読めば身に付くネットリテラシー
女子学生が狙われやすい事例で解説、「ブラックバイト」「闇バイト」から身を守る知識
渋谷女子インターナショナルスクールで「マイナビバイト」が出張授業
2025年2月28日 11:50
アルバイト情報サイト「マイナビバイト」が2月17日、インフルエンサーなどを育成する通信制サポート校の渋谷女子インターナショナルスクールにて、アルバイト選びに関する出張授業を開催しました。女子学生が陥りやすいトラブル事例をもとに、「闇バイト」から身を守る知識なども紹介されました。今回は、この出張事業の様子をレポートします。
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マイナビが2024年に行った調査によると、アルバイトをしている高校生は26.5%で、前年より2.7ポイント増加。また、高校生のおよそ2人に1人がSNSで怪しい求人を見かけたことがあり、3人に1人がSNSでアルバイトに応募したことがあると回答しているそうです。
今回の授業の前半ではまず、インフルエンサーなどを育成する同校らしい内容として、「ステマ(ステルスマーケティング)」についての解説もありました。一般消費者を装ってSNSで商品を取り上げて褒める行為は景品表示法違反になると説明。タグの付け方、SNSごとのPR表記についてのルールや明示場所なども詳しく紹介されました。
「ブラックバイト」は、ブラック企業のように労働基準法を守らないで働かせようとするアルバイトのことで、「闇バイト」とは別の言葉です。今回の授業では、休憩時間や勤務時間の定義などを解説したうえで、例えば、「客がいる・いないに関わらず、お店や企業の監督下にある時間は勤務時間」であることや、「お金が欲しいから休憩なしで働いている」といった考えはNGであることが紹介されました。
一方、「闇バイト」については、「昔から存在はしていましたが、最近急に増えてきました。背景としては、SNS、特にX(旧Twitter)の利用が増えてきているのが大きいと思っています」と、講師の林千尋氏。
お金が欲しいという気持ちに付け込み、稼げる仕事のために嘘を強要されることがあります。例えば、お酒を出すお店で接客する仕事です。もちろん、18歳未満は原則22時以降は働けませんし、20歳未満は飲酒もNGです。そのため、店側から「君は大人っぽいから20歳ということにしよう。一応、学生証のコピーを取らせて」と持ち掛けられることがあります。これは年齢詐称で、詐欺罪に問われる可能性があります。また、個人情報を渡してしまうと、辞めたいときに辞められないというリスクもあるそうです。
女子学生が狙われやすい闇バイトの事例として、スマホの代理購入が紹介されました。
「スマホを代理で購入したら1台3万円が稼げるという闇バイトです。皆さんが自分の名前で携帯を契約して、それを知らない人に渡します。そのスマホは詐欺の電話を掛けるときに使われます。警察に逆探知されても、詐欺師が契約したスマホではありませんし、使用料金の請求も皆さんのところに届きます。自分の名前で契約したスマホを貸すことはしないようにしてください。」(林氏)
スマホ本体の代金や通信費も本人が払う必要があり、数万円もらったくらいでは大赤字です。そもそも自分以外の人が使うスマホを代理で契約するのは契約違反です。携帯電話不正利用防止法違反に問われれば、2年以下の懲役または300万円以下の罰金になる可能性もあります。自分も知らずにだまされた、と言っても通用しません。
「試しに、うちの社員がXで『お金がない』と投稿してみました。すると、結構すぐに『力になれるかもしれないのでDMください』といった返事がたくさん来ました。あとは、最近だと“お金配りおじさん”のようなアカウントあって、お金が欲しいのでリツイートすると、お金に困っている人なんだなということで闇バイト募集の対象になるケースもあります。」(林氏)
また、その際の誘い文句も、闇バイトと言わず、電話を掛けるだけとか、荷物を運ぶだけ・受け取るだけ、といった簡単な作業だと思わせようとしてくるそうです。そして、興味を持って返信してしまうと、TelegramやSignalといった匿名性の高いチャットアプリに誘導され、闇バイトに勧誘されるのです。
さらに、闇バイトが堂々と求人の募集を出している事例について、クイズ形式で紹介されました。以下の求人内容のどこが危険か分かりますか?
求人内容
散歩しながら社会貢献♪
電気供給量チェックの簡単お仕事!
はじめての方も大歓迎!
時給:1,800円
時間:22:00~2:00
<業務内容>
指定された地域の中で、深夜電気がついている住宅の場所に地図上で印をつけるだけ!
※情報漏洩防止のため、携帯電話や荷物を預かります。
そのため、なるべく軽い荷物で来るようにお願いします。
作業時間中、ご自身で管理していただくのは財布と筆記用具のみ。
<働くための条件>
・指示やお願いに素直に行動できる方
まず、深夜のアルバイトなので、高校生の場合は働けません。次に、深夜なのにスマホを預かり、連絡手段がなくなるのは危険です。深夜に電気がついている住宅を探すというのは、強盗に入る家の目星をつけていると考えられます。このような求人には絶対に応募してはいけません。また、働くための条件にある「指示やお願いに素直に行動できる方」という表現は、当たり前のことのようにも感じられますが、このようなことをわざわざ書くということは、従順であるという自認が強い人を募集する、闇バイトに特有の言い回しと言えるかもしれません。
もちろん、マイナビバイトをはじめ、大手アルバイト情報サイトは、募集内容や募集企業自体を審査をしているとのことです。誰か分からない人がSNSで出している求人に応募するよりも、大手の求人サイトを使う方が安全です。
授業の最後にはグループワークが行われ、「闇バイトに関わってしまった場合、自分や家族、友人にどんな影響があるのか」そして「闇バイトに関係した場合に、誰に相談するのが一番いいのか」について、数人ごとのグループに分かれてディスカッションしました。
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以上が、アルバイト選びに関する出張授業のレポートとなります。闇バイトをはじめ、ネットのリスクはネットリテラシーを身に付けていれば避けられる可能性が高まります。今回のような授業はとても役に立つと思います。今、闇バイトは社会問題になっています。闇バイトなどから身を守るための知識を広く周知して、被害を減らしていきましょう。
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参考:ネット詐欺の被害に遭ってしまったときにやること、やってはいけないこと