読めば身に付くネットリテラシー

応募したら人生が詰んでしまうかも! 見分けにくくなっている「闇バイト」に要注意

警視庁が公開している闇バイト防止啓発チラシ(警視庁ホームページの「#BAN 闇バイト」より)

 短期間にまとまったお金が欲しい、といった趣旨のキーワードで検索すると、「高額」「即日現金」「副業」などの文言でアルバイトを募集している投稿が見つかります。書類を受け取るだけ、段ボールを運ぶだけで、日給5万円や10万円といった大金がもらえるというのです。これは「闇バイト」という、犯罪行為の勧誘です。

 簡単に稼げるならそれもいい、と考える人もいます。しかし、とてつもないリスクがあるので、決して手を出してはいけません。

 こうした闇バイトに応募すると、まず、LINEやTelegramなどのチャットアプリで個人情報を求めてきます。正規のアルバイトでも応募する際は履歴書を提出するのだから、怪しまずに個人情報を提出してしまう人も多いかもしれません。免許証と自分の顔を自撮りした写真や、マンションの入り口から自宅の玄関までの動画を要求されたり、チャットで家族構成や家族の写真を求められることもあります。

 その後、実際の作業を指示されます。闇バイトはさまざまな犯罪行為に関連して募集されており、振り込め詐欺の被害者からクレジットカードや銀行カードを受け取ったり、そのカードでATMからお金を引き出したり、違法薬物などを運搬したりする仕事があります。空き巣や強盗の闇バイトもあります。

 犯罪に加担していると気が付いて手を引こうと思っても、個人情報を渡しているので脅迫されます。一度でも闇バイトに手を出してしまえば、犯罪です。「実家に行く」「警察に連絡する」、最悪「家族に危害を加える」と言われたら、抜け出したくとも抜け出せずに、どうしようもない状況に追い込まれてしまうかもしれません。

 現在、闇バイトが大きな社会問題となり、“受け子”“出し子”“タタキ(強盗)”といった募集に手を出す人が減っているそうです。そこで犯罪グループは、普通の求人広告のような内容で闇バイトを募集するようになりました。例えば「コールセンターで話をするだけ、日給1万円」といった内容です。合法的な仕事と勘違いし、闇バイトに手を染めて逮捕されてしまった若者もいます。「上場企業のお仕事」や「行政の許可を得た作業」といった言葉で、合法的な感じを演出することもあります。

 近年、勢いを増しているのが「匿名・流動型犯罪グループ」、通称「トクリュウ」です。闇バイトを募集して犯罪の実行役を集め、全国で強盗や強盗殺人といった凶悪事件を起こしています。リテラシーが低く、意図せずトクリュウの手先になったとしても、逮捕されるのは闇バイトで雇われた末端の実行役です。犯罪グループの首謀者は指示をするだけで、表には姿を現しません。

 警察も「インターネット・ホットラインセンター」に寄せられた闇バイト情報をもとに、掲載サイト運営者に対して投稿の削除を依頼しています。ほとんどは削除されますが、運営側の判断で削除されないこともありますし、削除されるまでの間に応募してしまう人もいるのでいたちごっこになっています。

 現役高校生の8割が闇バイトの求人情報を見破ることができなかったという調査結果もあるそうです。闇バイトという犯罪行為があるということを知り、少しでも怪しければ近寄らない、友人や家族に相談する、といったリテラシーを身に付けましょう。

 特に闇バイトの事例を知ることは効果的です。リテラシーがないと合法的に見える仕事もあるためです。例えば、「あなたの口座にお金を振り込むので、手数料を引いた金額を指定の口座に振り込んでくれ」という仕事があります。誰にも迷惑をかけていないように見えますが、これは犯罪で得られたお金をマネーロンダリングしているのです。ほかにも、「荷物を送るので、そのまま指定の場所に転送してくれ」という仕事もあります。違法に契約した携帯電話を犯罪組織が手に入れるためです。どちらの闇バイトも法律を犯しているので、手を出してはいけません。

 もし闇バイトに応募してしまったら、全国の警察相談専用電話(電話:#9110)や、警視庁総合相談センター(電話:03-3501-0110)、警視庁の少年相談係であるヤング・テレホン・コーナー(電話:03-3580-4970)に相談しましょう。隠していてもどんどん状況が悪くなるだけなので、一刻も早く相談することが重要です。

高齢者のデジタルリテラシー向上を支援するNPO法人です。媒体への寄稿をはじめ高齢者向けの施設や団体への情報提供、講演などを行っています。もし活動に興味を持っていただけたり、協力していただけそうな方は、「dlisjapan@gmail.com」までご連絡いただければ、最新情報をお送りするようにします。

※ネット詐欺に関する問い合わせが増えています。万が一ネット詐欺に遭ってしまった場合、まずは以下の記事を参考に対処してください
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