、データを扱うビジネスを実現していくことにつながるのではないかと思います。今後とも、“データ活用”という難しい、しかし楽しいテーマについて、みなさまと一緒に取り組んでいきたいと思います」と締めくくった。
- 『ブロックチェーンと位置情報の組み合わせで何ができる?』
- 『自動走行車のための高精度3次元地図、2022年までに一般道8万4000km整備目指す』(この記事)
本連載「地図と位置情報」では、INTERNET Watchの長寿連載「趣味のインターネット地図ウォッチ」からの派生シリーズとして、暮らしやビジネスあるいは災害対策をはじめとした公共サービスなどにおけるGISや位置情報技術の利活用事例、それらを支えるGPS/GNSSやビーコン、Wi-Fi、音波や地磁気による測位技術の最新動向など、「地図と位置情報」をテーマにした記事を不定期掲載でお届けしています。