読めば身に付くネットリテラシー

「SIM貸し」「口座貸し」…その“小遣い稼ぎ”も闇バイトだって知っていますか?

報酬の有無に関わらず、銀行口座の譲渡・レンタルはNGです。

 今、闇バイトが社会問題になっています。実は、強盗や振り込め詐欺だけでなく、さまざまな犯罪案件が募集されており、それが違法行為と知らなければ、小遣い稼ぎで手を出してしまうかもしれません。今回は、「SIM貸し」と「口座貸し」について説明します。

 「SIM貸し」は、スマートフォンで電話をかけたりネットを利用するための「SIMカード」を自分名義で契約し、他人に渡すというものです。そもそも他人に渡すために不正に契約するのは販売店からSIMカードをだまし取っていることになり、詐欺にあたります。

 しかし、「携帯ショップのノルマをクリアするための手伝いバイトで、携帯ショップやキャリアからお金が出ている」といったそれっぽいことを言ってきます。闇バイトではなく合法だと嘘をついてくるので、1時間で1万円手に入るならやってみよう、と若者が手を出すケースが後を絶たないのです。

 先日、SIM貸しをした女性4人が詐欺容疑で逮捕されたとのニュースがありました。2022年、4人は自分が利用すると言って契約し、そのSIMカードを詐欺グループに渡しました。1枚あたり月3000円の報酬を受け取っていたそうです。その詐欺グループも逮捕されており、その自宅からはSIMカードが200枚出てきました。

 こうしたSIMカードは、振り込め詐欺などの犯罪行為に使われます。警察が捜査してSIMカードの持ち主を特定しても、主犯者ではなくSIMカードを契約した人の家に来るのです。もちろん、主犯者からトカゲのしっぽのように切り捨てられます。

 今年10月、闇バイトに応募した19歳の男性は、スマートフォン1台とSIMカード7枚を購入し、見知らぬ男に渡しました。その後、闇バイトに関わったことで怖くなり、警視庁に自分から出頭して保護されたというニュースも出ていました。被害が拡大する前に申し出たのは不幸中の幸いかもしれません。

 スマートフォンやSIMカードを契約して他人に渡すのはNGです。ちなみに、報酬をもらえればまだいいほうで、スマートフォンを渡したあとに持ち逃げされたり、利用料金が翌月から請求される、といったこともあります。

 もう1つ、闇バイト、つまり犯罪行為だと認識せずに手を出してしまいがちなのが「口座貸し」です。銀行口座を他人に渡すのは、犯罪収益移転防止法などの法律により禁止されています。売買でも譲渡でも、有償でも無償でもアウトです。もちろん、レンタルもダメです。しかし、あえて「口座を譲渡したり、レンタル目的で口座開設をするのはNGですが、元から持っている口座をレンタルするのは問題ありません。半年後にお返しします」と、合法だと偽ってくるケースもあります。

 犯罪者はこれらの口座を、振り込め詐欺やショッピング詐欺などの振込先として使います。もちろん、事件が発覚し、警察の捜査が行われると、口座の名義人が捕まることになります。口座貸しをした人は、被害者ではありません。犯罪者として逮捕され、報道されます。詐欺罪などに問われたり、被害者から民事訴訟を起こされる可能性もあるでしょう。その結果、罰金や懲役が科される可能性もあります。

 口座を貸した人は、その銀行はもちろん、他の銀行でも口座を作成できなくなります。ニュースで実名が報道されなかったとしても、給与の振込口座を持てなければ、就職にも影響があるでしょう。

 そんなことは言われていなかった、犯罪とは思わなかった、では済みません。リテラシーがなかったからと言って、犯罪がなかったことにはできないのです。

 なお、口座貸しに類似した事例として、こんなニュースもありました。11月1日、マネーロンダリングを行っていたグループのメンバー11人が逮捕されました。このグループは銀行口座を募集するのではなく、ペーパー会社を設立するための名義貸しの闇バイトを募集しました。そこで作ったペーパー会社の法人名義で銀行口座を多数開設し、犯罪に使ったのです。会社の設立に協力する、というだけでは犯罪行為なのかどうか分からない人もいたでしょう。今回、この闇バイトが逮捕されたかどうかは報道されていませんが、関係ないということはないと思います。

 「SIM貸し」「口座貸し」が違法であるという一般常識に加え、会社設立に名義を貸すといった一見問題なさそうな行為でも犯罪に直結することは多々あるということを知っておいてください。怪しい話には近づかない、というリテラシーを身に付けて、自分の身は自分で守りましょう。

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。

※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと