中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2024/2/1~2/7]

インスタやYouTubeで「生成AI由来の画像・動画」への対策を強化 ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. インスタやYouTubeで「生成AI由来の画像・動画」への対策を強化

 生成AIによって生成された画像の質が向上するにつれて、それが事実なのか、意図的に作り出されたものなのかを判断するのは難しくなってきた。それによってフェイク情報が氾濫する危険も指摘されているし、すでにそうした事案も発生している。そのようななか、OpenAI、メタ、YouTubeは、生成AI画像に対する対策を強化する。

 OpenAIは、画像生成AIモデル「DALL・E 3」を提供するAPIで生成された画像にC2PAメタデータを付与する。C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)は、コンテンツの出どころや関連情報を埋め込むオープンな技術標準技術である。

 また、メタは、FacebookやInstagramに投稿されたAI由来の画像に「AI」ラベルを表示する。すでに、Meta AIで生成した画像に対しては「Imagined with AI」というラベルを表示しているが、他のサービスで生成されたものにも拡大するというもの。これは実施までに数カ月かかる見込みだ。

 YouTubeは、今後数カ月以内に、生成AIで作られたコンテンツについて、それが合成であることを知らせるラベルを導入する予定だ。

 このように、画像や動画の由来を明記することは重要な一歩なのは間違いないが、生成AIに限らずとも、こうした何らかの保護技術の抜け道を探してくる人たちがいるのはこれまでもあったことだ。抜本的な対策となるかどうかはまだまだ分からない。

ニュースソース

  • OpenAI、DALL・E 3で生成した画像にCP2Aの電子透かし追加[ITmedia
  • Meta、インスタやFacebookへのAI画像投稿に「AI」ラベル表示[Impress Watch
  • YouTube、ディープフェイク対策など生成AIの取組強化[Impress Watch

2. アマゾン、お買い物支援AIチャットを提供開始

 ZDNETが報じたところによれば、米アマゾンは、自社の顧客向けに開発した専用の生成AIチャットボット「Rufus」を発表した。今のところ、一部のユーザーだけが使えるようだが、今後、順次ユーザー数を増やしていく計画とされている。

 このRufusは、アマゾンの商品カタログや、顧客レビュー、Q&A、インターネット上で提供されている情報を用いて訓練されているところが特徴だという。まさに、店員のような支援をしてくれるということなのだろうが、果たして、スポンサーとの関係はどうなるのだろうか。広告主の製品を主に推薦するようなことになるのであれば、新たなマーケティングプログラムとなり、それはそれで画期的ではあるが、その「バイアス」については何か説明されることになるのか。そうしたことはいまだ情報が十分ではないが、興味のあるところである。

ニュースソース

  • アマゾン、ショッピング向けAIチャットボット「Rufus」を発表[ZDNET Japan

3. アップル、生成AIに取り組む姿勢を明らかに

 アップルは、基本的に将来の製品やサービスについて、発表以前から情報を出すことはない。メディアで噂になって、既成事実になっていたとしてもだ。しかし、今回はそうではない。ティム・クックCEOは、今年中に発表すると明言している。これは、2月1日の第1四半期業績発表後の会見で述べたものだ。TechnoEdgeの記事によれば、クックCEOは「私たちは将来を見据え、未来を形作る様々な技術への投資を続けていきます」「これにはAIも含まれ、私たちは膨大な時間と労力を投入し続けています。年内には、この分野での進行中の取り組みにつき、詳細をお伝えできることを楽しみにしています」と述べたという。

 どのような実装として登場するのかはとても楽しみである。これで大手IT企業は生成AI分野での競争に入っていくことになる。

ニュースソース

  • 「アップルAI」は今年発表へ、クックCEOが明言。WWDCでLLM版 Siri搭載のiOS 18発表?[TechnoEdge

4. 「YouTube Music」「YouTube Premium」の総メンバー数が1億人を突破

 グーグルが「YouTube Music」および「YouTube Premium」の総メンバー数が1億人を突破したことを報告している。「YouTube Music」と「YouTube Premium」はどちらも2015年に発表されているので、10年を待たずして大台に乗った。

 YouTubeが始まったのは2005年の2月15日で、19年前である。このサービスが登場したときはまだグーグルの傘下にはなく、「なんとなく怪しいサービス」とみられていたが、いまや新しい映像カルチャーを生み出した。視聴者もインターネット上のコンテンツの閲覧に課金をすることをいとわなくなっているというところは大きな変化だ。決してインターネットは広告モデルだけではない。こうした新たな視聴の方法でさらにリードする役割となるのだろう。

ニュースソース

  • 「YouTube Music」「YouTube Premium」総ユーザー数が1億人を突破[ケータイWatch

5. アップルが「Vision Pro」発売、日本からも購入のために渡米

 アップルは空間コンピューティングを実現するヘッドマウントディスプレイ「Vision Pro」を発売した。発表はされていたが、いよいよ販売が始まったわけだ。こうしたデバイスは使ってみなければなんとも評価しようがない。そのようなわけで、何人かのITジャーナリストらが渡米して購入をし、さっそく記事を掲載している。製品の詳細やレビューはそれぞれの記事をご覧いただきたいが、やはりアップルがMR(複合現実)ではなく、「空間コンピューティング」と呼ばせたい何かは感じる。

 ただし、価格は50万円ほどもする。もし日本で発売されても、私を含む多くの人にとって、そう簡単に手に入れることもできないような製品なのだが、こうしたデバイスの上で新しいアイデアのもとでソフトウェアやコンテンツが開発され、それがきっかけで広まっていくことに期待をしたい。まさに、これまでのパーソナルコンピューターやスマートフォンのような流れかもしれない。そういう意味でも「デバイス」ではなく「コンピューター」というわけだ。

ニュースソース

  • Apple Vision Pro発売、600以上の“空間”アプリ登場[Impress Watch
  • 試して分かった「Apple Vision Pro」の体験価値、可能性、そして課題[ITmedia
  • Apple Vision Pro米国版を購入・プレビューして体感した「今、手に入る未来」[TechnoEdge
  • Apple Vision Proをハワイで買う 見えてきた「空間コンピューティング」[Impress Watch
中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。