中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」
ニュースキュレーション[2023/12/7~12/13]
グーグルが次世代生成AIモデル「ジェミニ」発表 ほか
2023年12月18日 07:00
1. グーグルが次世代生成AIモデル「ジェミニ」発表
米国時間12月6日、グーグルは次世代生成AIモデル「Gemini(ジェミニ)」を発表した。
ジェミニの特徴は、「マルチモーダルかつ論理的な判断に優れている」というところだ。この「マルチモーダル」とは、「画像だけ・テキストだけといった形ではなく、人間と同じように『画像』『文字』『音声』『動画』といった複数の要素を同時に扱う能力のこと」だ。グーグルはこの特徴を説明するための動画を公開している。また、Impress Watchでは、その動画の意味するところを分かりやすく解説している(Impress Watch)。
それに加えて、Pixel 8 Proや他のAndroid端末にも、ジェミニを導入すると発表している。ジェミニにはオフラインでも作動する組み込み版がある。例えば、スマートフォンのアプリ「レコーダ」で録音した音声の要約が可能になる。現在は、文字起こしや翻訳などが可能だが、要点をまとめてくれるようになるわけだ(Impress Watch)。
この流れでいくと、おそらくさまざまな組み込みデバイスへの実装は早期に実現し、インテリジェントなデバイスが当たり前の時代になりそうだ。あわせて、AIに関するルールの策定も急がないと、時代についていけなくなる可能性もある。
折しも、ChatGPTが話題になり始めておおよそ1年が経過したタイミングでもあり、1年での技術進歩には驚かされる。
ニュースソース
- 「専門家を超えるAI」 グーグルの次世代生成AIモデル「Gemini」登場[Impress Watch]
- Pixel 8 Pro、新AI「Gemini」即日搭載 レコーダ要約やスマート返信[Impress Watch]
2. OpenAIと独大手メディア企業アクセル・シュプリンガーが提携
12月14日に朝日新聞デジタルが報じたところによれば、ChatGPTを開発したOpenAIは、ドイツの大手メディア企業アクセル・シュプリンガーとの提携をしたという(朝日新聞デジタル)。
「今回の契約でオープンAIはアクセル側に数年間にわたり数千万ユーロ(数十億円)を支払う」という条件のもと、ChatGPTの回答で同社の最新の有料記事の要約が読めるようになるほか、AIの学習に利用できることになる。
「AIの訓練データをめぐる著作権侵害への批判が広がるなか、オープンAIは報道機関への記事の対価支払いを進めている」とされるが、この戦略が日本にどう波及するのかが注目点となるだろう。日本では、コンテンツをAIが学習することは著作権法的に認められていると解釈されてきている。
ニュースソース
- ChatGPT回答に記事の要約 オープンAIと独メディア大手提携[朝日新聞デジタル]
3. 米ネットフリックスが視聴データを公開
米ネットフリックスは、配信している作品の99%について視聴データを初めて公開した(WEDGE)。
ネットフリックスはこれまで、視聴データを公開してこなかったが、今夏、俳優で組織される労働組合「映画俳優組合-アメリカ・テレビ・ラジオ芸術家連盟(SAG-AFTRA)」が実施したストライキに対する妥結の条件として、ストリーミング事業者が演者のロイヤルティの算定根拠を示すことが含まれていたことから、このデータの公開に至ったとみられる。今後は、6カ月ごとにこうしたデータを発表するとしている。
なお、今回の発表によれば、「今年上半期に最も視聴されたのは、政治スリラードラマ『ナイト・エージェント』で、8億1210万時間視聴されていた」ほか、「全体の視聴時間は1000億時間近くに上る。2位は米コメディードラマ『ジニー&ジョージア』のシーズン2の6億6510万時間、3位は韓国のスリラードラマ『ザ・グローリー ~輝かしき復讐(ふくしゅう)~』の6億2280万時間だった。これに、映画『アダムス・ファミリー』のスピンオフドラマ『ウェンズデー』(5億770万時間)、時代劇ドラマ『ブリジャートン家』のスピンオフ作品『クイーン・シャーロット』(5億300万時間)と近年の話題作が続いた」ということだ。
ネットフリックスはこうしたデータを精緻に分析しているとされているが、その一端が見えただけでも、市場トレンドを知るヒントになりそうだ。
ニュースソース
- ネットフリックス、視聴時間データを初公開 上半期トップのドラマは8億時間超[WEDGE]
4. 電通が「世界の広告費成長率予測」を発表
電通グループは、世界58市場から収集したデータに基づき、「世界の広告費成長率予測」を発表した(電通)。
その骨子をまとめると次のようになる。
- 2023年の世界の広告費成長率は2.7%を予測、市場規模は100兆円超えへ
- 2024年の世界の広告費成長率は4.6%を予測
- 2025年、2026年も堅調な成長を予測、デジタル広告の割合は2026年に初めて60%超えへ
世界の広告市場は、今後も順調な成長が見込まれている。
また、発表資料の中では、2024年の日本市場についても言及している。それによれば、「2024年は前回2023年5月発表の予測(1.0%)から1.5pt上方修正した2.5%の成長」を見込んでいるという。
「広告費全体に占めるデジタル広告の割合は45.8%」で「探索連動型広告、動画広告、ソーシャルメディア広告が牽引」するという。テレビ広告は「広告費全体の23.5%を占め、2024年以降は徐々に回復が期待」されるという。
ニュースソース
- 電通グループ、「世界の広告費成長率予測(2023~2026)」を発表[電通]
5. GoogleとYouTubeが年間ランキングを発表
Googleが、2023年の検索ランキングを発表している(グーグル)。総合でのランキングではなく、テーマごとのランキング形式になっている。
マスメディア露出による印象と検索ランキングの温度差を感じるところが面白い。
スポーツでは、「WBC」がトップだが、「阪神 優勝」は意外にも10位という結果で、「バレーボール 男子」「世界水泳」よりも下位になる。あの盛り上がりは全国区ではなく、関西を中心としたものだったのか。スポーツ選手には「ダルビッシュ有」が2位に入っているのに対して、「大谷翔平」が入っていないのは意外。
さらに、YouTubeも年間ランキングを発表している(YouTube)。
「国内トップトレンド動画」は、HIKAKINの引っ越し「20億円のヒカキン新居ハウスツアー!超巨大室内温水プール&庭付きの家」が1位になっている。また、「国内トップ音楽動画」は、YOASOBIの「アイドル」が1位になっている。
一方、動画の環境には異変も見える。ユーチューバーの増加により、収益が減少するという傾向が指摘されていたり、「私人逮捕系」「暴露系」「迷惑系」などの社会問題化する事例も散見されたりしている。こうした課題とも折り合いをつけながらも、今後も、新たな能力を持つクリエイターのデビューは続いていくだろう。