中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2021/7/1~7/8]

米国企業へのランサムウェア攻撃 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. 自然災害における通信インフラサービス

 静岡県熱海市の大雨とそれに伴う土石流による災害、日本海側での大雨災害は原稿執筆時点においても継続して、引き続き、大雨が続く地域もあると報じられている。毎年のようにこの時期に大雨による災害が発生していることからも、将来にわたり留意が必要である。

 日本では各地で自然災害による被害を受けてきているが、こうした発生時に重要となるのが通信インフラの健全性である。今回、NTTドコモが一時的に利用しづらい状況になったと発表したが、他の通信事業者では特段の通信障害は確認されていないと報じられている。大きな通信障害に至っていないのは何よりだ(ケータイWatch)。

 また、過去の経験から各社ともに災害対策など機動的に実施できるようになっているとみられる。基地局の維持や代替施設の運用はもとより、利用者に対してはバッテリーや充電のサポート、料金支払いの延期や減免なども行うもようだ(ケータイWatch)。

 今後は地盤の変動や降水量の測定などの分野で、さまざまな遠隔からのセンシングの技術、タイムリーな分析に対するニーズを満たすようなソリューションによる減災・防災に期待したい。

ニュースソース

  • 静岡県熱海市の大雨被害、携帯各社が支援措置を案内[ケータイWatch
  • 日本海側大雨の影響で通信障害、島根県出雲市の一部エリア[ケータイWatch

2. 企業連合で推進する5Gソリューション

 先ごろ設立が発表された「ソフトバンク5Gコンソーシアム」の参画企業・団体数が約1カ月で、「ワーキンググループ」のメンバーが45社、「5Gコンソーシアム会員」が544社・団体という規模になったと報じられている(ケータイWatch)。

 このコンソーシアムは「5Gソリューションの実証実験や商用化に向けた開発に取り組み、5Gの社会実装の加速を目指す」としていて、「ワーキンググループ」は事業会社や5G関連パートナー、外部有識者が協力し、実証実験などを推進し、「5Gコンソーシアム会員」は、5Gの導入を考えている企業や自治体などが加入すると区分されている。

 社会基盤として5Gという技術を導入するにあたっては、さまざまな企業の知見を持ち寄る必要もあるとみられ、こうした団体が産業をリードして導入事例などの成果を共有していくことには期待をしたい。

ニュースソース

  • 「ソフトバンク5Gコンソーシアム」の参画企業を発表――JR東日本や鹿島建設、住友電工など[ケータイWatch

3. 米国企業へのランサムウェア攻撃

 「ランサムウェアサービス」ともいわれる「REvil」を使用した攻撃はサプライチェーンに対する大きな被害を与えているようだ。この6月には米国大手食肉加工会社のJBS、7月には米国IT管理サービス会社のKaseyaも同じグループからの攻撃を受けている。そして、「全ての被害者が利用できる復号ツールを提供する見返りとして、7000万ドル(約78億円)もの巨額の身代金を要求している」と報じられている。また、これまでに「被害を受けたマネージドサービスプロバイダーに500万ドル(約5億5000万円)を、個別の顧客に4万4999ドル(約550万円)を要求している」ともいう(ZDnet Japan)。

 こうした事件は日本でも対岸の火事というわけにはいかない。いうまでもなく、インターネットには国境がないからだ。とりわけ(無観客といえども)オリンピックの開催を控えていることから、犯罪グループにとって世界的にアピールする「チャンス」でもあるからだ。直接、間接での経済的被害規模も大きくなっていることを踏まえ、対策を急ぐべきだろう。

ニュースソース

  • 米IT企業への大規模ランサムウェア攻撃、78億円の身代金要求か[ZDnet Japan

4. 東京オリンピック・パラリンピックに向けたインターネットサービスがスタート

 東京オリンピック・パラリンピックの原則無観客での開催が決定された。一方、おそらくこの開催時期に合わせたサービスとして実装してきたとみられる新機能を各社が発表した。

 Yahoo!カーナビでは東京オリンピック開催時期の進入禁止エリアなどを回避する機能を提供する(ケータイWatch)。

 アップルはマップに羽田空港の屋内マップを追加した(ITmedia)。グーグルはGoogle マップにJR東日本の主要駅や商業施設で屋内ナビゲーションが利用できる「インドアライブビュー」機能を順次提供開始する(livedoor NEWS)。いずれも本来は海外からの来訪者にとっては有用な機能だったはずだ。

 さらに、NTTは大会期間中、大会スタッフ向けに機能分散通信技術「CUzo(クーゾ)」を提供すると発表した。この技術を使うことでデバイス自体にアプリケーションや高性能なハードウェアが搭載されていなくても、AR(拡張現実)を活用した会場案内のサービスが提供できるとしている(ケータイWatch)。

ニュースソース

  • 「Yahoo!カーナビ」で東京オリンピックの進入禁止エリアなどを回避可能に、7月19日から[ケータイWatch
  • Apple、屋内マップに羽田空港を追加[ITmedia
  • Googleマップ、都会のダンジョン攻略に役立つ屋内ナビゲーションを実装[livedoor NEWS
  • NTT、東京オリンピックを通信技術「CUzo」で支援――AR案内の実現へ[ケータイWatch

5. NTTドコモがMWCで発表した新技術を公開

 NTTドコモは毎年開催されているモバイル産業の展示会とコンファレンスである「MWC Barcelona 2021」へのオンラインでの出展内容を公開した(ITmedia)。技術の中心は5Gや6Gに向けた最新の取り組みについてである。

 興味深いのは衛星による通信網の構築である。記事では「HAPS(高度疑似衛星)を活用してエリアカバーを広げる取り組みであり、同社ではAIRBUSとパートナーシップを結んでHAPSを展開、半径約50kmのエリアで最大10Gbps級のエリア構築が期待できる」としている。これまで、ソフトバンクが積極的に発表をし、何度か報じられてきているが、NTTドコモでも具体化しつつあるようだ。

 また、「つまむアンテナ」と呼ばれている技術、「5Gや6Gで使用する高い周波数帯の電波を伝送する、フッ素樹脂などで作られた『誘導体導波路』を建物内に配線しておき、その任意の場所を『別誘電体』で“つまむ”ことで電波を漏えいさせ、つまんだエリアの周辺をエリア化するという仕組み」もこれから有用な技術といえそうだ。いずれにしても、次世代のワイヤレス技術は従来の改良だけでない発想が大きく変わる「未体験のゾーン」に入ってきていて、大変に興味深い。

ニュースソース

  • “つまむアンテナ”や海外向けローカル5Gも ドコモがMWC Barcelonaの出展内容を披露[ITmedia
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。