中島由弘の「いま知っておくべき5つのニュース」

ニュースキュレーション[2024/2/8~2/14]

アマゾンの日本事業、売上規模は推計いくらになる? ほか

eHrach/Shutterstock.com

1. インターネットの最新動向を把握する「インターネット白書2024」発売

 今年もインプレスから「インターネット白書2024」(編者:インターネット白書編集委員会)が刊行された(INTERNET Watch)。この「インターネット白書」は、Windows 95に沸き、商用インターネットが本格的に始まったころの1996年から刊行されていて、今年で28号目となる。扱うテーマは「インターネットの影響をテクノロジー、ビジネス、社会制度の観点」である。産業動向を把握しておくうえでお勧めできる情報源である。

 さて、この「インターネット白書」だが、実は昨年度版までの過去の号すべてがデジタルアーカイブ「インターネット白書Archives」として、無償で公開されている(会員登録なども不要)。こうした年鑑として発行される書籍は、新版が発売されると情報が古くなったかのように絶版となったり、手に入りにくくなったりするものだが、インターネットの発展の歴史をたどることができるという意味でも価値のある資料である。

 この「インターネット白書Archives」では、各年度版ごとに閲覧することもできるが、「TIMEMAP」という検索システムによって、キーワードで関連する記事を年度を横断して検索することもできる。検索結果は年表形式で時間順に表示されるので、まさにこれまでの足跡をたどることになる。さらに、インプレスが過去に発行していた「インターネットマガジン」や現在も発行されているウェブメディア「INTERNET Watch」などの記事も検索することができるので、当時の解説記事や日時単位での出来事・ニュースも並べて見ることができる。

 なお、「インターネット白書2024」の小売希望価格(税別)は、電子書籍版が2800円、プリントオンデマンドによる印刷書籍版(B5判/260ページ)が3200円となっている。

ニュースソース

  • 生成AIの浸透によるビジネスや社会の変化を捉える「インターネット白書2024 AI化する社会のデータガバナンス」発行 生成AIからメタバース、惑星間インターネットまで、31人の専門家が解説[INTERNET Watch

2. アマゾンの日本事業、売上規模は推計いくらになる?

 アマゾンの日本事業の2023年(2023年1月~12月)の売上高などの実績値について、米国アマゾン・ドット・コムが公表している年次報告書からの読み解きを試みる記事がインプレスの「ネットショップ担当者フォーラム」に掲載されている(ネットショップ担当者フォーラム)。それによれば、アマゾンの日本事業のドルベースでの売上高は260億200万ドルで前期比6.6%増(2022年の日本事業売上高は243億9600万ドルで前期比5.7%増)となっている。長期的には為替の変動があるので経年での単純な比較はできないが、それでも大きな成長を続けていることが分かる。

 また、流通額についても推計している。それによれば「全体の流通総額のうち第三者による販売は6割程度、手数料収入は平均して第三者販売額の約10%という推定を前提に、円ベースの売上高から『Amazon.co.jp』の流通総額を算出すると6~7兆円程度に達している」としている。

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3. 生成AIによる「ロボコール」、米国では規制する方針

 米国連邦通信委員会(FCC)は、選挙や営業活動などで電話先に自動的にメッセージを届ける、いわゆる「ロボコール」について、生成AIを使った音声の使用を禁止する方針を示したことが報じられている(ケータイWatch)。生成AIの技術の発達によって、こうした規制は行われることになるだろうと思われていたが、意外と早く手を打ってきた。これも今週に予定される大統領選挙戦への影響も危惧してのことではないだろうか。

 また、Forbesでは「偽のジョー・バイデン大統領の声で、米大統領選の予備選に投票しないよう呼びかけるロボコール(自動音声電話)がニューハンプシャー州の有権者にかかってきた」という問題を報じている(Forbes JAPAN)。「ニューハンプシャー州司法当局によれば、問題のロボコールがかけられた件数は5000~2万5000件に上るとみられる」というから、考えるまでもなく、人が行うよりもはるかに効率的に見える。

 今後、電話だけでなく、さまざまな広告やマーケティング手法での利用について、生成AIの利用についてはより留意をしていかなければならないことを示している。

ニュースソース

  • AI製「偽バイデン」の電話、発信元はテキサス州企業 犯罪として捜査[Forbes JAPAN
  • 米FCC、生成AIによる音声を使ったロボット電話を禁止[ケータイWatch

4. 内閣府が「AIセーフティ・インスティテュート」設立

 内閣府が「AIセーフティ・インスティテュート(AISI)」を設立した(内閣府)。これは、AIの安全性を評価する手法の検討等を行う機関として位置付けられ、内閣府や関係省庁、関係機関の協力の下、情報処理推進機構(IPA)内に設置される。主な業務内容は、「安全性評価に係る調査、基準等の検討」「安全性評価の実施手法に関する検討」「他国の関係機関(英米のAIセーフティ・インスティテュート等)との国際連携に関する業務」とされている。

 なお、公開されているウェブページには「技術調査」「標準化」などのメニューも見られることから、今後の技術的な情報ソースとして注目しておく必要がありそうだ。

ニュースソース

  • AIセーフティ・インスティテュートの設立について[内閣府
  • AIセーフティ・インスティテュート[ウェブページ
  • 政府、AIの安全性を評価する「AIセーフティ・インスティテュート」設立[Impress Watch

5. 能登半島地震の被災地におけるドローン活動、その具体的な用途とは

 令和6年能登半島地震の影響は甚大で、いまも続いている。その中で、ドローンの活用も進められている。「ドローンジャーナル」では、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)の活動について紹介している(ドローンジャーナル)。ドローン関連事業者、地方自治体、自衛隊などとの関係を含め、被災地で活動するうえでの過程について、一般メディアではあまり報じられることもなく参考になる。具体的な用途としては、医薬品の配送やダムの点検、さらには上空からの捜索や被災状況確認、物資輸送等の初期災害時支援活動についてもレポート記事がある(ドローンジャーナル)。

 災害はいつどの地域で起こるか分からないが、こうした事例が記録されることで、将来発生する可能性がある災害時にもそれらの経験が生かされて、さらにスムーズな活動につながったり、そもそも当初からドローンを前提とする計画に生かされたりすることにも期待したい。

ニュースソース

中島 由弘

フリーランスエディター/元インターネットマガジン編集長。情報通信分野、およびデジタルメディア分野における技術とビジネスに関する調査研究や企画プロデュースなどに従事。