中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2023/11/30~12/6]

オープンなAIか、クローズドなAIか――二極化に向かう動き ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. エヌビディアのジェンスン・フアンCEOが来日。日本へトップセールス

 半導体大手・米エヌビディアのジェンスン・フアンCEOが来日し、西村康稔経済産業大臣と面会した。その場で、生成AI(人工知能)の研究開発拠点を日本に設置するほか、国内のスタートアップ(新興企業)への投資などの協力方針を示した(朝日新聞デジタル)。さらに、岸田文雄総理大臣とも面会した。面会後、ジェンスン・フアンCEOは総理大臣から、日本国内に「できるだけ多くの」GPUの提供を要請されたことを明らかにし、それに対し「できる限り提供できるようにしていきたい」と述べたと伝えられている(ITmedia)。ソフトバンク、さくらインターネット、NEC、NTTなどの日本企業の名前を挙げ、関係強化を進めるとしている。

 唐突とも思えるこの報道だが、日本は国が先頭に立ってAIの推進をしている国であるということと関係があるのだろうか。一方、米国は中国向けの半導体輸出規制強化措置を発表し、さらにはエヌビディアに対しては、中国に向けたチップの再設計をしないよう警告(PC Watch)していることもあり、「トップセールス」先として日本を選んだということか。

ニュースソース

  • 米エヌビディアCEO、日本に研究拠点設置、スタートアップ投資表明[朝日新聞デジタル
  • 「できるだけ多くのGPU提供」を要請 岸田首相、NVIDIAフアンCEOと面会[ITmedia
  • 米商務省がNVIDIAに中国向けチップの再設計をやめるよう警告[PC Watch

2. オープンなAIか、クローズドなAIか――二極化に向かう動き

 「AIの開発と使用に関する規制の強化と透明性の向上」を求める声に応えるべく、メタ・プラットフォームズとIBMが提携をした(CNET Japan)。さらに他の50以上の組織とともに、オープンで責任あるAIの推進を目指す団体「AI Alliance」を結成した。このパートナーシップには、「業界、政府、研究機関、学界からの参加者を集め、安全なAIの開発に向けた統一的なアプローチを示すこと」を目指しており、AMD、インテル、レッドハット、ハギングフェイス、オラクル、デル、米航空宇宙局(NASA)、イェール大学、クリーブランドクリニック、ハーバード大学などが参加している。

 一方で、グーグル、マイクロソフト、OpenAIはAI Allianceに参加していない。この3社は「クローズドソースのAIモデルの利用」を支持している。

 これからはオープン陣営とクローズド陣営の二極化が進むのか。

ニュースソース

  • MetaやIBM、オープンなAI開発推進で「AI Alliance」結成--50以上の組織が参加[CNET Japan

3. 2023年に英語版ウィキペディアで最も閲覧された記事とは

 ウィキメディアファウンデーションは、2023年に最も閲覧された「英語記事」のランキングを発表している(WIKIMEDIA FOUNDATION)。

 トップは想像どおりに「ChatGPT」だ。続き、2023年に死亡した人物のまとめページ(Deaths in 2023)で、そして「ウェブサイトの流行に影響を与えるインド人利用者の力の増大」(CNN)により、「2023年クリケットワールドカップ」やインドのクリケットのプロリーグ「インディアン・プレミアリーグ」などが並ぶのは世界情勢を反映しているとはいえ驚異的だ。映画の「オッペンハイマー」「バービー」、そして「テイラー・スウィフト」や「イーロン・マスク」などの名前もある。

ニュースソース

  • Announcing Wikipedia's most popular articles of 2023[WIKIMEDIA FOUNDATION
  • ウィキペディアで最も閲覧されたページ、2023年は「ChatGPT」[CNN

4. グーグルの新AIモデル「Gemini」はOpenAIを追い越すか?

 グーグルが次世代生成AIモデル「Gemini(ジェミニ)」を発表した。今のところは英語だが、日本などの一部地域での利用が可能だ(Impress Watch)。

 特徴は、「マルチモーダルかつ論理的な判断に優れている」という点だ。ここでいうマルチモーダルとは、「画像だけ・テキストだけといった形ではなく、人間と同じように『画像』『文字』『音声』『動画』といった複数の要素を同時に扱う能力」をいう。この記事中には、その能力を示すデモの動画も公開されている。これを見ると、これまでのChatGPTなどのAIを超えたようにも見える。

 また、Pixel 8 Pro向けにはGemini由来の「オンデバイスAI」が搭載される。手元でAIが作動するようになる。

ニュースソース

  • 「専門家を超えるAI」 グーグルの次世代生成AIモデル「Gemini」登場[Impress Watch

5. フィッシング詐欺、年末年始にかけさらに警戒が必要

 相変わらず、フィッシング詐欺に関する事案が報告されている。

 とりわけ気を付けなければならないのは、「マイナポータルをかたるフィッシング」だろう。件名には「電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金(5万円/1世帯)のご案内」とあるようだ(INTERNET Watch)。国会でも議論になり、先ごろ成立した矢先のことでもあり、世の中には給付を待つ人もいるという状況下で、まさに巧妙といえる手口だ。

 また、Dropboxを利用する事案にも注意をしておくべきだ(INTERNET Watch)。このあたりになってくると、それなりにインターネットサービスを使っている人が狙われているといえるのではないか。

 今後、年末年始に向け、「ETC」や「えきねっと」をかたる手口も想定されている(INTERNET Watch)。くれぐれも注意が必要だ。

ニュースソース

  • マイナポータルをかたるフィッシング、件名「電力・ガス・食料品等価格高騰緊急支援給付金(5万円/1世帯)のご案内」などの不審なメールに注意[INTERNET Watch
  • これはだまされる? 「Dropbox」を悪用したビジネスメール詐欺の手口が巧妙[INTERNET Watch
  • 9月末で申請終了した「マイナポイント」関連のフィッシングが急増、BBSSが2023年10月度のフィッシング詐欺レポート公開[INTERNET Watch
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。