中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2019/11/28~12/6]
アバターロボット「newme」が日本橋に登場 ほか
2019年12月6日 17:00
1. アバターロボット「newme」が日本橋に登場
ANAホールディングスのアバターロボット「newme(ニューミー)」を、秋に開催された展示会「CEATEC 2019」の会場でご覧になった方、あるいは関連する記事も多く掲載されたことから、それを読まれた方も多いのではないだろうか。そのmewmeがこの年末、リアル店舗にお目見えする(Markezine)。
三越伊勢丹では12月5日から24日までの期間限定で、アバター専用店舗「avatar-in store」を日本橋の商業施設「コレド室町3」の3階にオープンした。顧客は店舗に行けない人や、店舗に行きたくても行けない人が、遠隔地からアバターロボットを通じて、店頭にいる店員とコミュニケーションをしながら買い物体験ができるという。
いわゆるテレプレゼンスともいわれるこうした体験はそれほど多くの人の理解が進んでいるわけではない。こうした機会を通じ、これまでにない体験をする人が増え、そこから新たな用途のアイデアが生まれ、今後の広がりにも期待したい分野である。
ニュースソース
- ANAHDと三越伊勢丹、アバター専用店舗「avatar‐in store」を期間限定オープン[Markezine]
2. 大手出版社がデジタルコンテンツとサービスで積極展開
出版業界は不況が続いている。要因はいくつかあるだろうが、その1つは各種のコンテンツによる消費者の可処分時間の奪い合い問題だ。人は誰しも等しく24時間しかないなか、どのようなコンテンツを魅力的と感じ、時間(とお金)を投じるかということだ。これまではスマートフォンのコンテンツやアプリ、そしてゲームなどによって可処分時間が消費されてしまい、出版コンテンツが苦境に陥っていたという見方が一般的だったと思われる。そのようななか、この状況を巻き返すべく出版社のデジタルへの取り組みも積極的になってきている。とりわけ出版社がデジタルコンテンツという「ゲームのルール」を理解し、対応できる人材とその知見も高まってきた感じる。
1つは「文春オンライン」の月間ページビュー3億PV(外部配信を含めると月間6億PV)を超えたことだ(Markezine)。かつて流行語にもなった「文春砲」もSNSなどの文化が震源地であったが、その後、メディア自体の閲覧数も増加させた。どうすれば話題が作れ、どうしたらページビューという指標が伸びるのかというルールが理解され、本格的な施策が行われたということではないだろうか。
また、「瞬刊少年ジャンプ」は一緒に「ジャンプ」をした人の数によってマンガコンテンツが無料開放されるという企画だ(livedoor NEWS)。ソーシャルな要素を取り入れ、さらにネーミングもキャッチーだ。ネットワーク文化やデジタルデバイスの特性をうまくとらえたゲーム性が実装されている。また、KADOKAWAの「BOOK☆WALKER」では定額制サービス(サブスクリプションサービス)を開始した(Impress Watch)ことが報じられている。
インターネットというコンテンツの配信プラットフォームを前にして、これまでのコンテンツを扱ってきた出版社はどうしていいか分からなかった時代から、自然と施策のなかに組み込みつつある時代に入ったように感じる。そうなったとき、より強力なコンテンツやサービスが生まれる可能性が高まり、これからの競争も激化して行くのではないだろう。
ニュースソース
- 一緒に飛んだ人数でマンガ無料開放「瞬刊少年ジャンプ」アプリ[livedoor NEWS]
- 「文春オンライン」のPVが月間3億PVを突破 外部配信先での閲覧を含めると月間6億PV超えに[Markezine]
- BOOK☆WALKER、月760円でラノベ読み放題「角川文庫・ラノベ放題」[Impress Watch]
3. リーガルテック分野の新しい動き
さまざまな専門分野で情報通信技術を積極的に利用して、産業構造を変えたり、経済性、利便性などを大きく改善したりすることを、xTech(クロステック、あるいはエックステック)と呼んでいる。ファイナンスではフィンテック、医療ではメディテックというわけだ。そのような流れの1つにリーガルテックがある。主に法的手続きを情報通信技術によって改善してこうということだ。そのようななか、今週はオンライン商標登録サービスの「Cotobox」(cotobox)と、オンライン法人登記支援サービスの「AI-CON登記」(GVA TECH)に関するニュースを紹介しておこう。
まず、Cotoboxはブラウザー上で商標を調査したり、出願から管理までの手続きを行ったりすることができるサービスだが、新たにAIを利用した“ロゴ調査機能”が追加された。記事によれば最短10秒で同一または似ている画像を検索するとしている(TechCrunch日本版)。
そして、AI-CON登記はブラウザー上で法人の登記にまつわる届出書類の作成が行えるサービスだが、新たに役員変更登記への対応を開始した(TechCrunch日本版)。
こうした分野は実はそれなりの事務量や費用が生じていたと考えられる分野で、ウェブサービス化による業務改善は多くの関係者が望んでいたことなのではないだろうか。
ニュースソース
- オンライン商標登録サービス「Cotobox」にAI活用の“ロゴ調査機能”が追加、最短10秒で同一または似ている画像を検索[TechCrunch日本版]
- オンライン法人登記支援サービス「AI-CON登記」が役員変更の登記に対応[TechCrunch日本版]
4. グーグル創業者の2人が退任――グーグルの親会社アルファベットの役員変更
グーグルの親会社アルファベットの役員変更については、すでに一般紙誌でも大きく取り上げられてはいるが、ここでもあらためて触れておこう。
グーグルの創業者であるラリー・ペイジ最高経営責任者(CEO)が退任し、傘下の事業会社であるグーグルのスンダー・ピチャイCEOが後任に就任する。また、ラリー・ペイジ氏とともにグーグルの操業に関わった共同創業者セルゲイ・ブリン氏もアルファベットのプレジデントを退任する(ロイター)。なお、ラリー・ペイジ氏、セルゲイ・ブリン氏はともに取締役にはとどまるとしている。
同社はインターネットの発展とともに成長をして、いまやその地球規模でのプラットフォームをおさえる企業になった。一方で、プライバシーの問題や市場の独占などの重大な課題もあり、批判にもさらされてきた。さらには最近では急進的な社員らとの争議などもあり、外部から見ていても曲がり角に差し掛かったともいえそうな状況ではあった。そのようななか、新たな体制のもとで、この巨大企業がどう動いて行くのかは世界中が注目をしているはずだ。
5. ステーブルコインやデジタル法定通貨による新秩序はどうあるべきか
国際会議「ダボス会議」を開催していることで知られる世界経済フォーラム(WEF)が「ステーブルコインが世界の米ドル依存を和らげ、世界経済をより持続可能なものにする可能性がある」との見解を表明したと報じられている(仮想通貨Watch)。
一方、各国の経済政策担当閣僚によるG20では、仮想通過の影響の大きさに対する認識が共有された上で、だからこそ足並みをそろえて規制、すなわちルール作りを進める必要があるという方向性を示している。基本の理解では両者ともそれほど変わらないと思われるが、長らく続いてきた米ドルを中心とする秩序をこれからどう変えて行くのか、または変えていいのかという本質的な段階へと議論が進みつつあるのかもしれない。とりわけ、中国の動きなどは無視できなくなってきている。
ニュースソース
- 世界経済フォーラムが声明、Facebookの仮想通貨リブラなどステーブルコインを擁護 ~「ステーブルコインは世界の米ドル依存を緩和し経済安定に貢献する」[仮想通貨Watch]